2005.7.31

≪三連休、最終日≫

楽しい日々はあっという間に過ぎてゆきます。時間蝿は矢がお好きってヤツです(といってもたった三日間なんですが)。最終日、宿泊所から馴染みのダイビングショップへと向かい、そこでまたもやはるばるやってきたUと落ち合います。Uは会社の男のコNくんを連れてきました。今年5月にCカードを取ったばかりで、今日が初ファンダイビングの初心者です。取ったばかりで潜りたくてたまらなくて、Uが連休にダイビングに行くと話したら「連れていってくださいー」と頼まれたそうです。

客はNくんを含めた私ら5人と、やはり初心者のカップル、それに男性の2人連れ。三連休だけあって賑やかです。海は凪いでいるのですが、前日街でばったりショップのガイドTさんに会ったときに、ビーチはGWの再来っぽいと聞かされていていたので、相談の結果、多少はマシらしいボートポイントで潜るコトにしました。「今日は初心者とブランクのある人が多いから、1本目は浅めのところで潜ります。上手い人は合わせてあげてね」とショップオーナーのSさん。……私ら、初心者でもブランクダイバーでもないんですが、ひょっとして上手い人、の中には私らも入っているのでしょうか。い、いつの間に。(でも始めた当初は100本越えたダイバーは全員ベテランに見えましたっけ)。

ボートはうちのショップの貸切なので、せかされるコトなく準備ができます。初心者のNくんにセッティングも見てあげました。自分ではとっても親切にしたつもりだったのに、後で友達から「教官みたいだったよ。怯えてないとイイね」と言われちゃいました。なんでー。べったべったの海を進み、今まで潜ったコトのない、浜に近いポイントに船がとまります。用意のできた順に海にとぽとぽ飛び込み、手間取っている人を待つ間に底を覗くと……き、キレイじゃないですか! 底まで5mほどとはいえ地形がハッキリと見え、海面に光が作る網目模様が、海の底にも映っています。

すっかり嬉しくなって、伊豆にしては珍しくロープも使わずに潜降。陸上では危なっかしかったNくんも、海の中ではしっかり中性浮力をとって泳いでいます。つか、上手い〜。初めて顔をあわせた人たちと潜るときの常で、自分のポジションがなかなか見つけられずにいましたが、透明度がいいおかげでバラけて泳げ、ぶつかり合ったりはせずに済みました。

定置網が近かったのも面白かったです。海底から海面まで網が伸び、その向こうにいくつもの群れが泳いでいます。獲物を見つけると他の何も目に入らなくなるYが、カメラを構えて網の方向に突進するので、Yが網にかかるんじゃないかとハラハラしました。私は見なかったけど、この辺りでトビエイが出たらしいです。Uは伊豆の海では久しぶりにリラックスして泳いでいて、これには嬉しくなりました。だってリゾートダイバーになられちゃ困る。

Kが抱えてきた甘い甘い初物の西瓜を休憩に食べてのんびり過ごし、2本目はもうちょっと深いポイントへ。こちらはもう何度か潜っているポイントで、地形やサンゴを楽しめるところ。けっこう出現率の高いドチザメやネコザメは出てきてくれなくて、生物は1本目の方が多かったです。1本目よりも深度の差が大きかったせいか、最後の方で少しずつ浮上を始めると、Nくんが浮くようになってしまいました。それをSさんが追いかけて引き戻しています。私らも初心者の頃はよくやられたなー。

とか思いつつ深度を上げ続けます。水深10mを切った辺りから上は、潜ったときに比べると透明度が落ちていました。水深5.8mのところに来たとき、頭上にうっすら船の底が見えました。そこにSさんとNくんがすーっと向かいます。ああもう浮上なんだ……。しかしこのとき、いつものダイビング面子の私たち4人の心に妙なコトが起こりました。ナゼか4人同時に、「Sさんはうっかり浮上してしまったNくんを追いかけていっただけ」と思ってSさんに続かずに2人が戻ってくるのを待ってしまったのです。

気付くとNくんもSさんもさっきまで見えていた船の底も見えなくなっていました。あり? 他のお客さん4人とTさんは少し離れた後方にいます。つまり私たち、こんなトコロで迷子になってしまったのですか? でもなんで船が……とダイコンを覗くと、深度はいつの間にか6.3mにまで落ちていました。自分でも意識しないうちに、沈んでいたのです。今思えば、浮上しつつあったのでマイナスぎみの浮力にしていたせいでしょう。Sさんに言わせると「みんな付いてこないでさー、どんどん沈んでいくからどうしたのかと思ったよ!」だそうです。いやそんな急激に沈んだワケじゃ……。

Sさんの行った方に向かった方がいいのかなー、でも下手に動かない方がいいかもなー、4人まとまっていれば見つけてくれるだろうし……、と、思っているうちにTさんたちが追いついてきました。事情が飲み込めないTさんが(そりゃ分からないだろう)「Sは?」と聞いてきます。「先に行った」「待っていろって言われたの?」と状況を話しているウチに、Sさんがタンクをガンガン鳴らしながら戻ってきました。私はこの戻ってきたSさんには気付かなかったのですけど、友達によると「おーい! なんで付いてこないんだよーっ」ってオーラをむんむんに放射していたらしいです。

そんなおマヌケ(で済んでよかった)エピソードを最後に、Nくんの初ファンダイブは終了。満足してくれたみたいで良かったです。ログ付けをして近くで遅すぎる昼食兼早めの夕食(結果的に食事抜きの日程になってしまってました)を食べ、UとYは宿泊所にもう1泊。私とKとNくんは自宅に帰りました。初対面のNくんとの長旅をどうするかなーとちょっと心配していましたが、電車に乗ったNくんはすぐに爆睡し始めてしまい(続いて私らも)、私の降りる駅で挨拶をしようと思っても起きてくれず、お互い一言も喋るコトなく家に帰ったのでした……。

今回のログはコチラから(117-118本目)。写真は2本目にちょっとだけ。

さて次のダイブはウチの母とです。どうなるのやら。

2005.7.26

≪三連休、2日目≫

連休2日目。海だ山だというと、休みだというのに結局いつもより早起きをしなくてはならず、休養とはとても呼べない日を過ごす私たちですが、この日は比較的ゆったり過ごせる日です。私やKは本当にダラダラして1日中部屋に篭ってゲームをしていても全然構わないのですけど、イベント女王Yも納得する案というと……宿泊所近くは散歩しつくしたし、山登りには暑いし……ドライブ? 車持ちで日常的に運転をしているUがいないのに? Yは免許持ってないし、Kの運転はとても怖い……というコトは、私が1日中運転手? 山道は怖くありませんが、覚悟の一つや二つは決めねばなりますまい。決めてもらわねばなりますまい。

少しだけ朝寝をし、ゆっくり朝食を食べ、宿泊地からまずはレンタカーショップが何軒かある伊東に向かいました。天気は薄日が差すか差さないかの微妙な感じ。雲が低くて湿度が高い。ドライブ日和と言えないこともありません。そのせいかどうか知りませんが、駅前4軒のレンタカーショップでは「車がありません。連休なんだから予約してもらわないと」とけんもほろろに断られました。涙ほろほろ。伊東の街もこないだ歩いたばかりだし、こんな湿度の高い日に歩くなんてイヤだー! でも車がなかったらどうしたらイイの? と、己の計画の甘さにクラクラしかかりましたが、救いの神はありました。駅からちょっと離れた、わかりにくい場所にあるトヨタレンタカーです。

店に入って「あのぅ予約してないんですけど、車ありますか? なるべく小さいやつ……」と遠慮がちに声をかけます。「小さいのというとVitzか……」という店員さんを遮って「Vitz! Vitzがイイです!」と叫ぶワタクシ。数年前に初めてレンタカーを借りたときに出てきた車がVitzで、不安でいっぱいだったのに運転しやすくて、それ以来「Vitzなら大丈夫」ってジンクス―――つか、変な思いこみを持っているのです。今回出てきた車はNew Vitz。説明を受けて車に乗り込み、いつものようにシートやミラーの位置を調節したり、「こっちがアクセルでこっちがブレーキ」の確認をしたりしていたら、怪訝そうな顔で店員が出てきました。毎回動き出すのが遅くて心配される私であります。

