2004.2.19

ふと気が向いて、しばらく前にあちこちで見かけていた≪ファンタジー職業適性診断≫をやってみた。結果、私に最も似合う職業は“聖騎士”だそうな。「戦士の『リーダーシップ』と僧侶の『優しさ』を併せ持つ、心優しいリーダータイプ」 というのが当たってるならすごく頼れる人っぽいけど、リーダーシップは欠片もないし、心優しいのは身内にだけ。「心優しいときと攻撃的なときとが両極端。怒らせると手がつけられないところが特徴じゃ」 ってのは……あはは。身びいきが激しくて身内が何かされたらすぐ怒るって性質はあるけど、それって聖騎士というより番犬(←ファンタジーの職業じゃないじゃん)。しかし「人のために自分を犠牲にして戦う」ってのはないない、絶対ないね!

ついでに≪辛口性格診断≫も。こちらでは「あなたはずばり、“活火山”タイプ」 だそうだ。こっちの結果の方はいくらか思い当たる節があるものの、「ふだんおとなしいと思ってなめてかかるとエラい目に遭います。このタイプは強情で冷酷で無分別という負のパワーを内に秘めている、いわゆる“キレる=逆上する”と恐ろしいタイプ」 ってトコロがも一個の結果と共通してない? イヤー! 強情で冷血で無分別って! しかも「有名人で言うならデヴィ夫人かトルシエ監督」 だってさー。凹むよ。私ってあんな!?

どーせ性格診断なんてのはお遊びだし、本気で気にしているワケじゃないんだけど、なんか似たようなコト言われちゃったのでつらつら考え込んでしまった。辛気臭いから途中経過は省いて結果だけ言うと、人を追い詰めない怒り方ができるようになりたいなー、と。……この言い方は違うかな。誰かに怒りを感じたときに、相手の言葉を封じ込めないで、自分の気持ちを伝えられるようになりたいってコトなんだけど。

私は一度気を許した相手には滅多に怒ったりしない。しないが、でもやっぱたまには怒らずにはいられないときもあって、で、そゆときの相手の態度を見ているとどうも相手を追い詰めてるんじゃないかと思う。諸手を挙げて降参されちゃうコトが多い。これって勝ちか負けかで言ったら勝ちなんだろうけど、私の本意じゃないんだよなー。ちっとも、全然本意じゃない。だって私の求めているのは勝利じゃなんだもの。歩みよりとか、理解なんだもの。

「お説ごもっとも」と言われちゃったら、反省したり変わったり譲ったり刺激を受けたりする必要がなくなっちゃうじゃない? 私が。周囲にイエスマンしかいない状況とさして変わらないんじゃないのかねー。私はもちろん自分の価値観に基づいて怒るけど、その価値観が絶対なんてコトはないし、それを変えたり揺らがされたりするのも楽しいと思ってる。それなのにあっさり降参されちゃうと、ツマンナイじゃん。(正直に言うと、楽しいと思えるのは後になってからなんだけど。そのときはブチキレたりするけど。)

はるかな昔、「あなたのこうゆうトコがイヤ」と怒ったら、「じゃあ変える」と言われて、すんごい虚しい気分になったのなんか、イイ例だ。こんな小娘(←当時)の一言であっさり変えられるなんて、あなたの価値感っていったい何?とまで思った。でもきっと私の側にも問題があるんだろうな。なんせ強情で冷酷で無分別という負のパワー 持ちだからね。気をつけなくっちゃ。ほほ。


2/20追記:「周囲にイエスマンしかいない状況」ってのはケンカしたその瞬間に限ってって意味で書いたんだけど、さすがに言い方違うやな。それに、今一番一緒に過ごす友達たちとはケンカになるトコまで行かないのよねー。お互い短所もひっくるめてその人だと思ってるし、その範囲を越えちゃって「それはちょっと」と感じるときも感じた瞬間に口にしあってるから溜まらないし。それはそれで得がたいシアワセなのだよね。

2004.2.18

ウチの両親は鶏卵を売って生計をたてているので、鳥インフルエンザ騒動が心配だ。インフルエンザそのものよりも、風評被害が。しかし人も動物も病気ばっかって、おかしいよねぃ?

