土曜の夜、友達の家で世界フィギュアを見た。友人が「あ! そろそろ始まるよ! 見なくっちゃ」と言い出すまで、やっているのも知らなかったけど、私だってフィギュアは好きだ。「よし、これが終わってから寝よう」と思った。しかしその日の日中、私たちは花見と称して歩きまわっっていた。前日も同じ面子で騒いで夜更かしをしていた。酒もかなり飲んでいた。ソファで布団にくるまるって態勢だった。私は睡魔に負けた。TVから流れる歓声と友人の興奮した声にはっと目覚めると、優勝した荒川静香の演技が終わったトコロだった。すーーーーっごく悔しい…。素晴らしかったらしいのにーーー。
ところで久しぶりに槙村さとるのマンガを読んだ。『Do Da Dancing!』。んー、どんどんダメになるなあ、彼女のマンガ。昔はダンス物ってだけで『ダンシング・ゼネレーション』や『NY☆バード』好きだったのに。「この人の書くドロドロが苦手だ…」と思い始めたのは何時だっただろ。要は彼女の作風が変ったんじゃなく、私の心が狭くなったんだけど。今じゃダンゼネ読み返しても面白くない。『Do Da Dancing!』もダンスの魅力より登場人物たちへの不満の方が勝っちゃうや。彼女の描き出す人物への不満な点っていつも同じで、一言で言うなら「暗い」。もう少し言うと「自己憐憫がウザい」「他人への同情の仕方が失礼極まりないor押し付けがましい」「説教臭い」。
私、今やってるファブリーズのCMが大ッキライなんだけど。あの「お互いに正直に言い合ってみる?」「…古い油のにおい…」とかやってるヤツ。あの陰湿な関係が見るに耐えないんだけど。なんとなく、それを思い出した。
『王の帰還』の吹替版も観にいった。けどもう私の中では俳優の実際の声で印象ができあがっちゃってるんで、「なんか違う」感が最後まで取れませんでした。第一部の吹替をDVDで観たときには、「おおっ何て質のいい吹替えなんだ」と思ったんだけどな。字幕問題のせいもあったかもだけど……。いや、実際に吹替の質はイイんだと思う。今でも。でもやっぱ本人の声が一番。あと映画館で観る場合、吹替だとお子ちゃまが多くてうるさくて集中できないってのも、マイナスポイントだわ。浸りたいのよ私ゃ。
んなワケで今イチ集中できなかったんで、余計なコトばかり考えてました。フロドの声は合ってるとかサムの声はちょいと二枚目すぎないかとか今のイントネーションはおかしいとかおおっ今の台詞は字幕よりも格調高いぞとかアラゴルンはやっぱヘタレだとか今の言い方は芝居的に違うんじゃないかとか歌詞を日本語に翻訳して曲にのせるのはムリがあるとか輸入モノのミュージカルもときどきムリヤリだもんなとか吹替版のゴラムはボヤッキー入りだなとかそういえば第二部の吹替バージョンは観てないやとかサムを追い返すフロドの言い方がキツく感じるけど台詞ではどうなってたっけとか、etc.etc. あ、あと「死のう」と「私は女!」って訳し方はないだろう!と思った。
だいぶ落ち着いたんで、上映終了間近にもう1回だけ字幕版を観にいって、あとはDVDを楽しみに待っているつもり。その頃にはもう少し映画館が空いてるといいなあ。今回ずーっと混んでるんだもの。
さてさて、沖縄旅行記にかまけている間に、たるたると日常が過ぎていってしまったぞ。何をしていたかなー。えーっと……とりあえず、かもねぎショットの公演、『サークルダンス〜疾走する街〜』は観に行きました。かもねぎショットを観たのはずいぶんと久しぶり。近頃すっかり、かもねぎメンバーだけの公演が無くなってしまったので、足が遠のいていたのですよ。メンバーが3人しかいないから、他の劇団とのコラボレーションになるのは仕方ないんでしょうけど、でもやっぱり10年以上前に初めて『婦人ジャンプ』(←かもねぎの代表作)を観たときの衝撃は忘れられません。
その頃もメンバーは3人だったけど、その主要メンバーの1人が抜け、新人さんが入り、抜け、入り、抜け、入り……で、今、かな。最初の印象があまりに強かったから、私は最初の3人の絶妙なバランスが最高だったと思ってしまうんですが、でも今でもかもねぎはかもねぎ。昔よりもストレートなメッセージが減ってますます分かりにくくなっていて、見ている最中はサッパリだったりも実はするのですよ。それなのに観終わったら、何となくイイ気分になっている、と。なんでだーーー?
