2005.11.29

帰ってきてます。26日の土曜日夜遅くに自宅に辿りつき、27日はほぼ1日爆睡。夕方頃起きだして汚れ物を洗濯しダイビング器材を洗い……でもまだ部屋は混沌としております。週末には友達が泊まりに来るのだから早く片付けないと!

一週間いない間に通勤路の並木はすっかり色を変え、歩けば落ち葉がかさかさ鳴り、会社のロビーにはクリスマスツリー、とすっかり冬になっていて少しびっくり。仕事では帰った早々月末月初の作業に巻き込まれているので、今回の旅日記はスローペースになっちゃいます。でも記憶の薄れないうちに書かなきゃなー。なんせ望んだ以上のラッキーな旅だったのですよ。あまりにもいろんなモノを見たので、どこでどう見たのか、もう怪しい。

ところで今回の旅行の反省点。「もっと英語を勉強しよう!」 グアムやサイパンばっかり行ってちゃダメだ>オレ! かーなり日本人遭遇率の少なかった今回の旅で、思ってた以上に英語が喋れなくなってる自分に愕然としました。もともとそうしっかり喋れるワケじゃないのに、後で考えたらちゃんと出てくるような文章がとっさに出てこない。二十歳の頃にヨーロッパを旅したときと同じような感じで、相手がちゃんと相手してくれてれば分かるんだけど、English speaker 同士がペラペラやってると口はさめないんだもの。寂しい〜。まあどうガンバるかはおいおい考えるとして、海外旅行好きとしちゃぁこれ以上の衰退は避けなっきゃ。

さて9日ぶりに会社に出たので、仕事がたまっているのは予想どおりだったんだけど、待ち構えていたように次々舞い込む突発頼まれ事に休みボケしてる暇もないくらい忙しくしていたら、上司がいきなり声をかけてきました。「To-koさん、……新潟って、遠い?」「……遠いかって……遠いといえば遠いし……」「行くのにどれくらいかかるかな? 半日? 一日?」「片道ですか? 新幹線使えば2、3時間だと思いますけど……」。来たよー、って感じでした。実はその少し前に「誰か新潟に行かなきゃならないかもな」って仕事を、私自身が掘り起こしてしまっていたのです。でも行かないよなーわざわざ新潟まで、と思っていたのに。

まだ決まってはいませんが、できたら行きたくありません。旅行前の静岡だって、行きたくありませんでした。普段なら、仕事に余裕のある時期なら大歓迎なのです。新幹線に何時間か乗ってぼんやり窓の外を眺めたり文庫本をめくったり、仕事が終わったら周囲をちょいとぶらついて、美味しいものでも食べて帰る。自分の懐を痛めるコトなく小旅行気分が味わえるというものではないですか。けどーー! 仕事が立て込んでる時期に半日以上もツブれるのはイタすぎる〜! 来週なら大歓迎なのに!

という話はさておき、新潟って遠い?と聞かれたときの私の返答が曖昧だったのには、いきなり妙なコトを聞かれたからという以上の理由があります。実はワタクシ、ケアンズで「日本の狭い方の幅はどのくらい?」と聞かれて「70〜80kmくらいじゃないか」と答えてきてしまったので、とっても自信がなかったのです。東京から成田までだいたい70kmくらいなのを置いておいても、ちょっと考えればそんなハズがないコトは分かってもいいようなものですが、なんせ私の脳は思いっきり女脳。空間認識能力なんつーものは持ち合わせていないのです。たぶんそう答えたとき、私の頭の中の日本地図はものすんごく細〜いものになっていたと思います。

まぁこの問を発した彼はケアンズ生まれのケアンズ育ち。「そんなに狭いの?」とビックリはしていたものの、日本が多少細長かったトコロで気にはしますまい。なーんて感じでまたもや誤った日本像を残してきたケアンズ日記、これからゆっくり書いていきます。おつきあいいただければ、とても嬉しい。

2005.11.25

【ケアンズ旅行記 7〜8日目】(2006.5.21記)

この日は「ケープトリビュレーション日帰りサファリツアー」への参加である。ケアンズは3度目とあって、急流下りも乗馬ツアーもやってしまった。キュランダにはまだ行っていないので迷ったが、生涯最後のケアンズとは思えないので、今回は“熱帯雨林”の方を優先したのだ。7時頃のピックアップにやってきたのは、生粋のケアンズっ子のSam。市内でケアンズに着いたばかりだという日本人の女のコを1人拾って、車は一路北上。まずはポートダグラスを目指す。

ところでケアンズからポートダグラスまでは、約1時間かかる。ポートダグラスでウォルターとルイーズというオランダ人のご夫婦が参加するコトになるのだが、それまでの間、車中にいるのはSamと日本人が5人。その中で一番英語を解するのはどうやら私らしく、Samがしてくれるガイド(しかもこの人、1日休むことなく喋りっぱなしだった…)を通訳する羽目になったのだった…。ハッキリ言って同時通訳のような真似は、キツい。だいたい私だって100%聞き取れてるワケではないのだし、Samがべ〜らべら喋るのでそれを要約して手短に伝えなきゃならん。相槌を打ったり質問もしながら……。うひー。ポートダグラスからはちょっと楽になった。

この日の移動はスゴかった(1日が終わるころSamが今日だけで200だか300km走ったと言っていた)。そしてオージーのスピードはすごい。海岸沿いの曲がりくねった道を高速道路のように突っ走る。「ここは事故が多いんだ〜」とか言いながら! 長めのよい道路なのだが、ちょっとジェットコースターな気分。

ワニに注意!まず最初の目玉は、ディンツリー川の横断。ワニに注意の看板がある。かなり広い川で、ここをいかだのようなフィリーに乗って渡る。この先は鬱蒼とした熱帯雨林で、国立公園になっている。以前は舗装された道路などはなかったのだそうだが、4WDで森を縦横に走り回る人たちがいて、結局現在のようにちゃんとした道を作ったのだという。Samは「それが良かったのかどうかは分からないけど。道が舗装されたので訪れる人も増えたし」と言っていた。その他にもいろいろと問題はあるそうだ。

熱帯雨林川を渡ってしばらく走ったところで、モーニングティーと、植物の説明を聞きながらの15分くらいの軽いウォーキング。運が良ければ巨大な珍鳥キャソワリが見られると聞いて期待したが、残念ながらこの日は出てきてくれなかった。が、もし出てきたときの注意(驚くと人を攻撃してくることもあるそうなので)を聞いている最中、大きなヤシ(?)の葉が落ちてきてガサッと音をたてて驚かせてくれた。い〜いタイミングだ。

またちょっと移動して次はケープトリビュレーションへ。浜辺を歩いたり、ボードウォークをちょっと歩いたのもココだっけかな? ここで名前は忘れたんだけど、お尻を舐めるとすっぱい蟻がいた。「舐めてみる?」と聞かれ最初は断ったものの、ルイーズが「やってみる」と言ったのをキッカケに、結局全員が舐めたのだった。ケープトリビュレーションの景色は最高。Samの自慢の「GBRと熱帯雨林、2つの世界遺産が出会う場所」。

キャソワリ注意2つの世界遺産の出会う場所
左:キャソワリ注意の看板。下には"Before"、上には"After"と書いてある。更に"CHILL OUT, NOT FLAT OUT"とも。「スピード出し過ぎないで落ち着いていけ〜」って感じか。/右:ケープトリビュレーションの素晴らしい眺め。

ランチポイントワインもついた(←私にとってポイント高し)ランチの後は、マングローブの林の中でのクロコダイルクルーズ。小さな船に乗り換え、カウボーイハットの似合うおいちゃんの説明で川を遡る。クルーズの間、Samとはしばしのお別れ。朝渡ったディンツリー川よりも小さな川で、両側にはマングローブの林が広がっている。こうゆう光景を見るたび私の胸に浮かぶのは『ドリトル先生と秘密の湖』。支流を遡ればカメのドロンコのもとへゆけそうな気がする。

クロコダイルツアーの看板小さなボートに乗り換える
左:クロコダイルツアーの看板/右:小さなボートに乗り換える。

子守歌のような説明がほら、あそこにいるよ
左:説明してくれるおいちゃん/右:「あそこにいるよ」と言われたが…。

「今の季節はワニはあまり見られないんだよ。水が温かいからね。水温が低いとワニも日向ぼっこをするんだけど、今は潜ってるコトが多いから」と説明されたのであまり期待はしていなかったが、さすがは案内人。野生のワニ発見!おいちゃんは見事に1匹の野生のワニを見つけ出してくれたのだった。―――しかしこのクルーズ、眠かった〜。ワインがちょっと入っておなかもいっぱい、空気は気持ちよく温かく、船の微妙な揺れとおいちゃんの子守唄みたいなお喋りと……。眠らないようにすんごい努力をしなくてはいけなかった。

マングローブの林ほら、あそこにいるよ
左:『秘密の湖』を思い起こさせるマングローブの林と細い支流と。/右:アレクサンドラ・レンジのビューポイント。真ん中の川がワニクルーズをした川か?

最後に寄ったのは、ディンツリー川を再度渡った戻り道にあるモスマン渓谷。モスマン渓谷にかかる吊り橋ここでもちょっぴりウォーキングをして川遊びをして、アフタヌーンティー(というほど優雅ではないが)。すごい、熱帯雨林見所を駆け足で回るツアーだった。ケアンズからの距離を考えたら仕方ないんだけどねー。熱帯雨林をゆっくり見たいなら、今度は泊りがけで考えた方がいいのかも。ポートダグラスでウォルター夫妻を下ろし(彼らはこの後オーストラリア各地を巡ってシドニーで新年を迎えるのだという。長い休みだな〜!)、やっぱり1時間かけてケアンズへ。途中の絶景ポイントで車を止めて写真を撮っていたら、頭上スレスレをグライダーが通過していって、迫力だった。

海の上を飛ぶグライダーボリュームたっぷりの夕食
左:頭の上をかすめ飛んで行ったグライダー。気持ち良さそうだなー。/
右:フィッシャーマンズバスケット。これを1人で食べるのは……ムリでしょ?

最後の乾杯この日は宿の近くで夕食。すごい混んでて、ダイビングクルーズで一緒だった数人とも出会う。魚とフライドポテトが食べたかったのでフィッシャーマンズバスケットを頼んだら山盛りの油モノが出てきて、美味しかったがさすがに残してしまった。部屋に戻って飲みなおし、次の日はゆっくり朝食を取って空港へ。昼頃の飛行機で日本へと戻る。ハードな旅行だったけど、ああ、楽しかったね。

≪終わり。読んでくれてありがとう。≫

2005.11.24

【ケアンズ旅行記 6日目】(2006.5.18記)

目覚めるともう視界にケアンズの港が入っていた。あとはもうお別れだけの、まーったりした朝。まずコーヒーを入れに行くと、ドリンクコーナーにいたPが「いい夢見れた?」と聞いてきた。「見なかった。なぜなら昨日は呑みすぎたから」と答え、笑われているトコロに「オレも呑みすぎた〜」とスティーヴが割り込んでくる。知ってるよ!