さて。長い間待っていた須藤真澄さんの『マヤ』が今月頭に発売された。“須藤真澄初期作品徹底救済蔵出作品集”と銘打ってあるとおり、今まで本になっていなかった作品ばかりが載っている。中でも私が楽しみにしていたのは『全国博物館ルポ』だ。全国の変り種博物館がとっても魅力的にイラストで紹介されているこのシリーズ(?)、いくつかは『あゆみ』という作品集に収録されていたのに、何件かは洩れていて、残りをぜひ読みたいと思っていたのである(『あゆみ』だから『マヤ』なのですよ、タイトルが。イイなあ須藤さん)。

読めば行きたくなるコト請け合いの、ステキ博物館ばかりが次から次へと出てくるこの企画、実は、全部ウソ。私に須藤真澄をオススメしてくれた人も「普通ならネタバレは厳禁なんだけど、ガッカリするといけないから先に言っとく。あの博物館ルポ、ウソだから」と、わざわざ断ってくれたくらいである。この心遣いは、ホント正しい。だってすごく真しやかなんだもの。ウソだとわかっていても「ああでもホントにあったらイイのに。絶対全部行くのに」と未練がましく願ってしまうくらい。深海魚水族館なんて魅力的すぎる。

今回『マヤ』に収録されている中では“恐竜研究博物館”に行ってみたい。スペースを学者に貸し出して、そのスペース内で各人がそれぞれの学説に基づいて展示を作るってコンセプトの博物館。同じ化石から全然違う復元模型が作られていたりするの。思うんだけど、現実でも博物館だからって「正しい」に拘らなくても全然オッケーだよね? 1つの正解を見せるより「こうゆうのもアリかもよ。ひょっとしたらこうだったかもよ?」って、いろんな可能性を見せてくれるのって、まあ展示品にもよるけど、楽しそうじゃない? 見るほうも「私はこっちの説の方が正しいと思う」「いやあっちの方がカッコいい」と盛り上がっちゃいそう。

あああ。実際に作ってくれないかしら、誰か。どっかの村おこしとか。使いもしない立派な施設作るより、よっぽど価値があると思うんだけどなー。

2004.2.17

びー。すんごいショック。すんごい損した気分。ファントマの芝居を観にいって、しかも題材が茨木童子だったのに、楽しめなかった。私用で金曜日の仕事を休むにあたっては、もちろん事前に支障がないように調整していたんだけれども、いきなり支社から緊急の要請が入ってちょっとゴタゴタしてしまったらしい。休み明けにメールチェックしたらそれ関係のメールがずらずら入ってきてビックリだ。それ知らなかったから歯医者に行って1時間遅れで出社しちゃったし(今年に入って3本目の銀歯の治療。なんなんだー)、夜は観劇の予定があるから残業できないしって状況で、なんとか時間内に仕事を終わらせるため、週末ぼろぼろになった体にムチうって赤坂・六本木界隈を文字通り駆け回った。それでもやっぱり時間内には終わらなくて、ギリギリまで残業して、開演ベルが鳴り響くなかシアターサンモールに走りこむ。

芝居って「よし楽しむぞ!」という心構えで見るのがヨイと思う。…ってそんな固いモンじゃないし別に力む必要はないんだけど、「さあ私を笑わせてちょうだい」でも「感動させてちょうだい」でも何でもいいから、幕が開くのをわくわくと心待ちにしてる状態で。「どーせツマンナイんでしょ」と斜に構えてると、いっくら芝居が面白くても引き込まれるまでに時間がかかっちゃったりするのだ。舞台が映画やTVと違うのは、観客も舞台作りに参加できるトコロである。客の反応で役者の芝居が変わる。その変わった芝居にまた観客が反応する。舞台を知らない人に説明しづらいが、舞台と客席が一体になったあのシアワセな感覚は、他ではなかなか味わえない。いろんな要素が必要なので、頻繁に芝居を観ていても、それを感じる確率は低いんだもの。

んで、昨日の私はいい客じゃなかった。疲れすぎていて、笑ってもすぐに「ふう…」と落ち着いてしまうのだ。しかも自分の状態に気付かないで「どうも今回のファントマは今イチだなあ」と思っていた。一緒に観にいった友達2人が声を揃えて「今までで一番バランスがよかった! 面白かったね!」と言うまで。私にはツマラなかった作品を他の2人が楽しんだってのは、今までの経験からありえない。もちろん個人の好みはあるしツボも微妙に違うけれども、基本ラインで正反対の評価を下すなんてのはありえない。……てコトは、いつもはちゃんと拾っている魅力を、掛け合いを、昨日の私はただ漫然と流してしまったのだ。