この日の目的地は西伊豆の堂ヶ島。黄金崎も通るので、途中まではダイビングで何度も通った道です。……自分で運転するのは初めてですが。修善寺を通過し土肥に出て黄金崎の一歩手前の恋人岬で最初の休憩。えーっと、恋人同士でもそうでなくても、恋人岬は行かなくていいと思います。景色を目的に行くなら、岬に入る前の駐車場で十分。その先の愛の鐘だか銀の鐘だかに通じる道は見通しが悪く、おまけに趣味の悪いカード(「タカヒロ&メグミ(はぁと)」みたいの)がぎっしりとぶら下がっていて、何これ自然破壊?ってな感じ。愛を誓いたいんじゃなかったら、ちょっと先の黄金崎の方がよっぽど静かで景色もエエですよ。

恋人岬から海沿いに西伊豆を南下。目的地の堂ヶ島へと到着しました。なぜ堂ヶ島へ来たかったというと、加山雄三ミュージアム!……では、もちろんありません(「なんで伊豆で加山雄三なの?」「湘南は石原裕次郎に取られちゃったからじゃないの?」「なるほど!」……ってくらいの関心しか、ありません)。単に行ったことのないトコロに行きたかったからです。で、どうせ行くのなら洞窟めぐり遊覧船に乗っちゃおうかと。洞窟ってナゼか心惹かれるのですよ。

伊豆からははるかに遠い海上にある台風5号だか6号だかの影響で、堂ヶ島クルーズも千貫門クルーズも欠航していましたが、もともとの目的の洞窟めぐり遊覧船は動いていました。「いつ欠航になるか分かりませんので、早めに乗ってくださいね」と切符売りのおばさんに言われたとおり、切符を買ったその足で、漁船をペイントしましたって感じの小さな船に乗り込みます。10〜15分おきに出ているという遊覧船は、私たちが乗ってすぐに動き始めました。

スピーカーから流れるテープの説明を聞きつつの、約20分の島巡り。これがなかなか楽しかったです。地形や島の形が面白いのですよ。岸に見える、崖っぷちの遊歩道みたいのの先に露天風呂があって、男の人が2人入っているのが丸見えでした(小さくしか見えないんだけど)。あれって男しか入れないのかなー。勇気さえありゃ入れるんだったら、振り絞る価値はありそうな、眺め最高の露天風呂に見えました。遊覧船のハイライトは最後に入る「天窓洞」です。洞窟の奥まで行くと天井に穴が開いていて、光が降り注いできます。「これでもうちょっと透明度よかったら、青の洞窟って感じだよねー」というのは言いすぎか。

洞窟に入る遊覧船洞窟から出てくる遊覧船
洞窟と遊覧船。出るところと入るところ。

船を降り、天窓洞を上からも見ようと周辺を散策。歩いても地形が面白いトコロです。海を走るダイビングボートも見えて、海の中にも興味が湧いてきました。またゆっくり来たいかも。出発が遅くそろそろ14時頃になっていたので、ここで昼食。食べた鯛のぶっかけ飯がとても美味しかったです。ビールが飲めないのが残念でしたが……。昼食後は洞窟好きの私のリクエストで、さらにも少し南下した室崎近くの洞窟(名前忘れた)へ。江戸時代の石切場だそうで、照明はついているのですが怖いです。洞窟の先に池があったりするのが、ちょっとドラクエのダンジョンっぽい。

上から見た天窓洞と遊覧船昼食
左:上から見た天窓洞と遊覧船/右:こっちは鯵のぶっかけ飯

ホントはこの後、どこでもイイから足湯に入りに行きたかったのですが、カーナビの目的地に伊東を設定してみると、到着時間が19:30になってしまいました。レンタカーショップは20:00まで。ひょっとすると渋滞があるかも知れず、1時間は余裕を持ちたいと思っていたのにー! というコトで、足湯は諦めて帰路につきます。松崎から半島を横切り東伊豆の河津に出、海岸線を北上して伊東に戻るコース。横切りコースが空いていて到着予想時間を18:30にまで縮めましたが、海岸コースはやはりところどころで渋滞があり、結局伊東についたのは19:00でした。

夕食は宿泊所に帰ってから、簡単に。次の日はダイビングなので酒も夜更かしも控えめにしました。しかしさすがに疲れた。運転はやっぱり肩が凝ります。でも、友達を2回ほど椅子から落としたものの(急ブレーキとかで)、無事に帰ってこれたのだからヨシとしましょう。終わりよければ全てヨシ。

≪三連休、3日目に続く≫

2005.7.25

やー、週末の地震はちょっとドキドキした。棚から物が落ちるのも久しぶり、町内アナウンス(おそらく一定の震度を超えたら自動的に流れる)を聞くのにいたっては初めてだった。すぐさまTVをつけて震度4の地震情報を知って「えー震度4ったって5に近い4なんじゃないの」と思っていたら、やっぱり5を記録したトコロもあったのね。グラっとくるたび「すわXディか!」と思うんだけど、今回はそうじゃなくて良かった〜。

さて。例によって一週間遡っての7月16日〜18日の三連休は、いつもの遊び仲間のU、Y、Kと、いつものように伊豆に遊びに行ってきました。16日の昼頃にまずはYと待ち合わせて伊豆へ。前からちょっと気になっていた、地魚を使った回転寿司屋で食事をし、買出しをして宿泊地入り。部屋の空気を入れ替えたり、布団を敷いたり、食材のチェックをしたりと準備を整え、夕方、熱海へと向かいました。来宮神社例大祭の一環として行われる、こがし祭り山車コンクールを見るためです。

このコンクールって今回が第37回だそうで、割と長く続いているイベントらしいのですが、私たちはちーっとも知りませんでした。「三連休何する?」という話になったとき、Yが「熱海やし祭りとかいうお祭りがあるらしいんだよねー」と言い出したので、私たちはすかさず「椰子祭り」と変換してしまったほどです。日本のハワイが熱海のコピーだからかな、と納得してしまい、とてもハワイアンな祭りのイメージを思い浮かべていました(地元紙の案内を見せてもらった段階で、ヤシではなく山車だと気付きましたが)。

熱海駅で遅れてやってきたU、Kと合流。駅前でお茶を飲みながら、まずは11月のケアンズ旅行の打合せをします。私が「こうだったらイイなー」と思っていたプランに全員が賛同してくれ、じゃあもう予約をするね!となりました。楽しみです。相談がまとまったトコロで、駅から海へ向かって坂を降ります。しかしそれにしても熱海駅前はとても静か。祭りをやっているような様子はありません。観光案内所でメイン会場を聞いたから、一応やってはいるんだろうけど……。あと毎度思うんですが、熱海の駅から海へってどうしてあんなに出にくいんですかね?