温かいコーヒーを片手に、サンデッキへと上がる。まだ日差しは強くなく、そこにいたニューヨーカーのDと、片言英語でお互いのダイビング生活について話す。仲間と海外旅行をしてると、こうゆう時間が少なくなるのだけはデメリットだなー。1人だとイヤでも喋るもの。彼は船を降りたら1〜2日ケアンズの街で休養して、その後また次のクルーズ船に乗るんだという。聞いたら私たちが最初に狙っていた船だった(出航スケジュールが折り合わなくて断念したのだ)。羨ましい〜。私がいつも潜っている海は今頃14〜15℃だと言うと、「げーっ」って感じの反応をしていた。えへへ、でも楽しいんだよー。

そんなこんなをしているうちに、朝食の時間がやってきた。バイキング形式の食事の列に並んでいると、スティーヴにこっそり呼ばれる。何かと思ったら「手拭いのお礼に」と、クルーズの記録と写真の入ったDVDを渡された。セットで150ドルもするのに、いいのかしらね? 「他のゲストやスタッフには内緒ね」と念を押され渡されたこのプレゼントは、しかし私のPCでは見ることができなかったのだった―――残念!(macで作ったヤツだったから。)

食事を終え、全員が揃っての記念撮影の後は解散である。ユキさんとスティーヴとキャプテン・ピーターには、特別丁寧にお礼を言って別れを告げた。切なかった。その後、各自の宿泊先まで送ってもらい、最初に泊まった宿に3日ぶりに戻ってきた。部屋に入れる時間まではまだ間があるので、ダイビング器材を荷物置き場に預け、身軽になってケアンズの街をぶらつく。この日は何をやったかなー。カフェでお茶したりお土産買ったり、ぐらいしかしてないハズだ。

昼過ぎに一度宿へ戻る。同じコンドミニアムタイプの部屋だが、最初のとは違う間取りで、今度の方が広く感じた。皆、相当疲れていたので、シャワーを浴びたり昼寝をしたり……。宿に帰るときにうっかりビールを買い損なってしまったのだが、シャワーの後にビールが呑みたい欲望の塊となってしまった私は、UとYが爆睡しKがシャワーを浴びている間にふらふらと酒を求めて外に出る。「こっちの方にありそう」の本能に導かれ、大きな酒屋を発見。オージービールをいくつか買い込み、部屋に戻って、ビール党のKとベランダでシアワセな時間を過ごした。

夕食のガーリックステーキ。がっつり食べたい人向き。夕方は自由行動。私は少し仮眠を取ったが、買い物熱心なUとYは元気に外に繰り出してゆく。時間を決めて落ち合って、ユキさんにオススメされたレストランで「お疲れ様」の乾杯をした。が、ケアンズにはあとまだ1日いられるのだ。クルーズに出たとはいえ、こんなにゆっくり滞在したのは初めてで、楽しかった。

2005.11.23_2

【ケアンズ旅行記 5日目-2】(2006.5.17記)

クルーズ最後に潜るのはフレアーポイント。この頃になると透明度も落ちてきているし寒いしで、かなりやる気の失せてきている私である(が、今になって写真を見てみるとやっぱり海はキレイなのだ。慣れって怖い)。最後はAllieに連れられ(こっちは半ズボンとはいえ5mmのウェット着ててそれで寒さに震えてるっつーのに、なんでこの人はTシャツ短パンで平気で潜ってるんだー。だから外人って…っ!)、増えてきた浮遊物の中をサンゴ礁に向かって泳ぐ。ここのは横に広がっている、普通のタイプのサンゴ礁だ。

3泊した船室。壁にかかるのはもちろんダイバーの写真。魚もあんまり大物はいなくなっている。Allieが一生懸命指してくれたのは、外人に大人気の大ウツボだった(私にはあんまり魅力がない。残念!)。他にはホンソメワケベラにクリーニング受けてるチョウチョウコショウダイとか、クマノミ数種とか、アヤコショウダイとか。アヤコショウダイはこのクルーズで好きになった魚なので、最後に会えて嬉しい。

最後まで欠かさず潜るぜ!の根性ある一握りの人たち(K含む)が同じポイントで4本目を潜っている間に、残りの面子は器材の片付け。日本では器材を真水で洗ったコトしかないのだけど、洗い桶にスタッフがいかにも外国モンの色鮮やかな洗剤をぶち込んでいて、ちょっとビビった。「夜まで船の移動はないので、今のうちにサンデッキで乾かしておくといいよ〜」と言われ、デッキには人数分の器材が並ぶ。壮観だけどこれで終わりかと思うと寂しい。海面を泳ぐカメがいるなーと眺めていたら、Kは海の中で出会っていたそうだ。

さようなら、GBRさてこの日はキャプテン・ピーターが初日から楽しみにしていた打ち上げパーティー。私ももちろん楽しみにしていた。バーベキューと聞いていたので、デッキで焼きながら食べながらの食事となるのかと思ったが、ちと違う。まずは2Fのデッキで、シャンパンとおつまみが配られ、「お疲れさま〜」の乾杯。いっつも忙しそうなユキさんとも、このとき初めてゆっくり話す。調理担当のスタッフが肉を焼いているが、焼きあがった肉はどこかに持っていかれてしまう。それを気にするまでもなく、私らはピーターを囲んで大合唱。

打ち上げお料理スタッフ
左:シャンパン片手に歓談中。もうビールに突入している人も。
/右:お料理スタッフはもくもくと肉を焼く。お仕事とはいえありがたや〜。

私はシャンパンの後ビールに突入していい加減に酔っ払っていて、ずーっと踊りまくりだった。ところで、クルーズの最初から、帽子があまり好きじゃない私が日よけに頭に巻いていたタヌキ柄の和手ぬぐいを、写真係のスティーヴがやたらに欲しがっていた。くれくれと言うのを「私だって必要なんだからダメ」とずーっと断っていたのだが、この日が最終日だったし彼にはお世話になったしで、最後にプレゼントしてきたのだが、その前から私に好意的だった彼がそれで一気にヒートアップで……まぁ向こうも相当酔っ払っていたから。

Adamエルヴィスにゴムのかつらを被らされてノリノリのキャプテン・ピーターおっと話がズレた。ピーターを囲んで歌って踊って(もっと長く続けば良かったのに〜。物足りないくらいだよ)の後は、食堂に移動して夕食。さっきせっせと焼いていてくれた数種類の肉(カンガルーやワニ、エミューもあった)から好きなのを好きなだけ取り分けていただく。サイドディッシュも充実してて、この日はワインも多めに回されてて、思い描いていた“バーベキューパーティー”より贅沢な夜でありました。生姜焼きみたいな味つけしてあったのはワニの肉だったかな。あっさりしててとても美味しかった〜。

食事をしながら、スティーヴが撮っていたビデオの上映。これは素晴らしい出来で、ゲストも人数が少ないから一人一人たっぷり映っていて、絶対買い!の品物だった。もちろん有料だが、ビデオも写真も買う価値はあったと思う。それから昼のうちにエントリーしていた写真コンテストの結果発表。びっくりしたコトに、私の写真も3位をもらった。他の人が撮った写真の出来からして、たぶんスティーヴの贔屓だがそれでも嬉しい。特別賞をもらっていたエルヴィスの白黒写真(もちろん水中で撮ったもの)のデータは欲しかったなあ〜。サイトに掲載されるならイイやと思ってしまったのだが、特別賞は掲載されていなくって後日がっかり。

食後しばらくしてから「船を動かすので器材を取り込んで〜」と指示があり、ちょっぴり切なくなりながら荷物をまとめる。またもや酔っ払いスティーヴに掴まったり。部屋に戻った後はもう爆睡。同室のUによるとベッドに登った瞬間眠り込んでいたそうだ。この日は一番長い移動というコトで、前日のように波の上をぼんぼん飛んで走っていたそうだが、私はちーっとも揺れに気付かなかった。

今回のログはコチラ(143本目)。写真あり。

2005.11.23_1

【ケアンズ旅行記 5日目-1】(2006.5.16記)

船に乗ったかと思えばあっという間にダイブクルーズ最終日。いやホントの最終日にはまだ1日あるのだが、最後の日は朝ごはんを食べたら解散って感じなのだ。つまり潜るのは、今日が最後である。前日と同じように朝食前の軽い食事を座禅僧になりながら済ませ、さて潜るポイントはスティーヴスボミー。スティーヴという、たしか船員さんがこよなく愛したんだか、ここで亡くなったんだか忘れたが、とにかく彼の名を刻んだモニュメントのあるポイントである。

ガイドのユキさんに連れられてエントリー。ここも前日潜ったピクシーピナクルと同じくらい、迷いようのないポイントである。まず丘のように盛り上がった岩場にあるモニュメントを見に行き、そのすぐ脇にそびえ立つ塔を螺旋状に巡りながら浮上する。丘と塔の間のヨスジフエダイ(だとばっかり思いこんでいたが、写真を見ると違うなー)の群は壮観。塔にも楽しい生き物がたくさんいた。そしてこのポイント、透明度はかなりいいのに、埃のような浮遊物がふわふわ漂っていて、変な感じだった。

塔で出会った生き物。クチナガイシヨウジ。危険がいっぱいオニダルマオコゼ(やっぱり外人が群がって写真を撮っている)。それからハダカハオコゼ。色鮮やかでじーっとしていて恰好の被写体である。埃をかぶっているように見えるところもまた好し。それから小さな穴にはまり込んだみたいになっている、アオウミガメ。カメをこんなにじっくり観察できたのは初めてなので、嬉しかった。前日カメを見逃して悔しがっていたYもこれで満足だろう……と思っていたら、後で「泳いでいるトコロが見たい」と文句を言っていた。贅沢な!

塔のてっぺんの浅場は陽光の降りそそぐ明るいサンゴ礁で、クマノミやハナダイ、スズメダイ系の小魚が群れている。ちょうど水深5mくらいなので安全停止がてら遊べる。どこを見ても何かいるので、人が多いのも気にならない(皆が塔の周りを回るので、どうしても他のダイバーと一緒になるのだ)。のーんびり遊んで、船に戻る。

朝食後の2本目も、同じポイントだ。昨日ガイドなしダイブを体験し損ねたので、今回はチャレンジしてみるつもり。ユキさんには「2人ずつでペアになった方がいい」とアドバイスをもらったが、そうやると不安のあるのが約1名、いる。カメラに夢中になると他のコトに気が回らなくなるYだ。相談の結果、私とY、UとKでバディを組み、でも一緒に潜るコトにした。「UやKは心配しすぎて楽しめなくなっちゃうから、私が組むよ。私、放任主義だから」と引き受けたのである。Y、がんばれ〜。放任主義だから何にもしてあげないよー。自力で何とかするのをじーっと見てるだけだぞー。

私が先導してYが続き、後ろをUとKで固める、と陣形を決めた。「何か珍しいものを見ても何も言わずに行っちゃダメ。ちゃんと他の人に『撮りに行きたい』って意思表示してね」「私らと同じ深度を保ってね」などなど、Yに言い含めているとき、ふと白いものがひらひらと踊るのが目に入った。何の気なしにそちらの方に目をやった私は、思わず小さな声で叫んでしまった。「エルヴィスがいる…!」。ゲストの1人、Adamがエルヴィスの白い衣装を身につけて、タンクを背負っていたのである……。

何を思っていたんだか知らないが、大ウケだった。彼はゴム製のカツラまで用意していたので、あっという間に回りにカメラを構える人たちで人垣ができた。それにしてもよく似合っている。顔もスタイルもいい男のコだったから、すらーっと長い足に白い衣装が、はっきり言って本人より似合う。(つかエルヴィスのタイプはあまり好みじゃないだけかも。私が)。彼は準備万端で短いケープみたいなのまで用意していたが、これは水中では邪魔なのでやめたみたいだ。