ファントマの芝居って万人に楽しいものじゃない。「ついてこれる人だけついてこい」タイプなのだ。で、昨日の私はついていけなかった、と。もう愕然。今、面白いと思える数少ない劇団なのに! 美津乃さんの茨木童子なのに! 実際に芝居がツマラなかったなら「まあこんなときもあるよね。次を楽しみにしよう」と思えるのに、自分のせいで舞台を楽しみ損ねたなんて。ショックだ。

あ、でも帰り道にパシリやらされてる保村さん(←大好きな役者さん。彼が以前所属していた劇団の座長が今回ファントマに客演。彼自身もファントマには何度か客演している)とすれ違ったのは嬉しかった! 役者オーラ出してなかったから気がついたの私だけで、これはちょっと得した気分。

2004.2.16

金〜日の3日間、某イベントの手伝いをして過ごした。その関係でお手伝いメンバーの2人がウチに泊りにきたので、久しぶりにマジメに料理をして歓待。とは言ってもウチで食べられるのは朝食と夜食だけなんだけど、朝食は我ながら豪華だったと思うわ。基本的にいつもは自分だけのために料理をしているので(食いしん坊だからそれでも楽しいんだけど)、こうやってたまに人に食べてもらうのは嬉しい。客の2人はよく食べてよく褒めてくれるし。「美味しい」と言ってもらうと、よし次もガンバろう!って気になるよ。

イベントの手伝いはとにかく寒かった。暖かかった昼間だって底冷えするような場所だから、夜になるともう大変。ホッカイロを腰に貼りつけ、靴の中に入れ、それでも深々と冷えるんだもの。それでも気心の知れたつーかー仲間との共同作業が楽しくないワケがない。作業の分担も手順もわかっていて余裕があるから、空き時間にはばか話をして大笑いして過ごせる。夜遅くまでの作業が3日も続くと、だんだん皆ストッパーがゆるくなって壊れてきて面白すぎるんだもの。あ、でも考えなしのコトして怒られたのは、1つ失敗。反省。

お手伝いの役得も堪能し、刺激も受けて、得るモノ多き週末。やめられない―――やめたくないな、と思う。まだ当分。

2004.2.12

土曜日、夜行ではるばるやってきた友人と落ち合って観光。“人呼んで忍者寺(パンフレットにそう書いてある)”な妙立寺からはじめ、にし茶屋街、近江町市場、長町武家屋敷跡界隈。妙立寺はガイド付きでしか見られないんだけど、構造が複雑で仕掛けが山ほどあってワクワクした。案内役が仕掛けを披露するたびに「へー」「ほー」「わあ、賢い!」と声があがるので笑ってしまう。昔、バイトでテレフォンショッピングの収録現場のサクラをやったときのコトを思い出したけど、今回の声の方がよっぽど心がこもってたな。もちろん私も感嘆の声を上げながら見て周りました。井戸の抜け穴がどこに続いているのか、知りたい。誰か調べようよー。写真撮影禁止なのが残念。

旅行先で機会があったら必ず覗くのが、市場。大好き。もちろん近江町市場も楽しみにしていた。入ってすぐに客引きにつかまって「ほかの店は全部冷凍! ウチのだけだよホンモノは」と言われたけど、こうゆうの言う店に限って信用できない…。いや天気が悪くて船が出せなくて、私たちが行った日は実際に冷凍ものが多かったらしいけど、でもそれなら条件は一緒でしょう。市場内で飲んだ、温かいしょうがグレープフルーツジュースが美味しかった。お昼をはさんで見て回り、香箱ガニを買って家に送る。

香箱ガニ←お土産にした香箱ガニ。金沢で漁ができるのは1/15までだそうだから、残念ながら地元モノではないのだけれど。でもめっちゃ美味しかった! 食べてる最中、タイムリーにもTVで『エイリアン2』をやっていた。

見応えある〜って展示物はあまりない武家屋敷跡界隈も、散歩にはいい感じで(雪さえ降ってなけりゃ、だけど)、足軽資料館や老舗記念館などちょこちょこ見学しながら、ゆったり見て回る。途中、土産物屋のおばさんにつかまって愚痴を聞かされた。どうやら私らの前に店に寄った団体客のマナーが腹に据えかねたらしくって、話を聞けばたしかに彼らのマナーは常識外れなんだけど、でも私らも「えーっ、ヒドいですねえ」と相槌うつくらいしかできないんだよなあ。観光客って立場は同じなので、なんとなく申し訳ない気にはなってしまうけど。