私らが「ホントに祭りなんてやってるのー?」と懐疑的だったのは、Yがいい加減な情報を仕込んでくるコトがあるからなのですが、この日の心配は杞憂でした。道の途中でお囃子が聞こえ始め、メイン会場の国道に出たときにはいくつもの山車が道を練り歩いていました。失礼ながら、思っていたよりも盛大です。町内ごとに山車を出して競っているらしく、山車の上では小学生〜高校生くらいの子供たちが威勢のいい声を上げながら、舞い踊っています。日本人の根っこの部分って、ラテンの血と相通じるモノがあるんじゃないかと、ときたま思いますよ。

おなかがすいていたので、最初のうちは屋台にばかり目を奪われていた私たちですが、芝生に場所を見つけて数種類の食べ物を胃に入れた段階で、やっと祭りのメインの山車を鑑賞する余裕がでてきました。どうやら飾り付けをした山車には伝統的な木彫り部門と、創作部門の二種類があるらしいのですが、目を引くのはやはり創作部門です。……いい意味でも、悪い意味でも。今年の傾向は愛・地球博とスターウォーズなのかな。地球博よりはスターウォーズの方がよく出来ていました。キャラクターに対する愛の差かしら。

ダース・ベイダー山車マスター・ヨーダ山車
ダース・ベイダー山車とマスター・ヨーダ山車。
ヨーダ様は首だけでちょっと怖かった。

山車が1周するのを見たところでほぼ祭りも終わる時間になっていたので、駅前に引き返してまた1時間くらい話してから、解散。Kは私らと一緒に伊豆の宿泊所に帰ったのですが、Uは日曜日仕事なので祭りと打合せを終えた今、また自宅に引き返さねばならないのです。翌日は遊ぶだけの私らは宿泊所についてからもワインやらビールやらを飲みつつ、だらだらお喋り。何を喋っていたのかもう忘れてしまいましたが、きっと楽しかったのでしょう。ずいぶん遅くまで起きていたから……。

≪三連休、2日目に続く≫

2005.7.20

乙一、『死にぞこないの青』読了。うわー痛い痛い痛い痛いよう! 引っ込み思案でちょっと体育が苦手でちょっと成績がいい、けどそれなりに普通の学校生活を送っていた男の子が、ちょっとしたキッカケで虐められるようになる話なんだけど、そのクラス全員での虐めに発展していく様子とか、わけもわからず怯えているうちにどうしようもないポジションに落とされてしまう男の子の心理とかが、うわああああああー。。

中学時代に苛められてた思い出がすんごくすんごくリアルに蘇ってきてしまいました。1日が永遠にも思えるあの感覚とか、人の視線が怖くて仕方なかったあの感覚とか。ぎゃー。「で、これは黒乙一なの? 白乙一なの?」ともう先が気になって気になって、滅多にしないんだけど結末先に読んじゃった。あまりに痛くてガマンできなかったんですもん。ラストはちょっと気恥ずかしいくらいストレートなんですが、そこに目をつぶれば、かなり好きな話です。読んでて苦しかったけどー。

*****

さて、『魔法使いハウルと火の悪魔』を読み、ダイアナ・ウィン・ジョーンズに興味を持ったワタクシですが、ハウルシリーズ2作の他に、『九年目の魔法』と『わたしが幽霊だった時』の2作を読了しました。『わたしが〜』の後書きによると、彼女は「こうゆう話を書く」と説明できないくらいいろんなタイプの話を書く作家さんだそうですが、話のタイプはともかく彼女の色ってのはもちろんあって、4冊を読み終わった今、私はすっかりファンになってしまいました。

ついこないだ読み終わったのが『幽霊』なんですが、読んでる最中にふと「何となぁ〜くだけど、梨木香歩さんの作品に似てるなあ」と思いました。ハウルは完璧別世界の話なので、他の2作品に限ってなんですが、現実の世界と異世界とが重なり合う感じとか、二つの世界の境界線が曖昧になるその瞬間の感覚とか、異世界の気配が濃くなってゆく匂いとかが。あと老女による癒しに代表される、善き魔女性(女性の直感力・共感力・包容力・しぶとさ・逞しさ)に対する崇拝に近いと言ってもいいような愛情が。

でも、似ているとは確かに感じるのですが、私はダイアナ・ウィン・ジョーンズの方が断然好きです。梨木さんのも、悪くはありません。面白いと聞けば喜んで読みます。ただ、梨木さんのはちょっとキレイすぎるのです。生々しさがない、というか。嫉妬とか恨みとかどろどろした感情を書いていても、なんかちょっと遠くに立って見ている感じがします。あと、彼女の描き出す世界から男性が締め出されているところが、私はちょと気にかかる。彼女の世界の中で、男性はホントに影が薄いです。それがちょっと、寂しい。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの方でもやはり、女同士の結びつきは強い気がします(『九年目〜』はそれほどでもなかったけど、祖母の存在は印象的でしたもん)。私だって自他共に認める女好き。女同士の強い関係がキライなんじゃないんです。でもそれが男性に対して閉じているとツマラないなーとも、思うのです。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの世界には、ちゃんと男性も存在していて関わっている。あと女の書き方も彼女の方のが好き。カッコよくもあって、生々しくて。負の感情にも入り込みやすいです。

邦訳もけっこう出ているようなのが、嬉しいところ。『ハウル』のアニメ化で弾みがついたんでしょうか? でももったいないので少しずつ読んでいくつもりです。好きな作家さんの未読の本があるってシアワセを、なるべく長く味わいたいので。はい、好きなモノを後に取っておく典型的なタイプです。

2005.7.15

≪つづき≫

2本目のセッティングをしてから昼食&休憩。じっとしていると、やはりちょっと寒い。男性2人組の1人が波酔いしてしまってグッタリとしていた。浅瀬にちょっぴりうねりが入っていたせいだろうか。約1年ぶりのダイビングで、近々行く石垣島への練習だと言っていたのに、結局彼は2本目をリタイアしてしまった。可哀想に。(しかも、石垣島は今週末の三連休になるんじゃないか? あの、台風が接近してきてるんですけど……。大丈夫かなあ。)

少し長めに休憩をしたおかげで、私らが2本目に向かう頃にはエントリー・エキジット口はだいぶ空いてきている。しかし念には念をいれ「人の少ないトコロに行こう」と遠目の2の根へと向かう。移動距離は長いが地形がダイナミックで好きなポイントである。目的地が遠いので、浅めの水深を維持しながら進む。これで透明度が良ければ気持ちイイのだが、この日は海底が見えず、飛ぶ感覚はあまり味わえなかった。しかし生き物がいるので退屈はしない。途中にいたニザダイたちは今まで見た中で一番大きく「えっニザダイってこんなに大きくなるんだー」とビックリした。

2の根につき、お馴染みのキンギョハナダイやスジハナダイを見て、壁を左手に見ながら戻る。途中ダイダイヨウジがいた。ヨウジウオ系を見るのは久しぶりでぜひ写真におさめたかったのだけど、逃げられてしまって尻尾(?)しか写せなかったのが残念である。Sさんには「かなり撮りやすい位置だったのに」と言われたんだけど、たしかにあともう少し粘っていれば撮れたんだけど、初めて一緒に潜る人ばかりだったから、どのくらいターゲットを占領してていいのかの呼吸が分からなくて遠慮してしまったのだ。

この辺が、他人と一緒に潜るのの難しいトコロだ。いつものメンバーだと「ちょっと時間かけても待っててくれるな」とか「見たらどいてくれるな」ってのが分かっているから、楽なのよねー。他の人とだと、自分がどの辺りに位置していればいいのかも探りながらになるので、しょっちゅうぶつかってしまったりもするもの。ただ、いつも4人だけで潜るってのも、ツマラないからなぁ。人の潜り方見るのって勉強になるのだ。上手であれ、下手であれ。

深場を楽しんで、どっかの根?にぶつかったところで深度をあげる。急激に深度が変わるので、中性浮力にばかり気をとられていたらSlow表示が出てしまった。いかんいかん。頂上についたところでふと視線をあげると……80cm超のヒラマサっ! カッコいい〜〜〜。さらにはカゴカキダイの群なんかも出現してくれたり、する。またしばらく進んだ先、根の先端部分にクマノミが踊っているのを見たときは「お、1の根まで戻ってきたかな?(←1本目で目撃していた)」と見当がついて、嬉しかった。地形を覚える楽しみってヤツ?