スター撮影会が一区切りついたトコロで、順々に水に入る。先導するんだし、一応方向だけ確認しておこうかな……とコンパスを見ていた私は、スタッフに「迷うの?」とからかわれてしまった。―――他のダイバーたちはどうやってナビをしてるというのだろう? 地形だけ? まぁ結局この透明度と地形なら、私らもナビはいらなかったんだけど……。

エントリー後、まずは打合せどおりスティーヴの名を刻んだ石版のまで行き、その傍らの塔を螺旋状に上がっていく……のだが、これがけっこう難しい。ガイドがいればその深度に合わせるのはそう難しくないのに、自分で「よし次は15mくらいまで上げよう」と思っていても、なかなか安定しないのだ。この日2本目のダイブだし、予定では早めに浅いところに移動してゆっくりするハズだったのにー。それでもなんとか深度を調節しつつ、徐々に塔の上の方に移動する。

いつもはマイペースなYが、このときはさすがにちゃんとアイコンタクトをしてきて、写真を撮りに行くときも最初に意思表示をしてくれて「できるんじゃーん」と嬉しかった。それと、他のダイバーたちの視線が優しい。私らがずっとガイドと潜っているのを知っているので、4人だけなのに気付くと何となく心配げに見守ってくれるのだ。自立したダイバーとしちゃ人に心配かけちゃいかんけど(でも別に危なっかしくはなかったと思う)、でもその気遣いも嬉しかった。

浅場でちょっと遊んでから、塔から船へと伸びるロープを頼りに船に帰る。船の下のバーでも一応安全停止をしていたら、Adamエルヴィスがやってきて4人の集合写真を撮ってくれた。ガイド無しの初ダイブ、大成功。この後の休憩時に、確か避難訓練があったと思う。船に乗った直後の説明で「このキャプテンだと一度は必ずするから。クルーの様子を見て“またか”って顔をしてたら訓練だと思ってください」と言われていたヤツだ。船室から救命具を取って甲板に集合して点呼があるだけ……なのにKは船室で寝ていてブザーに気付かず、呼びに行かねばならなかった。訓練でよかったね。

写真コンテストへのエントリーも、このときにしたと思う(ああ! 記憶が…)。1人3点までエントリーできて、スティーヴ(←死んだ人じゃなくて写真担当クルーの方)の独断で1〜3位までの賞がもらえる。商品は別にないんだけど、賞に入るとクルーズ船のサイトの旅行記に写真を載せてもらえるとあって、私も一応参加してみた。まぁお祭りだから、ね。んなコトをやったり、昼食を取ったりして、いよいよ最後のダイブである。潜りたい人はあと2本潜れるのだが、私は体が冷えてきていたので次を最後にしようと決めていた。

今回のログはコチラ(141本目)とコチラ(142本目)。写真ありあり。

2005.11.22_2

【ケアンズ旅行記 4日目-2】(2006.2.6記)

4本目(私は1本休んだので3本目)はライトハウスボミー。ボミーといっても、あまり“そそり立つ塔”のイメージはなかった。ガイドはAllieである。若い可愛らしい彼女が短パンで潜るので、後ろをついていくと目のやり場に困るくらいだ。寒くないのかまったく。私は2本目が寒かったので、見かねたUが自分の3mmフルを貸してくれた。Uの方が寒さに強いのだ。だが、せっかくだったが彼女とはだいぶ体型が違うので、5mm長袖半ズボンと大して寒さは変わらず、貸してもらったのはこの回だけ。

ここはオリーブンスネークというウミヘビが出るという。ウミヘビねぇ。あまり嬉しくもないんだが、外人は大喜びである。なんか彼らと私らは喜ぶものが違うなあ、とユキさんに聞いてみたら「外人はサメとかミノカサゴとか、とにかく危険なのが好きなんだよ」と断言されてしまった。「例えばさ、オニダルマオコゼなんか地味だから最初は無視してるんだけど、これには毒があって下手すりゃ死ぬって言った途端に群がって写真撮りだすよ」。へ、へー。そうなんだ……。これ、少なくともこのクルーズで見る限り、ホントだった。

この回、透明度はちょっと悪かった。とは言っても30mはあるんだが、前日のコッドホールなんかと比べると、見劣りがする。人間どんどん贅沢になるもんである。Yは1本休んだのに疲れが取れなかったのか、なんだか危なっかしい。途中で他のグループが群れて写真を撮っていたので近づいて見ると、その真ん中にカメがいた。私らが近くに辿りつく頃には泳いで行ってしまったのだが、海の中ではカメラハンターなYがそのカメを見逃したらしい。カメが見たいと言っていたのに、もったいない……。

ウミヘビも、一応見た。ちょっと離れたトコロをにょろ〜んと泳いでいたのだが、けっこうデカく茶色だったってくらいしか、分からない。自分たちの方向に寄ってはこなかったので、全然怖さはなかった。後は帰りがけにサメを見た。このクルーズで見たサメは全部ホワイトチップってコトにしてるが、ホントは違ったかもしれない。このときは中層を泳いでいたのだが、はるか下の方に3匹のサメが群れていたのだ。ホワイトチップは危険なサメではないのだけれど、離れていて良かった、と思った。いかにもサメ〜って姿をしているので、群れているとやはりちょと怖い。

4本目と5本目との間の休憩時間には、記念品の販売があった。Tシャツとか帽子とかマスクストラップとかお約束のものだが、けっこう種類があって迷う。街のオフィスでは売っていない、船の上でしか買えない、となるとやっぱり1つくらい欲しくなってしまうのだよねー。散々迷って、くすんだ赤のTシャツ購入。あっちこっちでTシャツばっかり買ってる気がする。着る機会も多いからいいんだけどさ。

日が暮れてからの5本目(私の4本目)はナイトダイビングで、ポイントはピクシーガーデン。ガイドはユキさん。今回も水深5mのバーで待ち合わせだったが、先に潜って船の下にいる魚の群をのんびり見ていると、Kが血相を変えてやってきた。ユキさんに向かって必死に何かを訴えている。何かと思えば海底でむなしくライトが光っているではないか。なんかの拍子に落としてしまって、慌てた途端にもう片方の手に持っていたビデオも落としそうになったそうだ。水深が10数mでよかったねぇ。40mとかあったら取りにいけないもの。

この日のナイトも楽しかった。前日のナイトで珊瑚の産卵とロウニンアジの群なんていい思いをしちゃっていたので、「今日は何もいなくてキツいなー」とユキさんは内心思っていたそうなんだけど、私は全然退屈なんかしなかった。ナイトをしてるってだけでも楽しいのだ。ライトの光の中に魚が躍りこんできたり、岩場ににょろ〜んと消える大ウツボを見たりするだけで、充分スリリングで楽しい。ホント、夜の海ってのは思っていたよりもずっと賑やかだ。一抱えほどもあるセミエビってのを、初めて見た。

この回の目玉は最後の方に出てきたカンムリブダイ。ユキさんは透明度が急に悪くなったので、カンムリブダイが近くにいる、と分かったんだそうだ。カンムリブダイってのは、硬い岩サンゴを餌にしている。んで粉状になったサンゴは消化されずに排泄され……要は私らはカンムリブダイの糞の中で泳いでいたってコトだ。サンゴ礁の白い砂浜もそれだと言うから、別に汚くはないんだけど。暗がりからぬっと出てくるカンムリブダイたちは迫力ものだった。

ナイトを終えて安全停止中に、Kが手を振りながら何かを訴えかけてきた。何が言いたいのかがさっぱり分からず、「何? なんかした私?」という顔をすると「そうじゃないのー」と返してくる。結局なんだったのか見当もつかず、水からあがってから聞いてみたら「夜光虫がキレイだって言いたかった」そうな。―――夜光虫、気付かなかったよー。くすん。もっと意思の疎通ができるようにならなきゃー。

ところでナイトダイビングのときには、それぞれのタンクに目印の小さなケミカルライトをつける。何色かあって、更にそれにテープを巻いて「黄色に1本線が私らの組ねー」と区別をつけるのだ。2回目のナイトが終わったとき、私は冷えきっていた。「唇青いよ! 早くシャワー浴びなよ!」と言われたくらいだ。私はガタガタ震えながら、ケミカルライトをゴミ箱に捨てた。と、キャプテン・ピーターが「捨てちゃダメ!」と言ってライトを拾い上げた。

(ゴミの分別なんか全然してなさそうなのに、ケミカルライトはさすがに違うのかな?)と思った私が謝ろうとすると、ピーターは「捨て方が違う」と言って私の手を掴んでちょっと離れた場所まで引っ張っていき、「ここから投げて入れろ。たくさん入れられたヤツが勝ちだ」と言うではないか。―――さっきから、後ろで歓声が聞こえると思ったら、こんなコトして遊んでたのね……。寒さに震えながら、私も仲間に加わったのは言うまでもありません。終わった途端にシャワーに飛び込んだけれども。

全てのダイビングを終えたトコロで、夕食。なので心置きなくワインを飲む。この日の夕食はメインが魚か肉の二択で、私は魚を選んだのだが、大きなアスパラ2本で飾られた肉も美味そうだった〜。ホント、この船の食事は豪勢だ。昼ごろからスタッフが台所で下準備をしていて、何が出てくるのか毎度楽しみだった。デザートのアイスもぱりぱりする皮を焼いた器に入っていて、これも船の上で焼いたものだ。ホテルシェフによる食事なんて謳っていても、機内食に毛の生えたようなものか毎度同じようなバイキングなんじゃないのーとか思っていた私が間違っていましたゴメンなさい。

この日、テーブルのとあるカップルにキャプテンからワインが贈られる。32回目の結婚記念日だそうだ。とても仲の良さそうな夫婦で微笑ましく羨ましい。食後はやっぱりデッキで星空を見ながら、ビールを飲む。ナゼか船のライトが消されていたので、星がよく見えて気持ちよかった。この夜は寝ている間にかなりの距離を移動するので、夜中、揺れで何度か目が覚めた。波の山と山の上をぼんぼん飛んでいくような感じ。「荒れているのか?」と思ったが、スピードを出していただけで、波はほとんどなかったそうだ。

今回のログはコチラ(139本目)とコチラ(140本目)。写真あり。

2005.11.22_1

【ケアンズ旅行記 4日目-1】(2006.2.4記)

ケアンズ4日目、クルーズ2日目。船室でさわやかに(?)目覚める。私らが取った部屋は4つランクがあるうちの、下から2番目の船室。2人部屋でシャワー・トイレは共同である。本当は一番安い4人部屋を狙っていたのだが、申し込んだ段階でもう満室だったのだ。が、申し込んでから、4人部屋は喫水線の下にあり窓がないと分かったので、酔いやすい人もいる私らは2人部屋で正解だったと思う。私らの部屋は皆が集まって食事をする部屋の両脇にあったので、アクセスも楽だった。Uと私、KとYが同室。