かもねぎってのは不思議な劇団で、万人にオススメするコトはできません。受け止め方が各人各様になるでしょうし、そもそも伝わる人が限られていると思うのです。えー…つまり、三谷幸喜さんの芝居なんかは万人向きで、笑いドコロになると皆で一斉に笑うのですね。それはそれでシアワセな一体感があるのですが、でもかもねぎだと、くすっとなる場所が銘々で違うっつー感じ。昔っからそんな雰囲気の劇団でした。誰かが笑ってるのと同じシーンで、誰かが泣いていたりするの。そんなだからハマる人はハマるんです。私にとっても、また面白そうなのやってたら観にいきたい劇団です。
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ところで芝居を観にいったこの日は、ぽかぽかの春めいた陽気から急に冷え込んだ日でした。駅から劇場まで歩く間にすっかり冷え切ってしまった私は、劇場近くの定食屋に入り、鍋焼きうどんを注文しました。これがまあ不味くて。化学調味料が入っているのは間違いないんですが、それよりも醤油臭さと天ぷらもどきから出てるコゲ臭さが強いって尋常じゃないですよね? あ、天ぷらもどきってのはフライパンに油を多目に入れ、水で溶いた小麦粉を流しいれ、上にエビを乗せ、その上にまた水溶き小麦粉を乗せ、適当なトコでひっくり返して両面を焦げるまで焼いたらできましたって感じの品です。タケノコもシイタケも妙な味がして、唯一まともな味はカマボコなのです。ひでー。
それでも“冷えた体に熱い料理”って藁に縋り、食べられるところは食べて850円を払って店を出ました。が、「ちゃんとした鍋焼きが食べたい〜」って欲求が収まらず、次の日の晩ご飯には自宅で鍋焼きを作ってみました。昆布ダシだけ取って、あとは手間をかけずに鶏肉・ほうれん草・出来合いの掻き揚げ・玉子・冷凍生うどんでささっと作ったんですが、それでも件の店で食べたのよりずーーっと美味しいのです。あの店の女将はどうやってあんな不味いのを作ってるのかが知りたい。つか、ナゼ? 味音痴なのでしょうか? それなのに席はけっこう埋まっていたのだから、世間なんて信じられない!