武家屋敷跡夜の兼六園
左:武家屋敷(野村家)の庭。 右:ライトアップされた兼六園。

ここでホテルにチェックイン。お昼以外休みなしで歩き回ったからかーなり疲れたが、まだ予定は残っている。お茶を飲んで一休みして、すっかり暗くなったトコロで夜の兼六園に。ちょうどライトアップの期間にぶつかっていたのだ。入り口の近くは混み混みだったし、中心部のライトアップはやりすぎの感もあるけど、奥のほうは人もばらけて静かで雰囲気があっていい感じ。街の夜景が一望できる場所もある。寺の屋根に積もった雪がキレイだった。ときおり吹雪く雪にも負けず、コースを2周して堪能。友人は以前夏の金沢を訪れたコトがあるそうで「全然雰囲気が違う」と面白がっていた。夏の、昼の兼六園も見たいなあ。私も。

その後、割烹店で喰いまくり呑みまくり、2日目終了。場所がちょっと外れているせいか店は貸切で(料理は美味しかったのに)、店のおじさんとたくさん話せて楽しかった。金沢の食材の旬や料理法の話から気候の話から人生の話まで。あはは。気持ちよくなったトコロでホテルに戻り、なんちゃって露天風呂に行って、今度は知らないおばさんと星が見える見えないと競い合う。

3日目はさらっと。谷内屋酒造で酒蔵見学→ひがし茶屋街再び→加賀友禅伝統産業会館。ホントは昼の兼六園を入れる予定だったが、途中でちょっとしたアクシデントが発生したので、時間が取れなくなってしまった。その代わりに友人が行ってないひがし茶屋街に行って、お茶。お昼頃一瞬晴れて、ぱーっと明るい浅野川が見られたのはよかった。あと、酒蔵とひがし茶屋街の間の寺が密集してる道も、いい散歩道だったな。金沢、歩き甲斐のある場所が多い気がする。今回は雪に邪魔されて、のんびりゆったり歩くのはできなかったけど。余所見しながら歩いていると雪にハマるんだもの。

谷地屋内部谷地屋の杉玉
左:谷地屋の一角。片方は料理用、片方は熱燗用だそうな。(笑)
右:新酒っていったらコレでしょー! 茶色くなったら熟成。

バテバテの体で夕方の電車に乗って帰京。途中爆睡。遠いよ金沢! でも、初めてにしては盛り沢山に楽しめた旅行だった。波津さんのマンガのイメージがだいぶ具体的になったのも、嬉しい。ときどき「おおおっ波津さんワールドだっ」と興奮してしまったよ。「〜まっし」って方言とかね。今度は違う季節もいいな。代表的な観光スポットは行ったと思うから、気に入ったトコロをじっくり楽しむ感じで、また行きたい。今度は温泉も。

2004.2.10

さて金沢。強い寒気団だか低気圧だかのせいで大雪だった金沢。地元の方々の薄着っぷりにびっくりしながら、モコモコに着ぶくれて過ごした金沢。――寒かった〜〜〜。あと歩きづらかった! 履いていった靴は1日でぐしょぐしょになり、慌てて完全防水タイプの買っちゃった。いっそ長靴買おうかと思ったくらい。だって長靴履いてる人が妙にカッコよく見えるんですもん。

金沢風景金沢風景
ひがし茶屋街とその近くのお米屋さん。

初日は昼前についたので、仕事までの空き時間にひがし茶屋街を散策する。うん、確かに風情があるのはほんの一角だけなんだけど、でもやっぱりその町並みが嬉しい。雪も似合う。お茶屋の内部の見学できる“志摩”が面白かった。芸妓遊びしてみたーい。近くで昼食を取り、浅野川のほとりも歩いてみる。“梅の橋”を渡ると、橋のたもとで本格的なカメラを構えて辺りの風景を撮っていたおじいさんに話し掛けられた。「お嬢さんみたいに赤い傘をさした人が、この雪風景の中にいると映えますね」と。年配の方(男女問わず)にお嬢さん呼ばわりされると、なんだか嬉しくなってしまう。