船室から海を独り占め
左:船室の窓から/右:海を独り占め

朝食前に潜るなんて腹がもたない〜と、わざわざスナックを用意してきた私たちであったが、心配はいらなかった。ちゃんとシリアルが数種類用意されている。ヨーグルトをかけたミューズリーとコーヒーを片手に船尾の台の上に座り、海を独り占めの気分で腹を満たすのは気持ちよかった(友人には座禅僧のようだ、と言われたが)。さて今日は5本ダイブである。私は3本目をお休みしようかなーと思っていた。疲れ具合を見て…だが、1日5本はちょと多い。

ゴムボート休憩所
左:私らを浜から船まで運んだゴムボート。ポイントに着くとスタッフたちがこれに乗って海況をチェックしに行く。/右:2F(?)の休憩所。屋根があってくつろげる屋外スペースはここだけなので、常に人がたまっていた。

朝日台所
左:反対側では朝日が昇ってくるところ/右:キッチンスペース

食事テーブルドリンクコーナー
左:全員が集まり食事をする長テーブル。私らの船室は
この両側にある。/右:ドリンクコーナー。

最初のダイブはピクシーウォール。ガイドはキャプテン・ピーターである。ハゲ頭が魅力的な彼はいかにもオージー!って感じのいいオヤジで、楽しかった。ブリーフィングでユキさんは「もしかするとマンタが見られるかも」と言っていた。しかし私はそれほど期待はしていなかった。「もしかすると」がすんごい強調されていたし、この時期はマンタの季節ではない。が、一応ここにはマンタのクリーニングスポットがあると言うし、先週目撃されたとも言う。見られるとイイなあームリだろうけどなー、と思いながらエントリー

最初にまず、マンタのクリーニングスポットのに行く。ちょっと深めだ。海底からぽっこり突き出した岩にはコーラルが根付き、小さな魚があちこちで群を作っている。いかにも南の海の、ダイビング雑誌の写真にでも使われそうな根だったが、残念ながらマンタはいない。ここでカメラ係のスティーヴにあい、私らも写真を撮ってもらった。しばらく遊んでいたが、マンタは現れそうにないので浅瀬に向けて移動を開始する。

しばらく泳ぐと、後ろからガンガンガンガンッと音が聞こえた。誰かがタンクを乱打している! 最初私は意味が分からなかった。事故か?と思ったくらいだ。だがピーターが「うおっ」って感じでさっきまでいた根に引き返すのを見て、やっとピンと来た。出たのだ、マンタが! 岩が見えるところまで引き返すと、はたして根の上で黒い大きな影がホバリングしている。うわー、初マンタだあ……。呆然。

残念ながら、根はかなりの深度にあった。しかも私らはさっきまでそこで遊んでいたので、もうだいぶ体の中に窒素がたまっている。ダイコンに相談してみるが、根まで戻ってしまうとすぐにDECOが出てしまいそうだ。仕方がないので根の上に浮かぶようにして、マンタが悠々と泳いでいるのを眺める。ああもっと近くに寄りたい〜。あとで見せてもらったスティーヴのビデオには、至近距離で撮ったマンタがたっぷり映っていて羨ましかった。(でも絶対彼にはDECOが出たに違いない!)

マンタの後は浅場で遊ぶ。ちょっとした岩の割れ目に入ってみたり、海面を見上げてのんびりしたり。ピーターは海の中でも陽気で楽しかった。存分に遊んだあとは、さて本番の朝食……なのだが、ここで予想もしないハプニングがあった。上機嫌でウェットを脱ごうとシャワー室に入った私だったが、ウェットを脱いだ途端に、変な感触が……。見下ろすと、マイウェット、2001年12月に買った私のウェット、買ってから4シーズンがんばってくれ、でもあと1〜2年はもたすつもりだった私のウェットが、胸から腹にかけてびりっと大きく裂けているではありませんか! うひー!

こりゃ直そうとしたら新しいのを買うのと同じくらいかかりそうなので、初マイウェット、その場でゴミ箱行き。ユキさんに「レンタルスーツに余分ありますか…」とお願いし、スティーヴに「やーいビール腹〜」とからかわれ、「違うよ、ワイン腹だよ!」と言い返しながらも私の心はプチブルーだった。懐の痛みは別としても。なぜならレンタルスーツは長袖半ズボンタイプ。寒いに決まっている。5mmフルでも1日に何本も潜るなら体が冷えるかも、と思って念のためにフードベストを持ってきたくらい寒がりの私なのに…。

それはともかく、たっぷりの朝食を済ませ(まるでホビットのようによく喰う私ら)、ちょっと休んでの2本目はピクシーピナクル。海底からまるで塔のように屹立しているサンゴ礁の周りを、深いほうから浅い方に螺旋状に回るダイブである。この塔のようなサンゴ礁を、ピナクルとかボミーと呼ぶんだそうだ。もともとは海底の根だったのが、日光を好む珊瑚が上に向かって伸びて行き、塔のような形になったらしい。ピナクルとボミーにはなんか違いもあったんだが、忘れた。尖った形がピナクルだったかな?

ピナクルの頭2本目のガイドはユキさん。塔のすぐ近くに船をつけるので、左の写真のように、海の下4〜5mのところにある塔の頭が見える。潜ってすぐに塔の根っこ部分まで行き、あとはDECOと残圧に気をつけて登ってくるだけだ。「最初はオレが連れていくけど、大丈夫そうだと思ったらガイドなしのダイビングをやってみるのも楽しいと思うよ。ここなら迷いようがないから」という言葉にも素直に頷ける。

光を当てると電気が走るみたいに光るキレイなウコンハネガイや、スミレナガハナダイ、スズメダイ系の小魚の群なんかをのんびり眺めるダイビング。3本目は同じ場所に潜るので、UとKは果敢にもガイドなしで出かけて行った。ちょっとお疲れのYと、やっぱり体が冷えてしまった私は3本目は休んでのんびり過ごす。3本目が終わったところで、昼食。お昼には毎回温かいスープがついていて、おなかを温めてくれるのが嬉しい。

今回のログはコチラ(137本目)とコチラ(138本目)。写真たっぷり。

≪つづく≫

2005.11.21_3

【ケアンズ旅行記 3日目-3】(2006.1.29記)

昼食後の2本目も同じ場所に潜るが、今度のガイドは太めのP(女性。説明担当? 恥ずかしながらスティーヴとキャプテンとユキさん以外のスタッフの名前は既に忘却の彼方なんである)。ガイドはいつもユキさんとは限らなかったが、ブリーフィングは毎回ユキさんが必ずやってくれた。あと日本ではあまり使わないハンドシグナルも教えてもらう。「サメ」とか「カメ」とか。1本目でた〜っぷり見たので「ポテトコッドはもう充分見たから」とユキさんがPに言っていた。

この回、昼食中冷房の真下にいて体を冷やしてしまったUはお休み。始まったばかりなんだから、ムリは禁物だ。私も12本全部潜るつもりはない。

エントリー時に1本目と私と同様、マスクがずれてしまったY(怖いから、なにかハプニングが起きた途端に流されるままになるのは止めて〜>Y)がPに助けられるというハプニングはあったものの、それ以外はゆっくり楽しめたダイビング。外人のガイドはがんがん泳ぐと聞いていたが、ユキさんから私らののんびりさを聞いていたからか、Pはゆっくり泳いでくれた。サメを見つけて合図してくれたりも、する。日本人のガイドのように写真を撮るところまでは面倒みてくれないけど、それは周りに山のように魚がいるせいかもしれない。勝手に撮りなさい、で充分楽しめるのだ。2本目にもポテトコッドやナポレオンを見たが、1本目ほど近くには寄ってきてくれなかった。

さて3本目のポイントはチャレンジャーベイ。いよいよ初のナイトダイビングである。ガイドはユキさん。ぜひやりたいとは思いながらも「やったコトないんですけど…」と不安がっていた私らに、ユキさんは「こうゆうクルーズのナイトはやった方がいいよ。船からライトで照らすから、ビーチでやるよりもずっと明るいし、透明度がいいから怖くない」と言ってくれた。おまけに「もしかすると珊瑚の産卵が見られるかも」とも。珊瑚の産卵! 見たいと思って見られるものではない。これで行かなきゃ女が廃る。

水中ライトを小脇に抱え、夕暮れが夕闇に変わる暗い海へ飛び込む。「皆、水面で集合しなくても大丈夫だね。エントリーポイントの下5mのところに安全停止のバーを吊ってあるから、そこで集合しよう」と言われていたので、船上のスタッフに「OK」合図をしてすぐに潜る。言い忘れてたが、このバーはとても心強かった。クルーズ中のダイビングでは必ず安全停止をしなくちゃいけないコトになっていて、あがったら最大深度や潜降時間と一緒に、安全停止をしたかどうかも記録してもらわなきゃいけない。5mのバーを使えば確実に安全停止ができるし、船の空気タンクに直通のレギュが下ろしてあるので、エア切れの心配もない。

夜の海は、思っていたよりもずっと賑やかだった。これはクルーズに限ったコトかもしれないが、まずそれほど暗くない。目が慣れれば、ライトをつけていなくてもぼんやりと見えるくらいだ。振り仰ぐと、海面から海を照らしつけている船のライトが見える。(これなら迷う心配はない)と思ったが、ユキさんによると満月のときは光が2つになるので、どっちが船でどっちが月だか分からなくなるとのコト。へえ、月ってそんなに明るいのか!

途中、珊瑚の産卵を見る。テレビで見るように、全体から立ちのぼる風景は正直よく分からなかったが、ふわふわと卵が浮き上がっていくのはハッキリわかった。まさか本当に見られるとは思っていなかったので、嬉しい。最初から最後まで、うるさいくらいにギンガメアジがやってくる。「最初はわあ、と思うけど、じきにもういいよ!になるよ」というユキさんの言葉は嘘ではない。餌目当てに寄ってくるって行ってたかな? 人間がライトで照らした先に餌がいると分かっているんだ、と。砂地には大きなコブシメがいた。

あと、夜光虫も見た。事前に「ライトはダイビング中ずっと点けていて欲しいから、消さないで自分の胸に押し当てるようにして、暗くするように。暗いところで手を動かすと、夜光虫が光るのがわかる」と言われていたので、砂地で輪になって灯りを覆い、手を動かそうとしてみたけど……ダメだ。片手にライト、片手にカメラじゃ、もう1本手が欲しい〜。後から「ダメだよ、もっと自分で動かさなきゃ!」と言われたが、手が足りなかったんだよぅ。見本を見せてくれたユキさんの手の周辺が、かすかに光ったような光らなかったような……。

クルーズ初日、3本のダイビングを終えたところで、夕食。この日の夕食はアジアンな大皿料理。大皿が長いテーブルにどんどんどん!と置いてあって、勝手に取り分けて食べる。もう潜らないので、ワインも出る。食事時のワインはタダなのも嬉しい。食事時にはカメラ係のスティーヴの撮った写真がテレビに映し出される。彼はあちこちふらふらして、勝手に写真を撮っているらしく、撮られた覚えもないのに自分の写真が出てくるのも楽しい。

食後、Kと一緒にビール片手に(これは有料)デッキに上り、星空を眺める。この日は思っていたほど星が見えなかったが、何も遮るもののない夜空の気持ちいいコト。しばらくデッキで過ごし、すっかりいい気分で眠りにつく。それほど移動がなかったせいか、寝ている最中も船はほとんど揺れなかった。

今回のログはコチラ(135本目)とコチラ(136本目)。写真アリ。

2005.11.21_2

【ケアンズ旅行記 3日目-2】(2006.1.26記)