さて。沖縄滞在もいよいよ最終日。体内の残留窒素を少しでも多く排出するため、飛行機は夕方。おかげでちょっとだけ観光もできる。が、あまり慌しいのはイヤなのでハッキリした予定は決めずに、まずは首里城を目指して出発した。モノレールの首里駅で待ち構えているタクシーの運転手さんたちが「歩くと20分かかるよ」と声をかけてくるのに、Kと私で「大丈夫です!(にっこり)」と声を揃えて返事してサッサカ歩き続ける。国際通りと港以外はまだロクに見ていないのだ。街の雰囲気を楽しみたいではないか。
「見て見て、この家のシーサー可愛い!」「やっぱ屋上や外階段のある家が多いね」「ペナンっぽいかも」「この苗字、何て読むのかなー」と、余所見をしながらぶらぶら歩けば、20分なんてあっと言う間だ(つか、20分はかからなかったと思う)。首里城の近くになると雰囲気のある建物も多くなってきて、それらにも寄りながら散歩を楽しむ。タクシーで通り過ぎちゃうなんて勿体ない!…と、思うのだけれども、ここにはバスやタクシーでくる人が多いのかしら? 首里駅からの道には観光客らしき人影がほとんどなかったのに、首里城にはわらわらわらわら人がいてビックリした。
たくさんの門をくぐって庭を巡って建物の中を見学して、かなりゆっくりの時間をここで過ごす。見応えがあって、面白かった。
そこから陶器の店が立ち並ぶ、壺屋やちむん通りにタクシーで。(「街歩きの楽しみはどうしたのよう!」「だって歩くには距離があったんだもん…」) 通りの両脇の店々がどれも魅力的で、ついフラフラとあっちに入りこっちに入り…。脇道に古い、雰囲気のいい家があったので行ってみると、そこは東窯(あがりぬかま)のあるお宅だった。中で生活なさっている人がいるとのコトで、遠慮しいしいそっと覗かせてもらう。その家の前にいたおじさんに「この道は雰囲気いいよ」と教えてもらったのが、本道とは1本ずれた細い通り。もちろんそっちの道を歩く。
左:気を惹かれた古い家/右:東窯
細い道が本道に戻る辺りに、今度は南窯(ふぇーぬかま)がある。登り窯に喫茶店(&ギャラリー)が併設されていたので、ここで一休み。
左:私のは黒糖味のクレープとさんぴん茶。友人は生ゴーヤジュース(にがっ!)
右:やちむん通りにはやけに人懐こい猫が多くてすり寄ってくるの。嬉しい。
お次は牧志公設市場へ。ここで「えーーっ、こんな色の魚が食えるのっ?」って類の魚を料理してもらってお昼ご飯にするんだ!と、意気込んでいたのに、鮮魚部がお休みで果たせなかった。残念〜。ホントに楽しみにしてたんだけど。でも見慣れない調味料やら食材やら肉やらが、これでもか!と並ぶ様は壮観でワクワクした。市場大好き。一回りしてから、2階の食堂でお昼ご飯。ちょうどお昼時でめちゃ混みで、入った店は手際が悪くてさんざん待たされたけど、味が良かったのでヨシとしよう。そこから国際通りに出、預けた荷物を回収しにホテルに戻る。そろそろ空港に行かねばならない時間になっていた。
出発時間1時間前の集合に、ギリギリ間に合う時間で空港到着。沖縄にお別れするのが寂しい。すんごく楽しかったのだ。那覇っていう、かなり大きな都市しか見なかったのに、それでも楽しかった。また来たい。いや来る。次は離島もいいなあ、と夢を膨らませつつ、離陸。さよーーーならーー。
≪旅行記、完。ながながおつきあい、ありがとうでした。≫
いかりや長介さん死去。『8時だヨ! 全員集合』は子供の頃の“週末のお楽しみ”だったし、『踊る大捜査線』の和久さんはカッコよかった。
……芸能人の訃報を聞いて、こうまで寂しく思うなんて滅多にないよ。
2本目はホントに楽しい、ストレスのないダイビングだった。(初心者の坊やに頭を蹴られるのを除いては)。噂の根の回りには銀色のスカシテンジクダイが大群で群れている。いかにもダイビング雑誌に載りそうな光景だ。他にもハリセンボンやハナミノカサゴの赤ちゃん、色鮮やかなウメイロモドキ。ぱっと見、藻にしか見えないモクズショイ(カニ)。珍しかったのは真っ黄色のウツボである。よく見ると顔はとても可愛い。この根の付近ではよくウツボの新種(つかまだ未分類の種?)が見つかるそうで、これにもまだちゃんとした名前がついておらず、「ウツボ属の一種」としか呼べないらしい。