茶屋の内部茶屋の内部
“志摩”の内部。

茶屋の内部
贅沢すぎて町奉行(だったか検番だったか)のチェックをうけた
というだけあって、ふすまの引き手まで凝っている。七宝細工だそうな。

金沢風景金沢風景
梅の橋と、橋のたもとのカーブミラー。

2時から5時までは、仕事とそのための移動。仕事場までは電車で行ったんだけど、その電車が1時間に1本か2本しかなく、帰りは吹雪くなかホームで待つのがイヤだったので「よし、金沢駅方向に歩こう」と思いつく。仕事場から金沢駅までは4km強ある。が、その間には電車だけでなくバスも走っていた。しかもバスの本数の方が多かった。「金沢駅に直結してる大通りを歩こう。きっとそこがバス通りだ。歩いてるうちにバス停があるだろう」と思った私の判断を責められる人がいるだろうかいやいまい。いるな。

仕事場を出たとき時間は5時。まだ空は明るかった。車道で雪を溶かした水が歩道に流れ、歩道の雪は半分ぐちゃぐちゃって状態で歩くには最悪だった。しかし私は心配してなかった。きっとすぐにバス停があると思ったのだ。が、しばらく歩いてもバス停は現れなかった。「…これ、バス通りじゃないのかしら」と思った頃には、もう引き返すのももったいないような距離を歩いていた。「今さら戻るのもなんだしなー。仕方ない、駅まで歩くか。大通りがまっすぐ駅に通じてるのは間違いないんだ。いくら私でも迷わないだろ」。ときどきある水溜りを避けながら、私は元気に歩き続けた。

駅までの距離の1/3ほどを歩いた頃、さらに大きな道にぶつかった。今まで歩いてきた大通りと交差する形…要するに私の行く手を塞いでいるのである。そしてその交差点には、信号がなかった。(……え?)。私は周囲を見回した。と、私が歩いてきた道の、反対側の歩道に地下通路の入り口が見えた。私の目の前に横たわる道路は交通量も多く、突っ切ってはいけない。しかし今まで歩いてきた道なら隙を見て渡れる。渡れば地下通路があり、それを使えばもう1本の道路も渡れる。そしてその地下通路は封鎖されている。(……はい?)。入り口を塞ぐ柵に、迂回路への案内図が貼ってある。私は大人しく8号に沿って歩き始めた。他に仕様があるだろうか。

しかしこの迂回路も曲者だった。迂回距離が半端じゃないのである。かなり歩いても渡れそうな歩道橋もなにもない。あとで地図を見たのだが、私の行く手を塞いだのは北陸自動車道であった。高速道路である。信号があるワケがなかった。そろそろ空は明るさを失い始めていた。足はじんわり濡れていて冷たい。雪はときおり横殴りに吹雪いてくる。道はわからない。文句を言い合うツレもいない。めちゃくちゃ惨めな気分になってもイイ状況である。なのに、そのときの私はナゼだか笑い出したくなっていた。

(ひゃー、このまま遭難しちゃったらどうしようー。私って引きどき知らないんだよなぁ。今までだって山で「ホントにこの道でいいの?」と思いながらも、せっかくココまで歩いたんだから行っちゃえ!と、先に進んでえらい目にあったコトが何度もあったっけ。あれって友達が無茶だからで、私は大人しくついて行ってるだけだと思ってたけど、私も同じ穴の狢だったのかー)なぞと思うと可笑しくて可笑しくて口元が緩んで仕方ないのであった。

やがて、高速の下をくぐっている道に出た。それを使って高速を横切る。が、先ほど歩いていた、駅にまっすぐ通じる大通りまで戻るのは、大変そうだった。(んーーー)。私は駅があるであろう方角を見た。すると、民家の間に、一際高いビルが見えた。(よし! きっとあれが駅だ。あれに決めた。あれに向かって歩こう)。結論から言うと、そのビルは駅ではなかった。しかし、私の方向音痴はそうヒドくない。多分。目標にしたそのビルは、駅とそう違わない方向にあったのだ。最後の方でまたちょっと迷ったが、何とか真っ暗になる前に金沢駅に辿りつけた。ほっ…。