最後の浅瀬が濁ってたりうねってたり人にもまれたりしたにもかかわらず、「楽しかった〜」と言えるダイビング終了。あ、またもや無意識に呼吸をセーブしてしまったらしく、ちょっと酸欠になったのには参ったけど。つか、意識的に深呼吸を心がけたんだけどなぁ。なんで酸欠になっちゃったんだろ。器材を片付け、シャワーを浴びて着替えてショップに戻る。ゆっくりログ付けをして、帰りの電車で寝こけているうちに酸欠が原因の頭痛はほぼおさまった。

今回のログはコチラ(116本目)。写真はちょっとだけ。

途中の駅でダイビングには不参加だったUとYと落ち合い、食事。Kはほぼ立ち直っていたが、胃だけは本調子にほど遠く、いつになく大人しかった。サイパンという人参を食べてしまったので、次のプチ人参の三連休の予定を決める。三連休には今年のメイン人参、11月の旅行の話を煮詰める予定だ。殺さなくても誘わなくても待たなくても、勝手に歌い続けるキリギリスたち。

2005.7.14

サイパンから戻ってすぐの6月最後の週末は、体がキツいし家の仕事も溜まっているしと思ってガマンした。次の、7月頭の週末は先述のとおり仲間全員にフラれた(天気良かったのに!)。「じゃあ次は?」と聞いたときには、次も全員ダメだったら1人でも行く!と思いつめていた。が、嬉しいことにKからだけ「OK」の返事をもらえた。……ので、9日の土曜日に行ってきました伊豆に。数日前までの予報では、土曜日は晴れ間もあると言っていたのに、前日になったらいきなり下り坂な予報に変わり、当日は雲が重く垂れ込めていて、肌寒い気候に変わっていた。陸上がツラいだろうと思ってウェットにしたのにー。

Kとは伊豆に向かう電車の中での待ち合わせになる。私の方が先に乗り込むので、乗った段階でいつも「×両目にいるよ」とメールを送る習慣になっている。が、この日Kから返ってきたメールは「了解!」ではなくて「体調最悪…」というものだった。え? 体調悪くて行けないってコト? それともムリして行くってコト? やきもきしながら数駅。いつもの駅に、Kの姿はちゃんとあった。「大丈夫? 別にムリしなくていいんだよ?」と心配するのは当然であろう。しかしKの答えは「ただの二日酔いだから」という、はなはだ心配し甲斐のないものであった。ばかー! ダイビング前のアルコールは控えめにでしょー。私も最近甘くなってきて人のコト言えないけど、まだ次の日に残るような飲み方はしてないぞー!

ともあれ、いつもの駅からいつもの迎えでいつものショップへ(オーナーSさん、ガイドTさん)。客は私らの他に初めて会う男性の2人連れ。それと潜るポイントで男性2人、女性1人の3人組と合流した。3人組は大学のダイビングサークル時代の仲間だそうな。ダイビングサークル出身の人って初めてだったのだけど、彼らとは現地解散だったのであまり話ができなくて残念だった。

おっとこの日のポイントはIOP(伊豆海洋公園)。3月〜5月の3ヶ月間、同じポイントで潜っていたので、久しぶりの違う海である。ちょっと緊張する。しかし、海以外にも違う点があった。人の多さである。ここのトコロずっと潜っていたポイントは、まだオープンしたばかりで人が少ない。海の中で他の店のダイバーと会うコトはまず滅多にない。6月頭の城ヶ島も、平日だったので他の店の客はいなかった。サイパンだってエントリー・エキジット口に他のダイバーがいても、海に入ればバラけてしまって、他のダイバーを意識しなかった。が、ここは東伊豆のダイビングメッカ、IOPである。

1本目はたまたま他のグループとエントリー時間がかち合ってしまったせいもあり、エントリー・エキジット用に張られたロープ前には長〜い列ができていた。「みんな水中でフィンはけるね? ロープは混んでるから、脇から入るから!」。Sさんに連れられ、ゴロタの転がるところからイン。私は最初フィンをはく場所まで歩いて行こうとしたのだけど、Sさんの後ろについた3人組のうちの女性が、膝くらいの深さのところでもう顔を水につけ、ゴロタを掴むようにして進んでいくのを見て「おおっさすがダイビングサークル!(大学のサークルは体育会系で厳しく仕込まれるという噂)」と思って真似してみた。水草がないなら、この方が楽かも。ゴロタを足で探りながら歩くのって、けっこう大変なのだ。

1本目に行ったのは一番近く行きやすい“1の根”である。そのせいか、いつまでたっても周囲のダイバーがいなくならない。最近海独り占めの贅沢ばっかりしていたので「なんでこんなに人がいるのっ!?」と思ってしまった。おまけにK以外は初めて一緒に潜る人ばかりで、ウェットの色で区別ができない。ヘビギンポの写真を撮ってふと顔をあげるとダイバーの群に囲まれていて、どれが自分の仲間だかサッパリわからなくなっていたくらいだ。じーっと観察してるうちに、見覚えのあるSさんのウェットが遠ざかってくのを見分けられたときにはホッとした。まあ、じっと待ってれば迎えに来てくれただろうが。

透明度は悪くない。夏の海らしく表面は濁って3〜5mほどだが、深く潜ると10mは抜けている。上の方が暖かくて下の方が冷たいのも夏っぽい。が、ウェットでも耐えられないほど寒くはなかった。この日は陸上が肌寒かったのでドライでも良かったかもしれないが、ウェットでも全然問題ナシ。濁った辺りにアジが群れていて、それを狙ってか大きめの魚がやってくるのも嬉しい。生き物はホントに多くなってきた。繁殖のシーズンなのでオハグロベラもミギマキも縄張り争いのけんかをしているし、ブダイは追いかけっこをしている。クロホシイシモチもはっきりとペアにわかれている。うふ、うふ、うふふふふ。

南の島の海に行った後って「比べてガッカリするんじゃないか」と心配しちゃうんだけど、実際に潜ると「伊豆も面白いじゃん」と思えるのだ、いつも。そうそう、上がり際には自力でミナミハコフグを見つけた。目の早いガイドさんが見逃したモノを見つけるのって、格別楽しい。「ワカメの根元にいたんですよ!」と報告したら、「ワカメではないけどね」と訂正されちゃったけど。未だに海藻全てをついワカメと言ってしまうワタクシ。

今回のログはコチラ(115本目)。写真はちょっとだけ。

≪つづく≫

2005.7.13

ここのとこ、アメリカTVドラマの『Sex and the City』を見ていた。ニューヨークに暮らす30代の女性4人の話で、レンタルビデオ店には今のところ5thシーズンまで並べられている。評判もちらほら耳にしていたし、これだけ続いているならきっと面白いんだろう……と、借りてみたのだが、最初のうちは全っ然その面白さが分からなかった。

気に入らない点その1。中心の女性4人が美人じゃない。主人公のキャリーは馬面で、なんで彼女が美女扱いされるのかがちっとも分からない。ビバヒルの中心人物にもこんな感じの顔がいたなあ。あれも美女扱いされてて、その時点で嘘っぽく感じてダメだったっけ。主人公の親友3人について言えば、ミランダは水気をなくしたアリー・マクビールみたいだし、サマンサは薹がたったエレインみたいだし、シャーロットはたぶん一番造作は整っているのに表情の作り方がキライ。

だいたい皆老けすぎなのだ。サマンサが40歳だと思われて怒るシーンがあって、「彼女の年齢は35歳で止まっている」って台詞があったから、設定としては37、8なのか?どう見ても45歳にしか見えない。シャーロットが結婚時に34ってのはまあいいとして、キャリーやミランダがそれと同じってのは受け入れがたいなあ。37、8ぐらいならともかく。顔の話からはズレるけど、だいたい4人の友情を羨ましいと思えない。恋愛がどうあろうと変わらない友情ってのは、私の好みのハズなのに。

気に入らない点その2。モノローグが多すぎる。キャリーはコラムニストで、ドラマ中に状況説明ともそのコラムの文章とも受け取れるような語りがけっこう入るのだが、見ればわかるようなシーンにまで説明を入れるのがウザったくて仕方ない。「彼女は迷った」なんて語りがいる? そんなのは役者の演技で見せて欲しい。たとえば落ち込んでいる人がいて、何もかける言葉がなくてただ肩に手を回して抱きしめて、それだけで十分……なんてシーンは言葉がなくても気持ちが伝わるしホロリともするけれど、ここで「こうゆうときにかける言葉はあるのだろうか? 友情とは無力なものだ。……無力だけれど、それが助けになるときもある」なーんてモノローグが入ったら、一気に醒めない?