エントリー方法はジャイアント・ストライドである。船の後方に専用のエントリー台があり、スタッフがそこで「誰が何時にエントリーしたか」を見ていてくれる。ついでにタンクのバルブが開いているか、ダイコンを持っているか(個人で持つコトを義務付けられている)、残圧が200以上あるかを、確認してくれる。私は2回か3回ダイコンを付け忘れてるのを注意された(一度はレギュを咥え忘れた)。

ところで私はジャイアントが苦手。日本ではほとんどやる機会がなく、マスクのストラップに髪が絡まないようにストラップカバーをつけているので、エントリーのショックでマスクがズレちゃうコトが多いんである。このときもざんぶと飛び込んだ拍子に、マスクがズレた。大したコトにはならなかったのだが、これで私はグロットで春日龍さんに言われたコトを思い出した。「レギュよりもマスクを意識してしっかり押さえる」。これさえ忘れなければ、2回目からはバッチリ。今回で、ジャイアントへの苦手意識がなくなった。

さて海であるが、船上から見たほど静かではなかった。荒れてはいないのだが、一応外洋なのだ。風でちょっぴり波が立っている。他の自立ダイバーたちは、船上に「OK」サインを出してすぐ潜ってゆくが、私らは一応アンカーロープの上で集合する。なんせユキさんは初めて私らのガイドをするので、この最初のダイビングは私らのスキルチェックも兼ねているのだ。「スキルチェック」と言われたときは、すわマスク脱着かとギョッとしたが(未だにダメ)、中性浮力オクトパス・ブリージングだけで済んだ。それならば問題ない。

アンカーロープに全員集まったトコロで潜降。望んでいたとおり、海面から海底が見える、青い青い海だ。グレートバリアリーフはケアンズから離れれば離れるほど透明度がいい。つまりこのクルーズでは、この日のポイントが一番いいハズなのである。が、後でユキさんが「オレもびっくりした」と言っていたが、そのポイントでも特に透明度が高かったらしい。うひひ。船のすぐ下に大きな魚が群れている。コショウダイの仲間かな? これが伊豆ならばこの群を見ただけで「今日のダイビングは良かった〜」になるのだが、が、ここではまだまだこんなの序の口だったのである……。

ただ残念ながら、私らはこの南の海で出会った魚のほとんどの名前を知らない。ガイドはしてもらったが、日本でのようなログ付けはなかったので、魚の名前を聞く時間がなかったのである。とにかくカラフルな魚を、大小取り混ぜて山のように見たコトは、間違いない。チョウチョウウオ系やアヤコショウダイの群などに目を奪われつつ泳いで砂地に来ると、そこに目玉のポテトコッドがいた。

どうやらどこかのツアーが餌付けをした後らしい。今はマイクボールは餌付けをしていないのだが、人間がやってきたので「餌?」と思ったのか、ポテトコッドが擦り寄ってくる。事前に「触っちゃダメだよ」とは言われていたが、向こうからぶつかってきたらどうしたらいいのか。Kのビデオには必死で逃げる私が写っていた。ポテトコッドを囲んで写真を撮りまくり、ふと上を見ると、頭上にナポレオンが浮かんで―――ナポレオン!? うひゃーどっちを見ればいいのか迷う。なんて贅沢な迷いなんだ! 後で聞くと、ナポレオンも餌目当てで、でもポテトコッドの方が強いから順番待ちをしていたそうだ。

かなり長い時間ポテトコッドとナポレオンと戯れ、また少し泳ぐ。今度はホワイトチップがいた。ユキさんに続き、小さな洞窟のようなところを潜り抜けたトコロで、ユキさんが「もう1人は?」と聞いてきた。え?と振りかえると、Kがいないではないか! 一番ダイビングが上手いKが、まさかはぐれるなんてコトは……いっつも後ろにいるから気にしてなかった……どどどうしよう「最後に見たときは笑ってました」になっちゃったら! とりあえずさっきいた場所に戻ろうと岩場をぐるっと迂回してる最中に、反対方向からKがやってきたときには、本当にホッとした。

Kの方もツユベラの写真を撮るのに夢中になって、ふと気付くと私らがいなかったらしい。吐く泡も見当たらないし(それは洞窟に入っていたから)、とりあえずさっきいたホワイトチップのトコロに戻ろうとしている途中で、岩場の向こうの泡を見つけて飛んできた、と言っていた。かなりドキドキしたそうだ。……そりゃそうだろう。Kだから慌てず行動できたんだと思う。私らはお互いちゃんと監視しあってる方だと思うが、それでも油断すると危ないったら。ダイビングの事故はたいてい、はぐれたときに起きているんである。

その後は平穏無事に、1本目のダイビングを終了した。1本潜ったトコロで、昼食。水温が高いとはいえやっぱり体は冷えるので、温かいスープが嬉しかった。昼食に関してはナゼかよく覚えていないのだが、3回ともバイキング形式だったと思う。どの食事も期待以上に美味しかった。いや期待値も低かったんだけど、しっかりちゃんと美味しかったのだ。手間はかかってるし、味のバリエーションはあるし、絶対におなかが空かないよう、間にも手作りのお八つがでてくるほどだ。この船で、私はちょと太ったんじゃないかと思う。

今回のログはコチラ(134本目)。写真たっぷり。

≪まだつづく≫

2005.11.21_1

【ケアンズ旅行記 3日目-1】(2006.1.19記)

この日も晴天。ホテルから車で10分ほどかかる待ち合わせ場所までは自力で行かねばならない。7時の待ち合わせに余裕を持たせ6:30にはタクシーがやってくるので、いくら早くても起きねばならぬ。がんばって起き出し、クラッカー等の軽食を詰め込んで部屋を出、時間通りにきっちりやってきたタクシーに乗り込む。

着いたケアンズコロニアルクラブリゾートホテルは、かなり敷地が広そな高級ホテル(?)だった。「マイクボールの待ち合わせ場所はあっち」と指し示された方に行ったつもりだったんだけど、それらしきものが見つからなく、ちょっとウロウロしてしまった。結局、ホテルのレストランの中の1テーブルが待ち合わせ場所だったのだが、遅れちゃいかんと思っていたら早く着きすぎて、係の姉ちゃんが一人ぽつんといるだけだったのだ。分からないよぅ!

お約束の「私はツアーの危険性を承知しています。何が起きてもツアー主催者に責任を求めません」の誓約書とかダイビングに関する経験値などを書いているうちに、お仲間らしき人たちがぞくぞくやってくる。ゲストはほぼ定員いっぱいの26名(+スタッフが11か12名乗り込む)。ところがどんなツアーに参加しても必ずいる日本人が、他に、いない……? 全員が揃って書類を書き終わったところで、説明が始まる。が、ほとんど聞き取れない。なんせ場所がホテルのレストランで、宿泊客の朝食のピーク時である。後ろがうるさいのだ。ただでさえ英語の説明で集中しないと聞き取れないのにー。Uによるとツアーのスケジュールとか船の説明とかしていたようである。まぁ行けばわかるだろうと、途中から聞くのを諦める。

持ってきた荷物をダイビング器材とキャビン行きに分けて、預かってもらう。ダイビング器材はセッティング場所にまとめて置くコトになるらしい。身軽になったところで車に乗り込み、空港へと向かう。これまた10分ほどの道のりだ。参加メンバーたちは「やるぜ! やるぜ!」な雰囲気で盛り上がっているが、気弱な私は「準備はバッチリ?」と聞かれて「I hope so.」と答えて笑われてしまう。どうやら本当に私らの他の日本人ゲストはいないようだ。船に日本人ガイドがいるハズだが、ちょと緊張する。

着いたトコロは国内線の空港なのかな? 小型のセスナなんかがたくさん置いてある。「趣味で小型飛行機乗りまーす」という人たちが使う場所のようだ。小さなオフィスで待っていると「第一グループ。誰々〜誰々〜」と名前を呼ばれる。3グループに分かれて行くらしい。私たちは2番目に名前を呼ばれ、10人乗り(? 乗客8名+操縦席2名。このときは副操縦士はいなかった)の小さなセスナに乗り込んだ。前もってカメラは手元に出しておけと言われていて、その他の荷物は翼にある荷物入れに収まる。

小型セスナ
私たちの乗った小型セスナ。たぶん10人乗り。

離陸直後前になり後ろになりして飛ぶお仲間機
左:離陸直後。右:前になり後ろになりして飛ぶお仲間機。

ここから200だか300kmだか離れたグレートバリアリーフ最北端のリザード島まで、一気に飛ぶのである。かかった時間は約1時間くらいだっただろうか。これから潜るサンゴ礁の上を低空飛行で飛ぶので、眺めも最高である。海に映るセスナの影を眺めたり、リーフの形でどの辺りを飛んでいるのか見当をつけたり、前になり後ろになりして飛んでいる他の2機のセスナを探したり。ダイビングするので意識的に水を摂っていたせいでトイレに行きたくてたまらなくなった以外は、とても快適な空の旅だった。

が、その1点が無視できない。リザード島らしき島が見えてきたときにはもう我慢の限界で、しかしいったんその島をセスナが飛び越えてしまったときには、もう私の人間としての人生は終わりかと思った。が、着陸に入る方向が進行方向と逆だっただけで、やっぱりその島にセスナは着陸してくれた。でも着いた場所にあったのは東屋みたいな屋根のある休憩所だけで、トイレらしきものは見当たらない。スタッフが勢ぞろいでにこやかに出迎えてくれるが、私の気はそぞろである。(この休憩所にいる私らとは逆方向のゲストが飛び立つまでここにいなくちゃいけないのかいっそ草むらでしちゃだめか)とまで考えていると、スタッフの一員が日本語で話しかけてきた。「トイレ、行きたいですか?」

……日本人ってのは、トイレが近い民族なんだろうか? でなければ私がよっぽど切羽詰った顔をしていたのか? なんでもいい。とにかくこのとき一番聞きたかった言葉だった。「この道を行くと浜辺に出る。そこに建物があってトイレもある。皆も行くので、そこで待っててください」を聞いてすぐに走り出す私。一応このときも自己紹介をされたのだが、彼はスティーヴというカメラ担当のスタッフで、日本人スタッフのユキさん(男)以外では、上手に日本語を話せる唯一の人(料理担当の人も片言は喋れたが)であり、この後何くれとなく私らの世話を焼いてくれるコトになる。

私が人間に戻ったころ、他の皆もやってきた。落ち着いてみると海に向かっての壁のない建物(たぶん他のツアーにも使用されるんであろう)の目の前は、素晴らしく真っ白な砂浜と透明なブルーの海が広がっている。「ここからボートに乗って船に行くので、靴を脱いでボートに乗ってくれ」と言われ、素足になって浜辺に出る。熱いけど気持ちいい。波一つない湾内に、たぶん私らがこれから乗り込むのであろう、白い船が泊まっている。この船に3泊するのだ。モーターのついたゴムボートで船まで移動し、乗船。きゃー。