その後はホテルに行って、防水靴を探しにさまよって、坂田靖子さんがご自分のサイトでオススメしていたマレーシア料理の店で夕食を取って(大人数で行っていろいろ頼みたい感じ。1人じゃ品数食べられないのが残念だった)、少〜しだけ書き物をして、泥のように寝た。初めての金沢旅行の1日目、終了。

≪つづく≫

2004.2.9

ああああ…。巡回サイトで『王の帰還』の感想読まないように注意しなくちゃな日々が始まってしまった…。事前情報も極力仕入れないようにしてるんだから! TVで予告が流れても目を逸らしてるんだから! ……私が観にいけるのは早くて19日、遅くて21・22の週末かなあ…。早く観た〜いっ。

1月も更新少な目だったんだけど、2月も少なめになりそう。忙しいと、書きたいコトが貯まってしまう。あれもこれも書いてないのにっ。て、たいしたコトはもともと全然書いてないんだけど、内容がどうでもイイことであればあるだけ、後で、1年以上たってから読み返したとき楽しいんだよね。自分が。人に向けて書いてはいるものの、やってるのは自分のためだから、極めて真っ当な状態と言えましょう。てなワケで、金沢旅行の話をする前に木曜の夜の話から。

* * * * *

あっはっはははは! こないだ友人と会ったときに実写版『エースをねらえ!』の話になったのよ。私は全っ然期待してなかった…というより、ハッキリ言うとイメージを壊されたくなかったので見なかったんだけど、見てた人がいたから感想聞いたのね。そしたら「お蝶夫人以外に見るべきものはない」と言われました。「あの子って、『ガラスの仮面』で姫川亜弓やったんだけど、ばかばかしい演技をマジメにできる子なんだよねー。ほんの1m先に相手がいるのに「マヤ、恐ろしい子…」って呟くようなまんがチックな演技を、ちゃんとやるの。他の人は全然だけど、あの子は悪くない」と。

それを聞いて(へえ、お蝶夫人が一番難しいと思ってたのに)ってちょっと興味が湧いて。んで今、何かやってるかなーとチャンネルをぷちぷち変えていると、ふと大写しになったのが縦ロールのテニスウェアを着た子だったの。すぐ「あっお蝶夫人だ!」と思って、はい、つい見てしまいました。ちょうどお蝶夫人がひろみとダブルス組む回で、「わたくしにできるとお思いですか?……では、やりましょう」だの「それよりも全力を出しきらないプレーをすることを恐れなさい」だの名台詞のオンパレードで、友人の評があまりにも的確で、げらげら笑ってしまいました。あー早く『エースをねらえ!』買い直さなくちゃ。古本屋で探してはいるんだけど、なかなか揃ってないのよねー。

しかしその時も友人とさんざ話したんだけど(見てないくせに)、実写版全然ダメだわ。ひょっとして大まじめに感動モノにしようとしてるんじゃない? あーあ。あんな時代モノやるのにあんな普通の演出でやってどうするのよ。絶対あれは原作のとおりにやるべきだ。お蝶夫人役の子のテンションでやらなくちゃ。本人たちがマジメにやればやるほど可笑しい。可笑しいんだけど、あれ?いつの間にか感動してない?何で?って線を狙うべきだ。…ってどうよ。舞台が好きな人には通用すると思うんだけどなー。

そういえば『ガラスの仮面』のドラマの出来はどうだったんだろう。あのときもチャンネル変えてる最中に一瞬だけ見たんだったっけ。ちょうど速水真澄役の田辺誠一がマヤ役の安達祐実と何かの芝居を見てるシーンで、シートに置かれたマヤの手に自分の手をそっと重ねるっつー瞬間だった。それなのに舞台上の芝居に夢中なマヤは気付かない、とかそんなの。んで2人のルックスがあまりにもあまりで、何か見ちゃいけないモノを見ちゃったようで、めちゃくちゃ恥ずかしくなって慌ててチャンネル変えたんだよなー。姫川亜弓だけでも見ときゃ良かったかしら。

* * * * *

TV見てたらあんまり楽しい気分になったので、荷造り放り出して書いてしまったのが上の文章。翌日は早起き必須の日だったのに、何やってんだー。おかげで眠くて大変でした。