気に入らない点その3。男。つか、ミスター・ビッグ。キャリーが一時期つき合った「完璧な40男」で別れた後もしつこく出てくるんだけど、彼の顔を見るたびにムカついてムカついて。この男が女を見るときの視線がキライ〜。ERのダグラス・ロスみたいな、女が何を言っても「仕方ないなあ、この仔猫ちゃんは」とか言い出しそうな、その目線が気に喰わない! あの目線する人とは今までの人生で1度しか遭遇したコトがないけど、実際にやられてもムカつくもんですよ。本人にはまったく自覚がないみたいで、一方的にキラって申し訳なかったけれども。

しかし、しかし、しかしである。意外なコトに。文句を言いつつ見続けているうちに、3rdシーズンぐらいからかなあ、面白く感じるようになってしまったのだ。まず、キャリーが可愛く見えてきた。彼女はとにかく表情がいいのだ。いつしか「なんでこの人を不細工だって思ったんだろう?」と不思議に思うようにさえ、なった(でも動かない彼女を冷静に見ると、やっぱ美人とはいえないと思う)。他の3人の顔も気にならなくなってきた。人となりを知ると外見があまり意味をなくす、友達効果のようなもんだろうか。ミランダの胸とシャーロットの腰はキレイだし。

モノローグも気にならなくなってきた。最初は気に障ったシットコムの観客の笑い声が、そのうち無視できるようになったのと同じように。ちゃんと比較したワケじゃないけど、実際にもモノローグの量が減ってる気がする。やっぱモノローグの使いすぎは脚本のミスよね。モノローグがなくなったそれだけで、4人の友情にも共感が湧いてくる。最初の頃の「彼から電話がないの。彼がこう言ったの。彼の趣味が悪いの。彼がセックスしたがらないの。どうしてどうしてどうゆう意味だと思う?」に終始する会話は、「知るか男に聞け」だったんだけどねー。

ミスター・ビッグに関していえば、彼がダグラス・ロスではなくてミスター・ビーンに見えるようになった時点で、ほぼ解決した。何かムカつくシーンがあっても「へっへーカッコつけちゃって、ミスター・ビーンのくせに」と思うだけで、そのムカつきが緩和される。4thシーズンくらいになると、出番も少なくなるしね。あ、ミスター・ビーンがキライなワケじゃありません。見たことないもの。

あと今気になっているのは、シャーロットの行く末かなー。そのせいでムカつくとかイラつくとかじゃないんだけど、彼女の生き方って可哀想に思えてしまう。常に何か欲しいものがあるのだ。……いや、違う。常に何か欲しいものがあるのはいいのだ。でもそれで、現在が満たされないのはツマラナイじゃないか。結婚するまでは「結婚しなきゃシアワセじゃない」で、結婚したら「夫とセックスできなきゃシアワセじゃない」で、セックスしたら「姑が邪魔しちゃシアワセじゃない」で、姑が一歩引いたら「子供ができなきゃシアワセじゃない」。夫のインポやでしゃばりの姑に悩む辺りはかわいいけれど、要するに常にシアワセじゃないのだ。子供ができたら果たして満足できるのでしょうかね、彼女は?

とゆうワケで、今ではけっこう楽しんでいる。時間的にも1回20分強と丁度いいし、たまにぼーっとTVを見てたいときに最適。

2005.7.12

ダイビング仲間全員にフラれ、潜りたいよぅと悶々としていた7月頭の週末。清水玲子さんの『ナマケモノのスキューバダイビング』の、何度目だかの再読をしていたら、急に『彼女が水着にきがえたら』って古い映画を見たくなって、近所のレンタルビデオショップに走ってきた。伊豆のダイビングショップのオーナーSさんが「あの映画見てダイビングはじめる人は多かったねー」と言っていたので、私のダイビング心を刺激してくれる内容かと期待したのだ。が、意外にダイビングシーンって少なくてガッカリ。話も「バブリーだなー」ってくらいの感想しか持てなかった。

しかし、面白くはなかったのだけど、ツッコミどころは盛りだくさん。Sさんも「あの映画はスゴいよ。潜るまで伊豆なのに、海に入ったらパラオになるんだ」と笑っていたけど、まさにその通り。実際は潜る場所が三浦や千葉で、海が沖縄なんだけどね。油壺だ三戸浜だと馴染みの地名が出てくるのに、海に入ったとたんに南の島になる。あの白い砂浜は関東付近じゃありえないって。それに魚の少ないコト! 撮影器材持ち込んで大騒ぎしたからかなあ? それとも本人たちの潜り方が騒々しいから? 水中スクーターって長距離移動に使うもんでしょー?

水中で風船を飛ばすのも「ちゃんと回収したのか!」だし、バナナを食うのも「なんでわざわざ?」。一緒に潜った人とはぐれたのに残圧チェックもしないで泳ぎだすし、「はぐれたらまず浮上、船の位置をコンパスで確かめて、海況によっては再潜降して移動でしょー」と思っていたら、あんなに遊んでいたくせにナゼか現在位置は把握しているらしく、コンパスを使って泳ぎだす。なのに針を逆に読む。深度に気付いてパニックになってエア切れおこしたバディオクトパス・ブリージングしてるくせに、ちゃんと安全停止する余裕まである。……どんな初心者だよ!

とにかく私の感じているダイビングの魅力をほとんど表現していない、という意味で特筆すべき映画。つか、これを見てダイビング始めたいと思う気持ちがわからない。ヨットとか水上バイクに興味持つならわかるんだけど。ダイビング始める前に見るべきだったのかなぁ(←それを言うなら公開時に、であろう)。それより何より、私が一番ガックリきてしまったのは、ハッピーエンディングな水中でのキスシーンで「なにが悲しくて水中で……2人ともマスクしてるのに……邪魔すぎるのに……つか、こいつら窒素酔い起こしてんじゃないのか!?」と思ってしまったときでした。

ダメだこりゃ(←私が)。

2005.7.11

≪サイパン旅行記3日目-3〜4日目≫

とうとう最後になってしまった。ポイントはLauLauBeach。ビーチに続く道の最後の方は舗装もされていず、ちょっとしたジャングル気分を味わえる。ここはKMさんのお気に入りポイントらしい。「なんか一番落ち着くんだよ」と言っていたが、それは彼のホームグラウンドの葉山に似ているからであろう。参加メンバーは全員KMさんのショップの客なので、「キレイな葉山」で意見が一致した。

「エントリー直後は濁ってるけど、ビックリしないようにね。深場まで移動したら抜けるから」という予告のとおり、腹を擦るくらいの浅瀬を移動して岩場に達し、ちょっと潜ったあとは「えーっ?」と落胆するくらい濁っていた。この季節の伊豆でこれだけ見えれば御の字、という透明度なのだけど、ここはサイパンなんだもの! しかし、岩の間をすり抜けトンネルを潜り、と、入り組んだ地形を進んで広い空間に辿りついたときには、いつのまにか海の色は青の、南の色になっていた。

広い空間についてすぐ、お馴染みになったダスキーアネモネフィッシュに出会う。クマノミってそう珍しくもないんだけど、でもやっぱりカワイイので会うとついカメラを向けてしまうなあ。砂地にはブルーの縁取りがキレイなウミウシもいた。アオフチキセワタガイ。スダレチョウチョウウオにハナビラクマノミ、ヨコシマクロダイの幼魚、ミスジチョウチョウウオ。ダイナミックな地形を楽しむボートポイントと比べて、ビーチは魚と戯れながらゆったり遊べる感じ。あ、Grottoはビーチとしては例外だけど。

今回のログはコチラ(114本目)。写真ありあり。

これでもうダイビングは終わり。皆口々に「終わった…」「終わっちゃったよ…」とボヤいている。トラックでまたホテルまで戻り、順番にダッシュでシャワーを浴びて(私は隙を見て命の水を摂取して)本日の命の水から、この日は使い終わった器材も洗う。書きそびれていたけど、私とUは当初の予定の軽器材だけではなく、結局フル装備を日本から持ち込んでいたのだった。2人分のフル装備+Yの軽器材を干すと、形ばかりの狭いベランダはほとんどいっぱいだが、ダイバー専門の宿ってワケでもないから仕方ない。しかし2Fで下の階に客室がないのは助かった。でなけりゃ下の客室のベランダに水がぽたぽた垂れてしまっただろうから。