2本目と3本目の間にささっと昼食。一緒に潜っていた4人は2本で切り上げるらしいので、3本目は私とKとSだけである。潜るのは阿嘉島の佐久原(さくばる)というポイントだ。(おおっと、今ネットで検索したら初心者はダメ、中級者なら何とか、のドリフトポイントだった! 事前に知らなくてよかった!)。3人だけならお互いの呼吸が測れてやりやすいので、何ら心配するコトなくエントリー。ウエイトを1kg増やしてからは潜降もスムーズで、ゆーっくりと、スカイダイビングのスローモーション版って感じで海底へと降りていく。降りてすぐにYさんが指差す方を見たら、そこには立派なコブシメ(コウイカ)が、ペアで優雅に浮かんでいる。40cmくらいはあったかなー。迫力。
と、Yさんが「岩につかまれ」とサインを送ってきた。何事?と思ったら、私らのいる真上を、ボートが移動していく。……怖ええ〜〜〜。急浮上なんかしちゃったらスクリューに巻き込まれてしまいますよ! ボートが遠ざかってから、「びっくりしたー」と表情とジェスチャーで伝え合う。でもすぐに気を取り直して移動開始。ここも、地形が面白いポイントだった。谷間に沿うような形で、その谷間の上を移動していく。この浮遊感が大好き。しばらく行くと亀裂があって、その下に何か珍しい魚がいるらしい。Yさんの「覗いて見て」の合図に、岩につかまって割れ目を覗き込む。泳いでいるときは気がつかなかったが、けっこう流れがあるようだ。手を離すと一箇所に留まっていられない。
Yさんが指した魚を見ようと亀裂を覗き込んでいると、急にKがあせったそぶりで私とSの間辺りを指差した。ふと見ると……クロガシラウミヘビっ!! ほんの、ほんの2〜30cmの距離に、あの縞々のヘビが身をくねらせていた。私はそっと身をひいた。ヘビは嫌いではない。距離をおいて見る分には怖くない。が、前日のダイビング後、Sの持ってきた沖縄ダイビングの本を読んでいた私は知っていた。クロガシラウミヘビには毒があるんである。しかもハブの25〜30倍という猛毒だ。噛まれたら嘔吐・麻痺・何とか…という記述を読んで「海の中でこんな目に遭いたくないよねー」と話したばかりである。
しかし私は最初はあまり怯えていなかった。こちらが何もしなければ、行ってしまうだろうと思ったのだ。が、私がそっと身をひいたコトで、ヘビは私に気をひかれたらしい。つつっ…と近づいてきた。私はさらに逃げた。と、ヘビは完璧に興味を持ってしまって、一番動きのある私の足に、明らかに足を目掛けて近づいてきた。ひーーーっ、どうして寄ってくるのよーっ! 動いちゃダメ、と思うものの、内心の焦りは募るばかりである。だって潮が流れているのだ。何度か逃げるうちに、私の手はもう岩を離れている。キックすれば戻れるけど、そしたらヘビがくる。どうすればいいのーーっ?
ここでやっと、Yさんが気付いてくれた。Yさんは私の手を取って流れないようにしてくれ、「動くな」という合図を送ってくる。私はYさんの手を握りしめ、ヘビの動きを追っているYさんの顔だけを見ていた。ヘビの方を見たらどうしても逃げたくなって動いてしまうからだ。緊張の数分間の(ホントはもっと短かったかも)後、Yさんは「もう大丈夫」とOKサインを出してくれた。ホントにホントにホッとして、私はYさんの手をきゅっと握り「ありがとう」を返した。後で聞いたら、ヘビは私の足をペロペロ舐めて味見しようとしていたらしい。…見てなくて、良かった…。そんなの見たら、とても平常心ではいられなかった。