2004.2.5

今頃、『ユリイカ』の2002年4月臨時増刊号を読んだ。『指輪物語』の特集の回である。図書館で本を渡された瞬間、表紙にずらっと並んでいる名前の中から“マリオン・ジマー・ブラッドリー”って文字が目に飛び込んできて、(えっブラッドリーってもう死んでると思ってた!生きてたんだ!)と狂喜したが、開いてみると何のことはない、昔に書かれた評論だった。うろ覚えに覚えていたとおり、彼女は何年も前に亡くなっているのだ。わかっていたのに、なんか寂しいよ…。

M.Z.ブラッドリーは私の中に特別な位置を占める作家である。最初に読んだのがアーサー王伝説を下敷きにした『アヴァロンの霧』シリーズで、その後『ファイヤーブランド』や『聖なる森の家』のシリーズを読み、『ダーコーヴァ年代記』に行き着いた。なぜ特別かと言うと、すんごく思い入れがあるのに、人に「面白いよ!」とススメられない作家さんだからだ。私の読み方があまり一般的でないと思うので。私が彼女の『ダーコーヴァ』を好きなのは、その中に書き手である彼女自身の迷いが如実にあらわれているからなのだが、同じ本を読んだ人から同様の感想を聞いたコトがないし、同じように感じる人がいたとしても、それを好む人は少ないんじゃないか、と思う。

が、オススメできないとは言いながら、やっぱり語りたい気持ちはある。だから、いつかドロ沼劇場に入れようと思って、とっくに絶版になっているダーコーヴァのシリーズは全部買って手元に置いてある。積んである。なのに読めないのだ。読めなかったのだ。そのときの感想が壊れてしまう気がして。今読んだら、かつて読んだときのイメージが壊れてしまいそうで。でも、『ユリイカ』の彼女の文章を読んで、特にメリーとピピンについて語っている部分を読んで、やっと「平気かも。もしかすると読み方は変わっちゃうかもしれないけれど、でもやっぱり彼女が好きになれるに違いない」と思えた。

棚からぼた餅が落ちてきてくれたので、そのうち腰を据えて読み直してみるつもり。(←なんせ文庫で22冊分もあるのだ)。

2004.2.4

スキーから戻った翌日、金沢と沖縄の旅行の手配を一気に済ませる。旅行の計画立てるのは大好きで、それをいっぺんに2つもできるなんて至福のとき…なんだけど、なんせ場所が北国と南国だ。雪の兼六園と慶良間の海との間を行ったり来たりしていると、さすがにちょっと混乱する。結局金沢へは私(もともと私の仕事のついでに行くのだ)とキリギリス2号が、沖縄へは私とキリギリス1号・3号が行くコトになった。

金沢へのツレとなる彼女は行動の人である。パワフルな人である。「沖縄に行けないならせめて」で人の旅行に同行するくらいだ。しかも金曜の夜は先約があるので、それを済ませてから夜行で追いかけてくるという。すごい。一緒に旅行に行っても、ただ漫然と時を過ごしたりしない人だ。彼女のおかげで自分じゃ行かないようなスポットに行ったりもするのだが、ときどき「ゴメン、ちょっと休ませて」と言いたくなったりもする。その彼女と金沢。行ったコトないけど、静かなイメージのある金沢。どうなるのだろう。

私はなるべく町並みが見たい。波津彬子さんの巻末エッセイマンガによると、京都のように景観をぶち壊しにするような建物・住宅もあるようだけど、でもそれでも私からしたらステキな町並みが残っているだろう。ただ、今現在の天気予報じゃ私の行く頃は雪なので、のんきにぷらぷら歩けるような状況じゃないかもなあ、と少し心配だ。あと何を食べようかってのも迷っている。海の幸と日本料理は外せないし、坂田靖子さんがHPでオススメしていたエスニック料理の店にも惹かれるし。ああ困ったどうしよう。(←棒読み。)

ま、遊べるのは正味2日なので、あまり欲張らないようにしよう。あれもこれもと想像するのは楽しいけれど。

2004.2.2

土曜日、石打丸山にスキーしに行ってきた。朝の6時に東京駅に集合というとんでもない(日帰りスキーなら当たり前?)スケジュールだったが、遊びのためならさくっと起きられるから不思議だ。…つか、起きられるか心配で4つもかけた目覚ましの鳴る前に、自然と起きちゃったんだけど。遠足前の小学生のよう。新幹線では無事に席が確保できたので越後湯沢まで爆睡するつもりだったが、喋ってたら「間もなく越後湯沢〜」のアナウンス。近〜。