この日の夕食兼ログ付けは、小さめの中華料理屋へ。このお店もなかなか美味しかったのだが、ターンテーブルで同じ料理が2回回ってくることがほとんどない。前夜に続いてTOYOさんと親父さんの健啖家ぶりに感嘆してしまった。それでも春日龍さんがたっぷり頼んでくれたので、ぱちんぱちんに満腹。もう1つのテーブルに春日龍さんとショップをやっている人がやっぱりお客さんを連れてきていて、そこに午前中のボートのキャプテンが結婚を決めた報告をしに来ていたので、一緒に「オメデトー」と声をかける。

食事を終えるともうほとんど22時。ここからKMさんは春日龍さんの店に行き、2人でミーティングをするらしい。私たちは「最後の夜に行こうね」と言ってたマッサージに向かう。サイパンの繁華街にはやたらとマッサージ屋が多くて、何も情報がないとどこがいいのか迷ってしまうけれど、サイパン通いを重ねたKMさんが店を教えてくれたのだ。前夜にはSHINさんたちが体験もしてくれたし、安心。薄暗い室内でのソフトなマッサージだったので、ほとんど寝ながら体をほぐしてもらった。が、Yを担当した人の力が強かったのか、途中で隣のブースからYの悲鳴があがり、私を担当してくれた人に「オトモダチ、ウルサイ」と言われていた。

これで1人分最終日はちょっとだけ朝寝をして(でも土産を全然買っていなかったので、ゆっくりはできなかった)、ホテルのレストランで朝食。私は旅行に出るとちょっとずつだけど胃が疲れてしまい、いつもより食欲が落ちるのが常なんだけど、この日は絶好調だったのかはたまた美味しい夕食を堪能しているうちに胃が拡張してしまったのか、YやUの1.5倍くらいをぺろっと平らげてしまった。部屋は昼まで使っていられるので、そのまま土産を買いに行く。「時間が余ったらプールで遊ぼう」とか言っていたのに、共通の土産を買うだけで午前中はほとんどツブれてしまった。

昼に一度集合。ホテルを引き払い、荷物をバスに預けて、皆で最後の昼食を食べる。ホテルの近くの蕎麦屋。店の中にいると、ちーっとも海外だって気がしない。食後にバスに乗り込み、空港へ向かう。飛行機が出るのは夕方なんだから、もうちょっとゆっくりできたらイイのに。入るときはほとんどノーチェックだったのどかな空港も、出るときにはそれなりに厳しい。荷物は開けずに済んだけど。そして一応免税店も空港内にあるのだが、ブランドにも高い酒にも(←酒はもらえりゃ飲むけど)タバコにも興味のない私が寄れる店はほとんどなく、長い待ち時間のほとんどをだらだらとお喋りで過ごした。

後は飛行機で日本に戻って、成田で全員と慌しく別れ(帰りは親父さんもワゴン組)、終わり。メンバーも良かったし海も楽しく、時間に追われていた感はあったけど、とても楽しい4日間だった。沖縄みたいに気軽に行ける距離だし、うん、また行きたいな。

≪おわり。お付き合い、ありがとう。≫

2005.7.8

≪サイパン旅行記3日目-2≫

休憩のあと向かったのは、最初に流れが速くて断念したFlemingである。この時間になると流れも止んで潜れるようになっていたのだけど、結果から言うとサイパンで潜った6本のうち、このFlemingでのダイビングが最高だったのである。止まってくれた流れと、再度チャレンジしてくれた春日龍さんに感謝! 帰国後検索したらFlemingを「壁しかないが、その壁が見事なポイント」と評しているサイトがあったが、私の感覚では「見事な壁と賑やかな浅瀬の両方を楽しめるポイント」だった。ただ、賑やかな浅瀬を楽しめるのはよっぽど海が静かなときに限るらしいけどね。

ともあれ、このときの私はまだそこがどんなポイントなのかも知らずに用意をしている。ボートダイビングでカメラを持って海に入る場合、エントリー時のショックでカメラが壊れてしまうコトがあるらしいので、自分が水に入ってから誰かにカメラを渡してもらうケースが多い。が、このときは人数が多くてお願いするのは気が引ける感じだったので、カメラをBCDのベルトに挟んで(背中から着水するから体の前面に置いておくとショックを与えずに済む)いたら、準備を見て回っていたKMさんがそれを見て「さすがー。To-koさんはホント上手くなったよね!」と褒めてくれた。嬉しい。

1本目と同じようにエントリーし、春日龍さんの後について岩の裂け目のような細い通路を泳いでいくと、いきなり開けた空間に出た。つまり、件の「見事な壁」から飛び出す格好になったのである。予備知識がなかったので、うひゃーっと興奮してしまう。私のちょっと下にいたSHINさんが、飛び出た瞬間に両手両足を広げてスカイダイビングのポーズを取っていた。あがってから「スカイダイビングやってましたねー」と言ったら、「わかったー?」と笑っていたけど、わかるわかるわかりますとも。わからいでか。

海底は見えなかったが、ここの水深は80mもあるそうだ。最高の透明度のときは、10mぐらいの深さから70m下の海底が見えるんだとか。ちょっと想像してみて欲しい。17〜18階建のビルの屋上から飛び出して、落ちないんだよ!? そのままの高度を保って、飛べるんだよ? パラセイリングやパラグライダーとは違うこの感覚、他の何で味わえるというのだろう。(宇宙遊泳と似た感覚なんだって。聞いた話では)。私たちが入ったときはそこまでの透明度ではなく底は見えなかったのだけど、それでも相当下の方まで何もない空間が続いているのはハッキリわかる。ちょー気持ちイイ。もう「うわ、うわ、うわああああ」としか思えない。

しかしここで、私はある違和感に気付いた。何となく、レギュが引っ張られる感じがするのである。私のレギュはホースとの接合部分が可動式になっていて、ほとんど違和感を感じるコトはないのに。「?」と思って見てみると、ホースはぐるんぐるんに捩れていた。ありゃ、確かにこれじゃ引っ張られるわなあ……。船上でKMさんに褒められていい気になって、うっかりホースの捩れを点検し忘れてしまったようだ。やーん。「どうしようかなあ…、直したいけどこの深度で何かあったらエライことになりそうな気がする」と数秒迷ったが、できるような気がして口からレギュを外し、捩れを直して咥えなおした。透明度がいいと恐怖感を感じずにいろいろできるのだ。

浮遊感をたっぷり味わったあとに、浅瀬へ。ここがモンツキカエルウオの宝庫だった。最初1匹に気付いてその表情を撮ろうと粘っていたのだが、気付くとそこにもここにもあっちにも! OBYAN BEACHでは1〜2匹のカエルウオに喜んでいたのに、どれだけいるんだろうここには。んで見ていると、普通のモンツキカエルウオのほかに全身が淡いピンクの初めて見るカエルウオもいて、それがとってもカワイくて、どうにか写真を撮ろうと春日龍さんが他の人に何かを見せているのに気付いていながら、1人カエルウオ撮りに励んでしまった。

カエルウオって岩に開いた小さな穴からひょこっと顔だけ出しているコトが多くて、カメラを近づけるとすぐに引っ込んでしまうのだ。帰りのボートでKMさんにこの全身ピンクのカエルウオの名前を聞いたら、「オレもそれ知りたいと思ってたんだよ!」と言われてしまった。日本にはいないタイプなのかな? でもジモチーの春日龍さんもハッキリと断言はしてくれなかった。ベニツケタテガミカエルウオかもしれないそうな。

昨日書き忘れたのだが、今回のボートダイビングで久しぶりにやったコトがある。いつもはたいてい、フィンを脱いだだけでフル装備のままボートに戻るのだが、今回はボート後部の海面でBCDを脱いでから、フィンとマスクだけになってボート側面のハシゴまで移動し、フィンを脱いであがるという方式。すんごく久しぶりにやったにも係らず、水面でもたつかずにすごくスムーズにBCDが脱げたので、これもちょっと嬉しかった。あと2本目は、ロープに頼らない安全停止も成功。