しばらくはドキドキしていたものの、この後は普通にダイビングを楽しめた。最後の方になってやっと、ドリフトらしいドリフトも経験。「中層を流れてみよう」とYさんがスレートに書いてきたので、泳ぐのを止めてみると…おおっ、けっこう流れているではないか。何もしなくても運ばれていく。面白い〜…けど、体のバランスを取るのと深度をキープするのがちょっと難しいかも。私らが乗ったのはそんなに速い流れではなく、まったりしたモノだったが、速い流れってのもいつかは経験してみたいな。景色が走馬灯のように流れていくってのを、味わってみたい。もう少し上手くなってから。
帰りの海は朝よりも静かになっていて、誰も酔わずに那覇に帰り着く。これで2日間お世話になったショップとはお別れ。Sも、知人の結婚式に出席するため北部の町に向かって旅立っていった。残されたKと国際通りを歩き、自分への土産ばかりを買い込み、居酒屋で泡盛を楽しむ。沖縄の3日目、終了。
≪つづく。あと1回≫
↓↓↓沖縄旅行記再開↓↓↓
ナゼか暑苦しく寝苦しい夜を過ごし(泡盛呑み過ぎ?)、起きたら友人Kに「To-ko、なんでベッドの下半分に丸まって寝てたの?」と聞かれた土曜日の朝。夜中に起きて「暑〜っ」とエアコンつけたのと転がったのは覚えてるけど、どうして下半分に逃げたのかは忘却の彼方だ。何考えてたんだろ? 身支度をしていると、友人Kが「今日も3本潜ろうかなー」と言い出した。私にはその気がなかったので、「私はやめとくよ。予算オーバーしちゃうし体力的にもキツいもん。船の上で待ってるね」と答えておく。
前日と同様に簡素な朝食を済ませ、ダイビングショップにピックアップしてもらって港に行きボートに乗り込む。天気は曇りでときおり雨もパラつく。風も強い。この日担当になったガイドのYさん(やっぱり美人)に聞くと、外海は前日よりも波があるらしい。「ポイントは静かなトコロを選ぶから大丈夫ですよー」と言うが、そうゆう状況ならなるべくボートの上で時間を過ごしたくない。朝方の決意もぐらぐら揺れて、「3本潜りたい人いますかー?」の声にふらふらと手をあげてしまう。「私ってばなんでこう決意が弱いんだろ…」「誘惑されたいと思ってるからでしょ(間髪入れずキッパリ)」「……そのとおりだ!」。
この日は天気のせいで2階のデッキに出られず、ボート内は混みあっていた。大人しく座っているしかないが、ボートがぼんぼん飛び上がるので寝てもいられない。油断したら酔いそな感じで、遠くを見て「薬を飲んだから大丈夫飲んだから大丈夫…」と必死に自己暗示をかけて、慶良間までの1時間を過ごした。私はなんとか持ちこたえたが、友人Sが途中で撒餌。他にもダウンしてしまった人がいた。着いたポイントは座間味島のトウマNo.2。島々の内側に入ったからか、波もなくとても静かだ。前日の1本目と同じで、砂地で遊ぶポイントらしい。Sも何とか立ち直ってくれたので、3人揃ってエントリーできた。
天気が悪いので海の中も昨日より落ちているだろうと覚悟はしていた。ところが透明度は上がっていた! グアムを彷彿とさせる蒼さである。これだから海はわからない。すっかり嬉しくなってしまい、浅場の砂地でリラックスしまくる私たち。身を隠す場所がないからか砂地の生き物には地味なものが多いのだけれども、ウミテングやガーデンイールなどがいるのは嬉しい。入ってすぐのところには、前日も見たクロガシラウミヘビがいた。思わず追いかけて写真を撮った私は、その日のラストダイブに待ち構えている恐怖を知る由もなかった。
ところでこの日は、私たちのほかに女のコの2人組と、単独参加の男女各1名が一緒に潜るコトになっていた。必然的にその単独参加の男女がバディを組むコトになったのだが、ボートの上で用意をしているときに、男のコの方が「タンク開けた? 空気ちゃんと出るね? BCDに空気入ってる?」と、とても親切に自分の相棒の世話をやいていた。私はそれを「偉いなー」と思って見ていた。初心者のうちはなかなか相手に気を回せないから、きっとこの男のコは上手いに違いない、と思った。ところが潜ってみるとアナタ! 下手なのだ。体を立てて泳いでいて、しかもそれに本人が気付いていないから、人の頭をがんがん蹴るわ、砂を巻き上げるわ…。そうか、バディの世話焼きは余裕からくるモノじゃなくて、講習で習ったばかりだからか…と海の中で深く納得。