リザード島の砂浜
やっと人間に戻れたリザード島の砂浜。
左手に遠く見えるのが、これから乗り込む船。

スーパースポート号
拡大。船の名前はスーパースポート号。

乗船してすぐに、ウェルカムドリンク&菓子、フルーツの載った机を囲んで座らされ、まずスタッフ全員が紹介された。その後、船やスケジュールの説明に入ったので、私らはユキさんから日本語で説明を受ける。事前にはどの日に何本潜るのかが今イチはっきりしていなかったのだが、初日に3本、2日目に5本、3日目に4本で、最高12本潜れるそうだ。豊富なソフトドリンクは飲み放題、ダイビング後には常に乾いたタオルが用意され、器材のセッティングも最初に一回だけすればいい、という至れり尽くせりのサービス。説明後に部屋に行ってみると、ちゃんとした布団もある。思っていたよりずっと居心地がよさそうだ。

器材置き場サンデッキ
左:器材置き場。一番奥が私専用の置き場で「To-ko」と名札もついている。1回潜った後はここにタンクごと器材を置いておけば、スタッフが空気を詰めて置いてくれる。とても楽。/右:船の最上部のサンデッキ。昼間は日光がキツすぎるが、夜はKと一緒にここでビールを片手に星を眺めたり、した。2番目の夜の星空は最高だった。

そんなこんなをしている間も船は移動を続け、最初のポイント、コッドホールへとやってきた。私らがこのクルーズに参加しようと思ったのは、このコッドホールへと来たかったからである。ケアンズからの日帰りじゃあちょと遠い。だからクルーズだったのだ。Sさんがコッドホールに潜ったときは、残念ながら目玉のポテトコッド(カスリハタ。大きい)は見られなかったと言っていたが、さあ、私らはどうか? 他のほとんどのゲストはガイドなしのセルフダイブをするらしいが、私らはユキさんにガイドを依頼した。

≪つづく(多分この日の日記が一番長いです。)

2005.11.19〜20

【ケアンズ旅行記 1〜2日目】(薄れゆく記憶を必死で甦らせつつ、2006.1.17記)

19日(土)から26日(土)は、ケアンズに行ってきた。久しぶりの本格的な海外旅行、しかも初めてのダイビングクルーズというので、数ヶ月前から指折り楽しみにしていた旅行である。ほぼ全部の手配を私が担当したため、トラブルなく楽しめるか一抹の不安もあるようなないような。思えば4年前に今回と同じメンバー、U・Y・K・私でケアンズに行ったのが、このダイビング漬け生活の始まりだった。私以外の3人がケアンズ合わせでCカードを取り、初心者3人+ブランクダイバー(私)の危なっかしいグループでケアンズの海に潜ったんである。当時の日記を読むと笑えるが、あの時欲しかったものは全部買ったし、ええ、もう戻れなくなっていますよ……。

そう。あのときはレンタル器材で失敗した。ので今回は、重たい重たいダイビング器材を引きずっての旅である。重量制限があるからダイビング以外の荷物は極力減らした。最後まで迷ったのが、寝袋である。クルーズ船はとにかく寒い、夜具など無いに等しいと、体験者Sさんは言っていた。寒い中では寝られない。ダイビングに寝不足は厳禁。体を冷やすのもタブーである。Sさんは「持っていった服を全部着込んだ」と言っていた。しかし寒がりの私がそれで耐えられるか……。結局、保険をかける気持ちで500gの寝袋は荷物に収まった。もし使わなくても不安を抱えて出発するよりは、マシだ。

飛行機から見た朝焼け4年前と同じ面子が成田に集まり、21時15分発のカンタス航空でケアンズに向けて出発。飛行機の中で一泊だが、カンタスのは座席がワリとゆったりしていて助かる。翌20日、定刻の5時50分よりちょっぴり早く、ケアンズ到着。いつもは飛行機と宿だけはパックで取っちゃうのだが、今回は船内泊があるのでパックは使えず、街の中心からはちょっと離れたコンドミニアムタイプの宿を自力で予約している。早朝だというのに燦々と照りつける太陽のもと、ボックスタイプのタクシーを捕まえて宿へと向かった。一泊一人あたり約2,800円の宿である。

典型的なケアンズの家。自分でペンキ塗りなおしたくなる、こんな家は大好きだ。行ってみると、事前の情報では開いているハズのレセプションがまだ開いていない。7:30〜と書いてあるので1時間弱待つことになる。仕方ないので周囲を散策したりお喋りしたりして、時間をツブす。7:30になったトコロで邪魔な荷物を預け(チェックインはまだできない)、街へ。久しぶりに歩くケアンズの街はやたらと建築ラッシュだった。後で聞いたところによるとケアンズは今人口爆発中で土地は高騰、マンションががんがん建っているらしい。「あんまり“都市”になって欲しくないよね」と勝手な希望を述べつつ、歩く。

ペロリと平らげた朝食街の中心まではゆっくり歩いて30分くらい。このホテルから中心地への往復が、今回ちょと堪えた。浜辺を歩くとそう遠くも感じないのだが、街中を歩くとじりじり照りつける太陽に体力を奪われるのだ。だがこのときはまだ着いたばかりで元気だったので、なんなく中心部に辿りつき、目についたカフェで朝食。長旅の後だっていうのに健康的に腹を空かせていた私は、ボリュームたっぷりの朝食セットを平らげた。ゆっくり食事をしているうちに、どんどん街が賑やかに……も、ならないのだよね。なんせこの日は土曜日。閉まっている店が多かった。

まぁ観光客相手の店なら開いているだろう。どうせこの日は街を見てまわってお土産の目星をつける他は、何の予定も入れていない。と、まずピアに行ってみたがが……あれ? ピアってこんなに寂れていたっけ? 改装中なのか店がほとんどない。が、エスプラネード沿いには大きな公園ができていた。たしか以前来たとき工事中だったトコロではないか? 今回は再訪だしほとんど船にいるんだし、と、ガイドブックを1冊も買わなかったのでいろいろビックリである。公園には海を見渡す大きなプールができていて、さすが土曜日、地元の人で賑わっている。広い芝生エリアといい、散歩道といい、たくさんのベンチやテーブルといい、「ああ家の近くにこんな公園があったらなー」って感じだ。私らもここの木陰でしばらく休む。

エスプラネードの公園
木陰に入ってきた鳥が撮りたくて、ずいぶん粘った。

ここで私は自分へのお土産第一号を購入。4年前ケアンズにきたとき、友人Uは山歩き用のズボンを買った。長ズボンだがチャックで切り離し可能で短パンにもできる、優れものである。これが私はずっと羨ましかった。同じようなのが欲しくて探していて、日本でも似たようなものはたくさん見つけたのだが、どうもピンとこなかったのだ。材質が気に入らなかったり、切り離す部分が気に入らなかったり。短くなったときに膝に引っかからないくらいの位置で切り離せるのが、欲しかったのである。

それがこのとき、ふらっと入った店に、あった。材質もしっかりしてる。色も好き。切り離す位置も腿の半ばくらいの短めで問題なし。お尻についてるパッチがカワイイ。しかも11,000円くらいのものが6,500円くらいまで値下げ中! さっそく試着させてもらい、体にもフィットしたので、購入。この店の品物はなかなかキュートで、友人Yも女のコ向けのデザインの半ズボンを即決で購入していた。

船では朝食前に1本潜るらしい。……なにも腹に入れずに潜るなんて、耐えられない。何か出るかもしれないが、念のためシリアルバーのようなものを買っておこう。しかしオーストラリアは食物の持ち込みに厳しい。じゃあ着いた日に現地のスーパーででも買い込もう。そんな予定だったので、そろそろチェックインできる時間が迫っていたコトもあり、スーパーに寄ってホテルに戻るコトにする。確か4年前にお世話になったウールワースが帰り道にあるハズだ。

そんな確信(?)のもと歩き始めたのだが、覚えていた場所にウールワースがない。あれ? 無くなっちゃったのかしら?(場所を勘違いしていたコトが後で判明) 仕方がない。Yが持ってきた簡易地図にスーパーが数箇所載っているので、他の店に行こう。

……ところがその後巡った2店は品揃えがあまりに少なかった。簡易キッチンのついているコンドミニアムに泊まるのだし、生鮮食品を売っているスーパーはぜひ押さえておきたい。人に聞こうにも暑すぎるからか、歩いてる人が見つからない。炎天下の街を「オージーだって生鮮食品は食うはず……絶対にどこかにある……」とうわ言のように呟きながら歩き回る私たち。やっとケアンズセントラル内のコールズに辿りついたときは凱歌をあげたくなったほどである。やっぱ最低限の街情報は必要ね。

セントラル内にフードコートもあったので、ここで昼食を食べ、買い物をしてホテルへ。やっと部屋に入れました。天井で回ってるファンが落ちそうで危なっかしかったけど、泊まれればいいのだ。ベッドはそう悪くなかったし、まぁ値段からしちゃ上出来でしょ。レセプションが朝7時半まで開かないなら、今夜のうちにダイビング以外の荷物を預けなきゃいけない。仮眠をとったり、荷物の整理をしたり、出航前に出そうと葉書を書いたり、翌朝のタクシーを手配してもらったり、荷物を預けたりしているうちに、夕方っぽくなってきた。

今度は浜辺を歩いてナイトマーケットへ向かう。日差しもだいぶ和らいできた。色鮮やかな鳥が気持ち悪いくらい群れている木がある。うるさいくらいの鳴き声。ああ、南国だ。ナイトマーケットをぶらつき(もう荷物を預けてしまっているので、実際に買い込むのは帰ってから)、またもやフードコートで夕食。どこかで見かけたポストを探してまた街をさまよなう。この日だけでずいぶん歩いたなぁ。ポストオフィスを見つけたものの、その前にもポストが無いのは、なんで? それでも根性でポストを捜して「明日っから船に乗りまーす。大物が見られるとイイなあ」の絵葉書を投函して、タクシーでホテルに戻って就寝。次の日の朝は早いのだ。

≪つづく≫

2005.11.18

今週は仕事の谷間で来週の仕事をしても定時近くに帰れるハズだったのに、急な外出(しかも1件は静岡まで!)・打合せ・頼まれ事が重なってけっこうピーピーだった。毎日「あと○日働けばケアンズ……!」「この残業代でまた潜れる……」と唱えて耐えてはいたものの、さすがに目が疲れてしんどい。最終日の今日なんか、日付の変わって30分も会社にいた。つまりこれを書いてる今はホントは19日。でも明日、いや今日の夕方にはもう成田である。夜には飛行機の中である。ケアンズに向かって旅立つのである。うふ、うふ、うふふふふ……。

さて行く前に。水曜日、ちょっと遅れた妹の誕生日祝いに韓国料理を食べてきた。韓国料理って2人だとロクに種類が食べられないと言ったのに、去年から韓国韓国とうるさかったからだ。せめてもう1人……と久しぶりに会う友達を呼び寄せ、彼女がやってくる前にまずは妹と2人でダイビング器材の量販店に行った。先輩風を吹かせてフィン・グローブ・ブーツを選んでやり(しかしあの店の店員は不親切だ。横浜の店のMさんが懐かしい…)、品物が決まったトコロで「グローブは買ってあげるよ、誕生日プレゼントに」と今度は姉貴風など吹かせておく。(全部をプレゼントにしないのは高いから!)