今回のログはコチラ(113本目)。写真あり。

また1時間かけてサイパンに戻り、またもやビーチで昼食を食べ、休憩する。土曜日なので、ベンチはほとんどお昼を食べにきた地元の人たちでうまっていた。家族連れ多し。ここまで来ると「あと1本で終わりなんだ……」と、ちょっと悲しい気持ちになってくる。

南洋桜
青い空に映える南洋桜。

≪つづく≫

2005.7.7

≪サイパン旅行記3日目-1≫

サイパン3日目。この日の午前にはボートダイビングをするため、迎えの時間が30分早まる。つまり6時起床。“ゆったり”とか“まったり”とかとは程遠いリゾートライフだ。眠い目をこすりながらカーテンを開けると空はどんよりと重く、なんと雨が降っている。さては天気予報でサイパン付近にあった台風っぽい雲の影響か?とTVをつけたが、昨日かたまっていた雲はばらけて薄く広がっている。どうやら台風ではないみたいだ。結局この雨はただのスコールだったみたいで、朝食を終えて7:30の集合時間にロビーに下りていく頃には、前日のような強い日差しが照りつけていた。

またもやピックアップトラックの荷台に乗り込み、まずは春日龍さんのショップへ。昨日も寄ったがこのショップ、夜になったらバーにでもなりそな感じで、とてもオシャレだ。壁には水中でビデオ撮影した映像が大きく映し出されていて、見ていると酔いそうになる。ここで前日預けた器材を積み込み、港へと移動する。港(というよりボート着き場?)にはオレンジ色の、大型ゴムボートみたいなのが待ち構えていた。見かけによらずサイパン最速というのが売りのボートで、午前に2本潜る予定のテニアン島まで1時間ほどで到着する。トイレがないのがツラいが、風を受けて走るのはとても気持ちよかった。天気が悪いとキツイかな?

ボートのキャプテンはサイパンではほとんど見かけなかった金髪碧眼のアメリカ人。でも日本語はぺらぺらだった。彼の運転でボートはテニアンめがけてひた走る。私はボートの縁に腰掛けて風と水しぶきと日光を浴びていたのだが、波もほとんどなくて酔いの気配も感じずに済んだ。テニアンがどんどん大きくなってきて、そろそろ器材のセッティングをと思っていると(ボートには他のショップのお客さんも乗り合わせているので、どんどん用意しなきゃダメという注意が事前にあった)、ボートの一番前で海面を監視していたチャモロ人が大声をあげた。「ドルフィン!」

テニアンにゆくボート
テニアンにゆくボート。舳先に座っているチャモロの兄ちゃんが
イルカを見つけてくれました。

直ちにキャプテンがスピードを落とす。にわかに騒然とするボート内。人気者だなあイルカ!(私も大騒ぎしていたが)。最初のうちは少し距離があって「どこ? どこ?」という声があちこちからしていのだけど、すぐにイルカの方からボートに近づいてきて、ボートの両脇を固めるようにして並んで泳ぎ始めた。近づきすぎてボートにぶつかるイルカもいたくらいだ。今まで何度かドルフィン・ツアーに参加したことがあるのだけど、こんな小さなボートで手の届くくらいの距離で泳ぐイルカを見るのは初めてで、大興奮してしまった。でも、近いけど、写真を撮るのは難しい。後でみたら私のは全滅だったので、KMさんが撮っていたビデオに期待だ。いつか一緒に泳いでやるぞぅ!

イルカと別れて本日1本目のポイントへ……到着した途端、春日龍さんの表情が渋くなった。「ちょっと流れているから様子見てみます」と言って、1人海に飛び込む春日龍さん。待っている間に覗き込んでみたが、さすがの透明度で海底までハッキリ見える。素人目には流れもなさそうに見えたんだけど、しばらくして浮上してきた春日龍さんは首を振って「Grottoにしよう」と言った。というコトでまたちょっと移動し、本日1本目のテニアン・グロットに行った。同じ名前を持つだけあって、ここも洞窟内から外海の青い光を眺められるポイントである。

準備の出来た人から、シッティング・バックでどんどんエントリーしていく。集合はアンカーロープの下だ。透明度が悪いとちょっと怖い集合方法だが、10数mの海底についてもハッキリとボートの腹が見える状況では楽なもの。私もさっさと着底して、ゆっくりと降りてくる友人たちを観察していた。全員揃ったところで、春日龍さんに先導され、洞窟へ。ここの洞窟は行き止まりではなく、平べったいトンネルのような形になっていて、いくつかある横穴から光が差し込んでくる。

洞窟の中で、春日龍さんが岩の下に隠れていたフリソデエビを見つけてくれた。なかなか出会えなくて、見れたらラッキーなエビらしいのだが、地味でマクロなエビよりもありふれたカラフルな熱帯魚に惹かれる私たちは、おつきあいで写真を1枚撮るだけという素っ気なさ。その後も岩の下を覗いてマクロな何かを探している春日龍さんをよそに、トンネルの出口までさまよって外の魚を観察して遊んでいる私たちであった。ガイドからこんなに離れるなんて、透明度が悪くちゃできないぜ。

トンネルから出たあとは、岩を回り込み割れ目を通り(ルートはよく分からないのだが)、トンネルの上に出たらしい。岩から細かい気泡が立ち上っていると思ったら、ダイバーの吐き出した息がエアーカーテンを作っているのだった。そのまましばらく浅瀬で遊んでから、エキジット。5mの水深で3分間の安全停止をしたのだけど、ここでやっと流れがあるのを自覚した。水面付近だけ、流れていたのかな。

今回のログはコチラ(112本目)。写真ありあり。

ちょっと船を移動させ、水面もどこも流れていないトコロで休憩。移動中に天然の入江みたいな場所をキャプテンが見せてくれた。つい「海賊の秘密の入江になりそう」と思ってしまう、頭がツバメ号なワタクシ。休憩中はシュノーケリングもして遊んだ。休憩中に体を温めておきたい気持ちもあったのだが、せっかくの透明度がもったいなくて。ここにさっきのイルカが出てきてくれたら最高なんだけどなあ……(←欲張りめ!)。

≪つづく≫

2005.7.5

≪サイパン旅行記2日目-3≫

さて、この日の最後はGrottoである。サイパンと言ったらグロット、グロットと言ったら階段。サイパンに来たら潜らなきゃいけない名物ポイントなのだが、エントリーポイントが階段を110段もくだったトコロにある、というのもまた有名である。もちろん潜り終わった後も、110段の階段を登って戻ってこなくてはいけない。20kg以上の器材を全て身につけて、である。階段を下りた先は池のようになっていて、そこからエントリー、トンネルをくぐって外海に出る。要するに↓のような地形になっているのである。外海からトンネルに入ってくる光が青く美しい幻想的なポイントである。

グロット地形

………と、いうトコロまでは前情報で知っていた。なんせ有名なんである。愛読書である清水玲子さんの『ナマケモノのスキューバダイビング』にもグロットの階段情報は出ている。しかし、その先は知らなかった。いや、覗き見させてもらった友人のガイドブックに「エントリーは岩の上から。ちょっと勇気が必要」とは書いてはあった。あったが、そのガイドブックはダイバーのためのものではない。ダイビングに割かれたページはほんの少しで、それ以上の詳しいコトはわからなかった。

現地につき、器材をセットした私たちを、春日龍さんはまず階段の上にある案内板の前に連れて行った。案内板にはごくごく簡単な図形が書いてあった。階段と池、そして池の中央にある小さな岩である。「階段をおりたら、まず自分が岩に渡ります。そして波の様子を見て皆さんを渡します。今だ!と言ったら躊躇せずに渡るコト。迷っていたら次の波が来て渡れなくなります。岩の上に着いた人はフィンとマスクをつける。前に詰めて次の人のために場所を空けてください。岩の上でぐずぐずしていると体力消耗するからね。」