たぶんこのショップは50本で初心者と中級者を分けている。私らはちょうど狭間にいたワケだが、友人らは経験本数が微妙に50本に届いてなかったから、3人まとめて初心者チームに組み込まれたに違いない。それでも前日は「ホントに初心者」って人はいなかったのだけど、この日はスキルに差があった。彼と組んだ女のコの方も中性浮力の取りかたが下手だったので、ガイドのYさんもその2人にかかりきりになってしまい、私らと2人組の女のコはかなり放任されていた。エントリー時も「そっちの3人は用意できたらバックロールで入っちゃっていいよー」と言われるし、まるで自分が上手くなったような錯覚に浸る。……いや実際、あの面子の中では上手かった。きっと。
この日の気温は21度。水温も同じくらいだった。天気は少し持ち直してきていたが、それでも時折日が差す程度だ。こうゆう状態だと上がった後が寒い。濡れたままでいるとカタカタ震えてきてしまう。このショップでは、2本しか潜らない人は基本的に1つめと3つめのポイントで潜るコトになっていたが、「早く終わらせて乾いた服に着替えたい」という人が多かったので、1つめと2つめのポイントで全員が潜るコトになった。向かった2つめのポイントは渡嘉敷島のアリガーケーブル。見所は「23〜24mくらいの深さにある根」だそうである。魚の溜まり場になっているとか。あと、日本で見られるクマノミ6種のうち、5種が見られるのもこのポイントだそうだ。
≪つづく。中途半端ですみません≫
沖縄旅行記1日休憩。
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スティーヴン・ハンターの『極大射程』読了。かっ…………ッこいいっ!! ゴメンもう頭腐ったかもどうしようってくらい。最近この手の本を読んでなかったから、最初だけちょっと入りづらかったけど、すぐにハマりました。粗筋を乱暴にまとめると(何も知らずに読むがいいと思うので粗筋も隠しておくぜ)、ヴェトナム戦争の伝説的狙撃手であった主人公、ボブ・リー・スワガーが国家的な陰謀に巻き込まれ、かつての勘を取り戻し、敵をばったばったなぎ倒してゆくってだけなのですが、反撃を開始した彼がもうカッコよくてカッコよくて。相棒となるニックが殺されかけるトコロでは、「このままニックが死んじゃうハズない、ボブがやってくるに決まってる」と思って待っているのだけど、その予想通りに彼が登場した瞬間、私の胸の中では「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」の雄たけびが(←文字通りこう思っちゃったよもう)。
なんつの? 様式美の勝利? そうくるって分かっていても気持ちイイんですよ。ストーリーは「たぶんこうなるだろう」と思ったとおりに……いや違う「お願いだからこうなって!」と願っているとおりに進んで行くんだけど、進むまでの描写に緊迫感があって読ませるの。残り40頁で昼休みが終わっちゃったときには、机の下で読んじゃおうかと本気で思いました。大人だからガマンしたけど(ああ大人ってツマラないっ!)。途中は手に汗握らせドキドキハラハラさせ、最後はお願いしてたとおりの展開で満足させてくれる、こうゆうのを私は「私好みのご都合主義」と呼んで愛しています。おまけにバンザイ、シリーズ物だ! またボブに会えるぞー。
(でも戦争に行ったのがどうしてそんなに偉いんだかが、実感としてはちっともよく分かんないんだけどね実は。あと最後の最後の1頁はいらない。)
「はーい、3本目のポイントは黒島北、ツインロックです。すぐそこに岩が2つ突き出ているのが見えるでしょ? だからツインロック。まずそこに潜ります。運がよければサメが見られます。それから右手にちょっとだけ顔を出している根、あっちに移動して、根の回りでちょっと遊びます。ドリフトねー。根にわたる場所が、ちょっと流れてます。潜ってみてあんまり流れが強かったら、渡るのはやめて流れのこっち側で遊び……あ、ウソ。あっちで拾ってもらうから、渡らなくちゃダメだわ。えー、流れが強くても、ガンバって渡ってください!」