量販店を出るとい〜い感じにおなかが空いていたので、新大久保近くの烏鵲橋(オザクキョ)という店に。ここのカムジャタンを絶賛してる日記をかなり前にネットで読んだコトがあって、一度行ってみたかったのだ。混んでいたらよしながふみのマンガに出てきた店に流れようと思っていたが、水曜だからかあっさり入れた。少し遅れでやってきた友人とあれこれ注文したが、お目当てのカムジャタン(&おじや)は写真で見るとかなり量が多そうで、他を頼めなくなりそうだったので、次回のお楽しみに回す。ざ〜んねん。

しかし他の料理も美味しかった。数種類の突き出しももち餃子スープもレバー刺も。焼肉もけっこう食べた割に、翌日全然胃もたれしていなかったのは全体的に優しい味付けだったからか、それとも最後に食べた「おこげご飯」が胃をなだめてくれたおかげだろうか。「おこげご飯」はおこげにあんをじゅーっとかけるヤツかと思ったら、玄米お粥っぽい料理でちょっとビックリした。あとマッコリも呑んでみたが、かなり弱い飲みやすいお酒なのね。どぶろくはもうちょっとキツい方が好みだなぁ。その後友人をお持ち帰りし、またダラダラお喋り。1年以上も会っていなかったと彼女は言うけど、全然そんな気はしないんだなあ。

今週の頭、実は喉が少しいがらっぽくて「うひゃー今風邪ひくワケにゃあいかないわ!」と気張っていたのだけど、滋養のあるもの喰って寝て楽しい思いをしてるウチに治ったみたいだ。目の前の人参に勝る薬はないなあ! んで人参は食べないと腐っちゃうので、来週は食べ頃人参むしゃむしゃしてきます。寒い日本よ、一週間のさようならー。(さ来週の仕事量は今からちょっと怖いけど……しかも人参ナシだ……。)

2005.11.15

昨日の夢は忍者学校に入ってマッサージしたり鶏肉と豚肉の違いを勉強したり廃墟で訓練に励んだりする夢らしい荒唐無稽なモノだったけど、人間関係がすごく寂しかった……。なんなの夢魔でも来てるのか?(単に寝過ぎかもしれん。)

さて先週〜今週見たDVD感想×2。まずは『スパイ・キッズ』。これは噂にたがわず面白かった! 気楽に、でもかなり積極的に楽しみました。注目ポイントは人それぞれだと思うけど、私のは「もおおおおー、なんでバンデラスってこうゆうバカみたいな役が似合うのーーーー?」でした。濃いい顔は好みじゃないハズだけど、アントニオ・バンデラスだけは別格。かつては腕利きのスパイだったってのが全然説得力がないトコロがすごく好き。続編が楽しみ。

2本目は『戦場のピアニスト』。「戦場の」ってのはどうなんだろう。なんか違うイメージがしちゃう。これはずどーんとならずにはいられない映画だけど、見てよかった。実話だけあって、変に盛り上げたりせずに淡々と、徐々に壊れていく有様を見せてくれる。そんなに酷いコトにはならないだろう、すぐにこの状況は終わるだろう、と思って従っているうちに事態は抜き差しならないトコロまで来てしまうのだ、と。皆そんなに悪人ではなくて、そのとき自分にできる精一杯をやっていて、でもそれだけじゃダメなんだ、と。

中学生の頃だったか、祖父母に戦争体験の話をしてもらってて。「あの当時を知らないくせに批判されたくない」みたいなコトを言われた。その後、祖父母は口を閉ざしてしまった。あのときは「えー別に批判なんてしてないのにー」とムクれたものだけど、でもたぶん私が生意気を言ったんだろうと思う。ハッキリは覚えていないけど。でもあのときも今も、やはり話して欲しいと思う気持ちに変わりはない。過去を批判するためじゃなくて(誰にもそんなコトはできない)、あのときああしていればこうしていれば、を今度こそホントにするために。超えちゃいけない一線を越えないために。話すコトはツライことだと思うけど、でも伝えて欲しい。

なんてコトを、思い出して、思った。特にラストのテロップで「戦後はナチスがユダヤ人を助けたと言える風潮ではなかったから、助けたのはオーストリア人だとされた」とか出た辺りで。戦中のナチスのユダヤ人迫害は有名だし言うまでもないけど、戦後のそうゆう反動も哀しい。

2005.11.14

リアルな悪夢を見た。夢なのに視点も変わらず時間の経過もハッキリしてて、予知夢と言われても信じられそうな。そんな力は無いので予知夢だとは思ってないけど、もしそうゆう力があるならば一生出産はできないと思うような悪夢。詳細も覚えてるが、書く気がしない。いったい何であんな夢を見たんだか。

さてさて。またもや先々週〜先週見たDVD感想×3。まずは『ブリジット・ジョーンズ きれそうなわたしの12か月』。前作を見たときにあんまり面白くなくて、「結局『デブで妄想女の私だけど、そんな私をありのままに愛してくれる王子さまがいるの(はぁと)』かよ! 納得できねえ! あれにウケるのって『なんの取得もない私にだって、いつか…』とか夢見られる永遠のオトメだけなんじゃないのー?」なんて感想を抱いたのに、なぜか2を借りてしまった。

が、あれ? けっこう面白いじゃん。ブリジットがちょっとカワイイ。彼女の魅力さえ納得できれば、王子さまが現れようが何しようが別に腹も立たないじゃないの。これは脚本が面白くなったのか、期待度の差か、それとも私の感じ方が変わったのか? 粗筋も覚えてない前作をちょっと見直したくなったが、見直して自分が永遠のオトメになってしまったのを自覚するのはイヤだから止めておこうと思う。

次。『猟奇的な彼女』。とにかく彼女がカワイイ。他はどうでもイイや。そんなにいい脚本とは思わなかったけど別に腹の立つコトもなかったし、男のコの方も情けな〜い感じがいい感じ。最後は『イングリッシュ・ペイシェント』。過去が少しずつ明らかになるトコロとかは好きだし、映像はキレイで普通に楽しみました。特にエキサイトはせずに。あーでも指のシーンは別。「ややややや止めてーっ」って感じです。『ニモ』のギルで「うおーウィレム・デフォー!」になっているせいもあり。役柄では旦那がちょっと切なかった。『ブリジット』を観たすぐ後じゃなかったら、もっと感情移入できたかも(旦那=コリン・ファース=ブリジットの恋人の弁護士)。

――となんだかインドアな日記が続く今日この頃だけど、自転車生活も続けている。5日の土曜日はい〜い天気だったので、片道8kmほど走ってきた。未だに大きな車道を走るのは怖くて、横断歩道でしか渡れない交差点を避けようとして道に迷ったりしている。でも所用を済ませた帰り道、あまりにも混雑している歩道にウンザリして思い切って車道に出てみたら、これが気持ちイイったら! 二車線だったから車はほとんど右側を走ってくれるし、軽い下り坂でほどよく飛ばせる。ああこうゆう道が続けば……と思ったけど、途中で他の幹線道路と合流して交通量がすんごくなったので、泣く泣く歩道に引き上げました。携帯用ポンプも替えのチューブも買ったし、寒すぎる気候になる前に、次はも少し遠出したい(でも旅行が終わってから。今ケガをしちゃ堪らない)。

2005.11.11

11/4の金曜日はカムカム・ミニキーナの『越前牛乳』を観に行ってきた。劇団旗揚げ15周年記念公演だそうで、演目の『越前牛乳』もたぶん人気のある作品なんであろう、再々演である。15周年ということは旗揚げは1990年、『越前牛乳』は1回目が1993年、2回目が1996年で、私はたぶんこの2回目を観ている。カムカムが注目され始めて演劇雑誌で紹介されたのを目にして初めて観に行ったのが、1994年の『超天然記念物モアイ象』だったから。

ずっと、カムカムに対する私の評価は微妙〜なモノだった。こないだ感想を書いたファントマ同様、すごく面白いシーンがあっても全体的には今イチだったり、役者の力量に差がありすぎてときどきノれなかったり、やりすぎて引いてしまったりするコトが多いから。これが例えば三谷さんの舞台だと、いい役者は揃えるわ脚本に隙はないわで、下手すりゃ芝居を観てるってコトさえ忘れてしまう。没頭して笑って泣いて、終わった後しばらくは高揚した気分が続く。それが舞台の魅力である。が、カムカムやファントマの場合いくら笑っていても、ふっと素に戻ってしまう時間があるのだ。

それに、去年の本公演の『超人』がヒドすぎた。看板役者の八嶋さんはテレビで忙しいし、どうなんかなー今回は……前見たときは八嶋さんはみのもんたよしのり(実はミノモンタウルス)役だったけどそんなイイ役やる余裕があるかしら……八嶋さん松村さんが中心人物を演じてないと面白くないのよねー、と不安を感じながら劇場に行ってみると、友人が取ってくれた席はなんと一番前の列。ホントは中央の前から5〜10列目くらいが一番見やすいんだけど、でも表情がハッキリ見てとれる席なのは間違いない。そして『越前牛乳』は記憶にたがわず面白かった!

いや記憶ったって「なんとなく面白かった気がする」くらいのもんで、ストーリーなんかは全然覚えていなかったんだけど(みのもんたよしのり以外は)、改めて見て覚えてないのは当然だと思った。だってストーリーなんかあってないようなもんなんだもの。言葉遊びで繋げて作った、ハイジと越後屋・越前屋・マダム越中のドナドナ争奪戦の物語としか言えない。でもそれで十分だ。感動のラストシーンとか深遠な哲学なんてもんはいらないのだ(もちろんそれが売りで面白い舞台も、ある)。

役者の人数は、少ない。それがいい。1人が何役もやっているけど、客演さんも含め皆実力相応の役をやっていて、「この人がいなけりゃなー」ってのがない。脇役をやっているときも隙がない。一緒に観た友達が「一番前で表情までよく見えたけど、どのシーンでも手抜きしてる役者がいなかったよねー。こうゆうのが、好きなんだ」と喜んでいたが、同感だ。松村さん、八嶋さんが中心的な人物を演じているし、主役はこれまた間違いのない看板女優の藤田さん。96年に誰がハイジを演じていたか全然覚えていないのだが、今回のハイジは忘れないんじゃないかしら。

それにしても八嶋さんと松村さんで藤田さんを苛める苛める。あれに負けないようにならないと、カムカムの看板女優は務まらないんだよなーと、げらげら笑いながらも感心しきり。藤田さんを個別認識したのが99年の『燻し銀河』で、それ以来大好きだ。ときどき女を捨てすぎて退いちゃうコトもあるけどね。松村さんの役者弄りは昔っからで、相手に力がないとただの弱いもの苛めみたいで見てても面白くない。今回みたいに力のある人相手だと、めちゃ笑える。その松村さんが八嶋さんにだけは弱いのも、もうお約束か? あの体格の差で松村さんが負ける側だから、こっちも遠慮なく笑える。

ふっと素に戻る瞬間がなかったとは、言えない。ちょっとやりすぎな部分もあった。でも不満よりも喜びの方が断然大きい。こうゆう芝居を見たかったのだ。劇団が大きくなったおかげか衣装もカッコよかった。特に佐渡の女王のマダム越中のドレスが。惜しむらくはこの脚本が昔のものだというコトだよねー。いや時代遅れとかそんなんじゃなくて、次の新作にもこうゆう面白さを期待していいの?と不安を感じるって意味で。『超人』の路線よりも、『越前牛乳』の路線をおして欲しいんだもの。ああ次回作はどうなるの!?