グロット階段
グロット階段の下り口にかかるアーチ
潜ったあとに撮ったのでボケちゃった。

階段の上からエントリーポイントを見下ろせる場所もあるのだが、そこには先客がいたので、私たちは案内板だけを頼りにブリーフィングを受けていた。案内板の縮尺からいくと、池の中の岩は人一人がやっと立てるくらいである。「フィンとマスクをつけたらどんどんエントリーしなくちゃいけないんですか?」という質問が出るのも当然であろう。しかしここはサイパン。縮尺は極めていい加減なんであった。「いやこの岩はもっと大きいから。全員揃って用意ができてから順番にエントリーします」。しかし波を見て手助けしてもらわないと渡れない岩とはどのようなモンなのであろう。案内図の縮尺を見ると手を貸してもらって飛び移るような具合になりそうだ。ちょっぴり不安がこみ上げてくる。

ブリーフィングを受けた後はウェットを着て器材を背負い、噂の階段に挑むだけだ。しっかりした手すりがあるのが嬉しい。頭上には木が生い茂り階段のほとんどは木陰になっているのだが、でも暑い。リゾート用の2mm厚のウェットを着た私でさえ汗を滴り落としているのだから、5mmのスーツを着ていてしかも熱中症になりやすいUが心配になって時折後ろを振り返り、ちょっと上気してはいるがまだ正常の範囲の顔色なのを確かめながら歩く。やっと辿りついた階段の下にはエントリーポイントである岩が見え、その間に波がすごい勢いで入りこんでいた。―――え、ここを、渡るの?

「やだなあ、タンク背負ってる人にそんなムチャはさせませんよ」と後で春日龍さんが笑っていたが、私たちの心配は杞憂だった。階段をおりた先で地面が切れているのだが、右手の壁に張り付くようにして(ここにも金属の手すりがついている)回り込むと、真ん中の岩と地面の間はほんの一歩になる。そこをガイドさんに手を貸してもらって渡るのである。「はい渡って」「はい渡って」で次々に岩に渡り、フィンとマスクをつけて、今度は「はい降りて」「はい降りて」で岩の上からジャイアント・ストライドでエントリーする。高さが2m近くあるのですぐに飛び降りられるかも不安だったのだが、春日龍さんは躊躇する暇を与えてくれないのであった。

マスクとレギュをしっかり押さえてエントリーするものの、マスクがずれて水が入ってしまってちょっと焦る。これがあるからジャイアントは苦手だ。後で春日龍さんから「レギュは外れるのが怖くて皆しっかり咥えてるから、そうそう外れないよ。だからレギュよりもマスクを意識して押さえるといいよ」と教えてもらった。なるほど。水にどぼんと入ったら、後の人の邪魔にならないように岩から離れて待機。全員が揃ってから一緒に潜降。潜ってすぐに飛び込んでくるトンネルからの光はさすがに美しく、夢中で写真を撮りまくる。

エントリーした池から外海へと通じるトンネルは3つあるのだが、そのうちの一番左、たぶん一番大きなトンネルから外に出た。グロットはコースの取り方がいくつもあって、あの階段さえ覚悟するなら何度も楽しめるポイントだそうだ。外海に出てすぐに大きなカスミアジが視界をよぎっていく。それが泳いでいく先に目をやれば……アオウミガメーーー! 遠かったけど大きい個体で、ゆったりと泳ぐ姿はやっぱり優雅だった。うふふー、嬉しい。

運がいいと大物にも会えるらしいポイントなのだが、私たちはアジとカメ以外の大物には出会えなかった。しかし海の色と地形だけでも十分楽しいポイントである。大物ではないがノコギリダイの群がすぐ近くを泳いでくれたのも嬉しい。しばらくずーっと中層を移動し、春日龍さんの合図で深度をさげる。深度をさげたその先には大きな洞窟があって、そこでしばらくアケボノハゼ(ハタタテハゼの仲間でもっと深い場所にいる。滅多に見られない)を探すも、見つからず。でもハタタテハゼはたくさんいたよー。

空気のあるうちに池まで戻らなくてはいけないので、また中層を泳いで帰る。行きに使ったトンネルのわき道、人一人がやっと通れるくらいの穴を潜って池へ戻った。予習をしなかった私は「サイパンの明るい海に水中ライトなんかいらんだろ」とライトを持っていなかったのだが、ちゃんとガイドブックに書いてあったらしくUとYはライトを使って楽しんでいた。最低限の予習は必要だねぇ。戻った池には光のカーテンが降り注いでいて、またもや写真を撮りまくってしまう。夏しか内海に光は入らないのだそうだ。浅瀬で安全停止をし、またガイドさんの介助を受けながら一人ずつエキジット。

今回のログはコチラ(111本目)。写真たっぷり。

しかしこの後の階段がキツい。ダイビング前の下りよりも潜った後の上りの方がキツイのは当たり前だがでもキツイ。手すりに掴まって腕の力で階段をあがる。へとへとになったところで、本日のダイビング終了。どれも楽しかった〜。荷台に乗り込み後はホテルに……のハズだったのだが、春日龍さんが気を利かせバンザイクリフに寄ってくれる。バンザイクリフ……。

バンザイクリフ
バンザイクリフ

実はバンザイクリフもダイビングポイントなのだ。崖の上から覗いた海はとても深く青く美しい。でもここで潜りたいかと問われると、複雑だ。サイパンに何度も通っているKMさんも、お母さんに「バンザイクリフでだけは潜っちゃいけない」と言われているそうな。まぁバンザイクリフに限らず、沖縄にしろグアムにしろサイパンにしろ、日本に近い南の島(つまり気軽に行けるダイビングポイント)は激戦地だった場所ばかりなんだけど。Grottoに行く途中には日本軍のトーチカがあったし、崖も不自然に崩れていてKMさんに「砲撃の痕だよ」と教えてもらったばかりだしで、別にそれで遊ぶのを止めるつもりはないんだけど、とても困った気分になる。

17時ごろホテルに送り届けてもらい、交代でシャワーを浴びて命の水で元気を取り戻した19時、全員で連れ立ってガラパン地区の某レストランへ。ホテル前で別れた春日龍さんが待っていて、食べるの大好きな彼のチョイスで思いっきり飲み食いしてからログ付けをした。前の日に春日龍さんが釣ったという何とかアジ(忘れた)もテーブルに乗って、刺身(極ウマ!)、カマ焼き、皮の揚げたのと1尾を8人で食べてもボリュームたっぷりの大物ぶりで楽しませてくれ、大満足。しかし私もUもYも大食いの方なのだけど、TOYOさんと親父さんの食べっぷりには脱帽した。

命の水ガラパン地区
左:本日の命の水(マルガリータ)をかろうじて海の見える
バルコニーにて/右:ガラパン地区の夕焼け

22時頃まで店で楽しみ、私たちはホテルに戻って爆睡。SHINさんたちはGrottoの階段疲れを癒すためにマッサージに行ったらしい。……元気だなあ。

≪つづく≫

2005.7.4

切羽詰ってはないけど切れ間なくやる事があって、ちょっとは残業代も稼げるという程よい仕事量だったのに、1ヶ月前に丸三日かけてやった仕事を今度は半日でやれとムチャを言われて死にそになりました。つか前回よりデータ量増えてるし! 「絶対ムリ」と言い張って一日半の時間をゲットしたものの、それでも笑えない仕事量で、モニタ睨んでるから目は痛くなるし手は腱鞘炎になりそになるしトイレに行くのもお茶を飲むのもご飯を食べるのもできる限りガマンして昼休み返上して深夜残業して―――ひーん。さすがに芯から疲れ果ててしまって、データを渡したその後は後回しにしていた他の仕事に手をつけるコトもできず(能率あがらないんだもの! 頭がボーっとして)、早めに帰りましたよ。

「なんでだか旅行記書いてると忙しくなる気がする」から、一度は「いや自業自得か、旅行で休んだからそのツケがきてるのか」と納得しかけたんだけど、違う、違うよ! 旅行の後ももともとの仕事量だったらコントロールの範囲内だったよ。ちゃんと考えて休んでるもの! 昨年度今の上司の下につくようになってから、確実に忙しくなっています。それに伴って愚痴も増えて、自分でもウンザリ。今週末はたとえ雨でも気晴らしに行くぞぅ!

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