席が確保できたのは車両全体が黄ばんだ喫煙車で、嫌煙禁煙とかしがましい今日この頃、あんなに大量の喫煙者を見るのはホント久しぶりだったから、ちょっと新鮮だった。煙かったけど。

今シーズンの初スキーだったので、荷造り時には友達に電話して「スキーって何持っていくんだっけ?」と、靴を履くときには「これどうやって履くの? 裾は入れるんだっけ、出すんだっけ?」と、初心者丸出しの質問をしてしまい、さて滑るぞ!という段階でコーチ役の友達に「…どこまで忘れちゃった?」と不安そうに聞かれてしまう。「理屈は覚えてるけど体が覚えてるか自信ない」と答えたものの、滑り始めてみたら頭より体の方がよっぽどしっかりしてて、すぐに昨シーズン終わり頃のレベルには戻れたのだった。あー良かった。

この日の天気は悪かった。昼にちょっと晴れ間が見えた以外はほとんど吹雪いていて、リフトでは寒いし滑れば顔に雪がびしびし当たって痛いし…。でもずっと雪が降っていたおかげでコースがあんまり固くならず、いろいろ練習できたのは良かったかも。途中「スピードはちゃんと出てるし危なげなく滑ってるんだから、全身で初心者オーラを出すのをやめろ」とアドバイスを受けるも、内心はいっぱいいっぱいで、この課題はクリアできず。まあ、追々。

雪の石打丸山スキー場雪の石打丸山スキー場
吹雪いてます吹雪いてます白いです!

天気のせいでひっきりなしに休憩していたが、かなりたっぷり滑れて楽しかった。……が。この日、私はやけにぶつかられた。私が悪いときもあったけど、後ろから何度も何度も何度もぶつかられたのはどうゆうこっちゃ。あんまりぶつかられるので、しかも相手が確実に私より上手いので、「ひょっとして私が変なのか。普通そこで曲がるだろ!ってトコで曲がらなかったり、逆に曲がるのを予測できないタイミングで曲がったりしてるのか」と思ったくらい。ま、でもほとんどの人はちゃんと謝ってくれ、私が怪我してないのを確認してから去ってゆく、って感じだったので別に気にしていないんだけど…。

最後の一滑りをしているときにぶつかったグレイのウェアの男! 後ろっからすごい勢いでぶつかって人を転ばせておきながら振り向きもせずに滑り去った男! 本っ気でムカついた。友達は「失礼な男でも彼女連れだと彼女の手前、きちんと謝るんだけどねー」と言っていたが、私は見たぞ。そいつは彼女と離れないために(彼女が先に私を追い抜いて行ったから)無理な追い越しをし、しかも遅れたくないから止まらなかったんだ。くっそー。お前のような男はフラれてしまえ! ぶつかるのは仕方ない場合もあるけど、きちんと謝るのは基本だろーが。

ちょっと早めにスキーを切り上げ、越後湯沢の駅に戻って、駅前のホテルの立ち寄り温泉に入れてもらう。冷えた体に気持ちイイ。失礼男にぶつかられたとき、ちょっと変な転び方をしたので肩甲骨の辺りが痛かったのだけど、出る頃には気にならなくなっていた。温泉効果覿面なり。その後「利き酒! 利き酒!」と騒いで、呑み助3人は駅の中にある日本酒の試飲コーナーに。ここでは500円で5種類の酒が試飲できるのだが、3人で回し飲みして15種類を制覇。下戸1人を待たせちゃ悪いとハイペースで飲んだので、途中でワケわかんなくなったけど、“梅の舞”ってのは好みだった気が。「大外れ」ってのはほとんどなかった。水と米の美味しい地域だもんね。嬉しい。

日本酒試飲コーナー

■500円で専用コイン5枚がもらえます。お猪口を置いて専用コインを入れ黄色いボタンを押すと25ccの酒がこぽこぽと。なんせ種類が多いので、目移りしちゃって困ります。

こうして書くとそうでもないようだが、自分的にはとっても盛り沢山の休日だった。帰りの新幹線で「日帰りだった気がしないよ…。1泊旅行したくらいの気分」と言うと友人らも同意してたから、中身がぎゅっと詰まってたんだろうな。の〜んびりする休日も好きだけど、あれもこれもと欲張った休日も楽しい。次の日に必ず襲ってくる筋肉痛まで愛しいほどに。(←ちょっと言い過ぎ)。

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