ところで八嶋さん、昔と違って今はあんなにテレビに出てるのに、あんなに鋭くみのもんたを斬ってもイイの? 本人が聞いても笑える悪口じゃなくて、けっこう痛いトコロの図星ついてたと思うわー。だから客には(私にも)ウケたけどさ。芸能人もけっこう観に来たり、してないのかしら。ヤバくないのかしら。心配だわ。

11/14追記:思い出した。舞台の途中のアドリブで、八嶋さんがカムカムのコトを「ウチ」と言っていて、それがすごく嬉しかったんだった。舞台出身の役者さんはやっぱ舞台を続けて欲しい。同じ劇団を続けてくれたら、なお嬉しい。

2005.11.9

鎖骨を過ぎる辺りまで伸びていた髪をばっさり切ったら、勤め先の部長には「どうしたの? 何かあったの?(失恋?)」と聞かれたが、よく喋る男のコには「おっ、旅行の準備すすんでるねー!」と言われた。さすが分かっていらっさる。

さてビデオの感想もたまっているので、先々週〜先週見た3本をまとめて。まず『ハリー、見知らぬ友人』。善き夫善き父として平凡な生活を送っている主人公が学生時代の友人ハリーにばったり再会。主人公は相手の顔も覚えていなかったのだが、ハリーは主人公が卒業文集(だったかな)に書いた詩や小説について熱く語り、彼に再びペンを取らせようとする。主人公の創作活動を邪魔する存在を排除しながら……とゆうホラー(?)。怖ぇ。ハリーがちょっと魅力的だから更に怖い。ラスト近くの「当たり前だろ?」って態度も怖い。でも最終的に、主人公、得してないか?

2本目は『五線譜のラブレター』。作曲家コール・ポーターの人生を彼の作曲した歌で再構築って感じ。ミュージカル好きのワリに『キス・ミー、ケイト』も『エニシング・ゴーズ』も見ていないんだけど、あの時代のミュージカル曲は知らなくても妙に懐かしい。ゲイの彼の妻にしてミューズ、アシュレイ・ジャッド演じるリンダも魅力的。『ヤァヤァ…』のヤング・ヴィヴィから、あの顔がとっても好きになってるわ。人生を振り返るのに舞台形式ってのに最初だけちょっと馴染めなかったんだけど、それに慣れてからは『ムーラン・ルージュ』よりも断然、面白かった!

最後は『ファインディング・ニモ』。やっと見ました。ダイバー必見とか言われているので、期待しすぎないようにしよう……と思っていたんだけど、いやホントにダイバー必見だったわ。GBRの珊瑚の色彩、水面から降り注ぐ光、迫力あるドロップ・オフ、豊富な種類の生物たち。ホントは水中ではあんなに色鮮やかには見えないんだけど、ライトを当てるとあの通り、ビックリするくらいカラフルなのよねー。水中でキラキラ光る微細な浮遊物や影の形やゆらめくソフトコーラルが「そうそうそうこんな感じこんな感じ!」ってので、とっても嬉しくなってしまう。

生き物の生態に関しちゃ嘘も多いけど、そんなのツッコむのは野暮ってもんでしょ。妻を亡くしたマーリンが「じゃあ次は僕がお母さんになろう!」じゃ全然違う話になってしまう。ウミガメの大移動なんか、ホントであって欲しいくらいだ。あれだけたくさんのウミガメが潮に乗って移動していたら、壮観だろうなあ……。

マーリンとニモの親子もナンヨウハギのドリーもAA集会やってるサメたちも深海魚もそれぞれ魅力的で印象的だったが、やっぱ一番は水槽にいたツノダシ、ギル! 特典でたしか監督が「最後まで見ればきっとギルを好きになる」と言っていたけど、私は登場しての第一声でシビレましたぜ。「うわ、しぶっ! なんていい声なんだー」と思ったら、ウィレム・デフォーとは!(すいません知りませんでした)。ニモが失敗したときの落胆ぶりまで「セクシー!」と思っちゃったよもうたまらん。

この映画に出てきた魚、特にツノダシには特別な思いいれができてしまいそう。『シャーク・テイル』はどうなんだろうかな?

2005.11.8

いやービックリ。昨日家に戻ると、この日記にも何度か書いたコトのある、とっきどきステキな季節の便りをくれる友達から、珍しく封書が届いていた。「わあ手紙だ嬉しいなあ」と夕食&翌日の弁当の下ごしらえをしながら封を切ると、「住所変更のお知らせ」の文字がまず目に飛び込んできた。不思議だ。晴天の霹靂で予想もしていなかったのに、その瞬間もしかして!と思った。読み進むと案の定、結婚のお知らせだった。……ブルータス!

うそうそ。でも本当にビックリした。こうして独身友達が一人欠け二人欠けしていくのかしら。そんな感慨を抱くのは遅すぎる気がしないでもないけれど。周りも独身が多くて焦りも感じずのーんびりしてるうちに、気付くと生涯私だけ独身なんてコトもありそうだ―――と書きながらもまだ焦れないのはいかがなものか。まあイイか。何度も書いてるように別に独身主義じゃないんだけど、でも赤い糸くらいじゃ結婚もしなさそうだよなー私は。荒縄かしめ縄でもついてなきゃダメなんじゃないかしら。

ま、大事な友達の結婚の知らせを聞いたときの常で一抹の寂しさを覚えながらも、まずは心からのおめでとうを。新生活が心楽しいものでありますように。遊びに行くのを楽しみにしているよ。

2005.11.7

また日付がズレているが、先月28日の金曜日、劇団ファントマの『サイボーグ侍』を観に行ってきた。ファントマを観た後っていっつもモヤモヤしてしまう。これがハッキリつまらないのならば観に行くのを止めればイイのだが、面白いのだ。つか、面白くなりそうなのだ。なのに毎回「あそこがもう少し何とかならねー」「あの辺がダレるんだよねー」とダメ出しをしながら帰るハメになる。大阪ではかなり売れているようなのに、東京公演の客席はいつもガラガラだ。毎回、同じ面子だけが来ているんじゃないかって気がする。

それにしても今回の公演はいつになくマジメだった。途中まで笑える場所がほとんどなくて、ツラかった。中盤からくすくす笑える場所も出てきて、後半はかなりやわらかくなったのでホッとしたくらいだ。……だって、ファントマの持ち味はやっぱりギャグだと思うんだもの。思いっきり笑わせて最後にシンミリでもいい。最後まで笑わせっぱなしのナンセンスでもいい。存在そのものがギャグのえん魔さんと美津乃さんがいるのだもの。くすくすじゃなくて、思いっきり笑わせて欲しいのだ。

毎回残念なのは、脚本の甘さ。……つか、登場人物が多すぎる。多すぎる登場人物たちにそれぞれ見せ場を作ろうとするから、中心がボケるのだ。いらない人は削り、その人らのエピソードを削り、中心人物たちのエピソードをもっとじっくり見せてくれれば、それだけでずいぶん面白くなる。んで更に、役者が多すぎるから、主役級の役者と脇役たちの力の差が目立ちすぎる。中心人物たちは声も通り殺陣もキマり腰も据わってて台詞にメリハリがありオチもきちんとつけてくれる。舞台に出ているのが主役クラスだけだとずいぶん安心して観ていられる。けど、主役クラス1人に脇役が数人じゃ舞台もたないよ。

あとねー。たぶんこれは芝居にのめり込めなかったから余計気になったんだろうけど、衣装の着方がヒドすぎる。サイボーグが出てくるったって時代モノは時代モノ。着物はきちんと着てください。演出とか衣装係とかがウェストできゅっと締めた着物姿にどうしてOK出すのかが不思議だわ。現代モノなら腰が高くてすらっと見える体型でも、着物じゃ貧弱な体にしか見えないのよぅ! 裃着てても肩が合ってないし、鎧も中途半端なデフォルメで体に合ってないようにしか見えないし。

主役クラスの浅野さんや美津乃さんは、その辺でもやっぱ決まってる(その着こなしを周りにも教えてあげてよ……)。どんなに殺陣をやっても乱れないし、乱れてもさりげなく直してる。ところで美津乃さんは男役をやるときも爪をキレイに手入れしてて、艶めかしい(腐った宝塚にときめいてどうする>私!)。えん魔さんは……今回は、今イチかな。サイボーグだったせいもあるかもだけど、体を大きく見せる見せ方がわざとらしかった。もともと大きいんだから、それを活かす衣装にすればイイのに。と、こうして見ると衣装さんのセンスが今イチなのかしらん?

「あんま大きくなって欲しくないけど……」「人気出すぎてチケット取れなくなるのは困るけど……」「化けて欲しいよね……」。こうゆう感想を洩らすのは今回までにしたい、と毎度毎度思いつつ。

でも徳川家康の正妻、築山が「痩せても枯れてもこの築山……」とマジメに大見得を切ったあと、そのぽっちゃり体型の役者に対して浅野さんが言った「先ほどそうおっしゃいましたが、築山さまのどこをどう見れば痩せたり枯れたりして見えるのか……」には失礼ながら笑いが止まりませんでした。真剣な顔して何言い出すのかと思ったら〜! そうゆう、油断してたところにくるオチ、大好き♪

2005.11.4

ちょいと前にローレンス・ブロックの『皆殺し』読了。某Gさんの書評で興味を持って手を出したこのアル中探偵マット・スカダー・シリーズ、地味〜ではあるものの1冊目から妙に気に入って読み続けてきた。ときどき「今回は今イチ」ってコトはあるけれど、飽きずにこれがもう14作目なんである。が、それだけ好きでいながら、あまりの地味さに今まで日記では触れずに来たのだが、今回だけはちょと書いておきたい。激しくネタバレなので、ネタバレ嫌いな方は読まぬがよいです。

このシリーズは魅力的な脇役が多い。『皆殺し』を読み始めたとき、「やった今回はミック・バルーが中心だぜ!」と思って喜んだのに、その後がいけない。その他の魅力的な脇役を殺しまくりである。ジムが死に? リサが死に? 今度は誰が死ぬの? まさかシリーズ終わらせる気? となんだか変などきどきで読ませる。このシリーズの魅力はそうゆうドキドキじゃないのにー。こりゃ今回は“今イチ”かしら?と思って、終盤。ミックが「俺は死ぬかも」とか言い出したとき、その妙などきどきで張り詰めていた私の中の何かがぷちんと切れた。

ままままさか、ミックも殺す気? 何これは? 最近とみにまともな市民になりつつあるマットの禊かこれは? 不倫相手のリサを殺しアル中でぼろぼろだった頃の象徴的存在のジムを殺しそして正規の探偵免許を持つ人間としちゃ付き合いの許されるハズもないダークなミックを殺すのか? それで身辺キレイになりましたってか? 後ろ指さされるコトなく胸張って堂々と真っ当な市民になりますってか? そんなマットは私はいらーーーん! 今まで好きで読んできたこっちの気持ちはどうしてくれるんだーっ!

と、思ったワケです。でもね、いつもの如く、ワタクシの先走り、早とちりでございました。全てが終わった後には「ああ確かに今までの生活の基盤は全て破壊されてしまったしねぇ。真夜中の語らいがなくなっちゃうのは寂しいけれどそれもアリかも知れん」と思い、そしてホントのラストには飛び上がって叫びたくなりました。「ミックおかえりーっ!」と。―――なんにせよも少しね、好きな作家を信頼せにゃならん、と反省した。

さてこのシリーズも邦訳されてるのは残すところ多分あと1冊。同じ作家で別のシリーズもあるんだけど、どうもだいぶムードが違うらしいんだよねぇ。どうしようかな。

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