ブリーフィングの時点では、そんなには心配していなかった。水に入って潜降したときも、やはり怖くはなかった。透明度は2本目と同じく20mくらいあるし、流れもほとんど感じられない。それにここは地形が面白かった。岩と岩の間(ツインロックの間?)の細〜い通路をすり抜けるように泳ぐ。と、途中でCさんが左手の岩を指差した。見るとそこには深めの窪みがあり、その奥には……サメが! 「怖くないサメ」とブリーフィングで聞いてはいた。しかし目の前にあの顔ってのは、やはり迫力がある。怖い。私は遠くから恐る恐るカメラを向けた。と、Cさんが私のタンクを掴んでがんがんサメの方に押し出すではないか。ひーっ、いい、近づかなくていい! ここでいいってば! 後で見ると私の撮った写真はボケボケだった。落ち着いて撮れなかったんだね…。
しかし私の書きたい恐怖体験はこれではない。こんなものではない。サメの居場所を通り過ぎた後も、しばらくは平和な時間が続いた。岩に挟まれた通路を抜けると少し流れが出てきたが、それも大したものではなかった。「流れってこんなものかー。なら楽勝かも」と内心思った。まるでバラの花のような形と色をした、美しいウミウシの卵があったりもした。それを撮影する余裕もあった。が、Cさんが水中スレートに「根に渡るよー」と書き、私たちがそれに「分かりましたー」のOKサインを出したとき、その平和な時間は終わった。
Cさんについていくと、前方に、岩場にしがみついている人たちが見えた。他のガイドに連れられたグループらしい。Cさんは私たちも岩に掴まるように指示を出し、そっちのガイドの方に泳いでいって、何か打ち合わせを始めた。どうなるんだろう…と見ていると、戻ってきたCさんはスレートでせっせと状況を説明し始めた。「かなり流れているみたい」(OKサイン)「前のグループは半分ずつ渡るって言うから」(OKサイン)「私たちは2人ずつ渡ろう!」(OKサイン)。その説明中に、前グループの半分とガイドが消えた。説明が終わるとCさんは、久しぶりのダイビングで今回ちょっと緊張気味だった友人Sの手を取り、別のもう1人を連れて泳いで行ってしまった。岩場に残されたのは前グループの客半数と、私らのグループ4人(私と友人K含む)である。
その付近の透明度は、よろしくなかった。たぶん10mくらいで、その先は白く濁っている。「透明度がよければ渡る先の根が見える」と言われていたけど、そんなものはサッパリ見えない。気を紛らわすような魚もいない。最初に感じたよりも流れが速いらしく、岩にしがみついた手を放すと体勢が崩れる。崩れたら立て直すのに時間がかかる。つか立て直す自信がない。動けない。ぴくとも。待つ時間は長かった。長く感じた。だいたいCさんよりも先にいなくなった前グループのガイドが、なかなか戻ってこないのだ。根というのはそんなに遠いのだろうか…。やがて、先発隊が姿を消したのと全然違うトコロに人影が見えた。Cさんか!?と一瞬思ったが、それは前グループのガイドだった。彼に率いられた前グループの残りは、流れに押し流されながら遠ざかっていき、見えなくなった。岩場には、私ら4人だけが取り残された。
私の視界には、もう1人の姿しか入っていなかった。振り向けば友人Kと、更にもう1人がいるコトはわかっている。振り向いて「大丈夫?」の意味のOKサインを交わしたい。せめて目線を交わしたい。なのに体勢を崩すのが怖くて振り向けない。気を紛らわすモノがないから、自分の吐く息の音だけがやけに大きく聞こえる。ああ、ダメ。緊張したらエアの減りが早くなってしまう。ゆっくり、ゆっくり、吸ってー、吐いてー、吸ってー。だいたい今、私のエアはどれだけ残っているんだろうか。ゲージを見りゃわかるんだけど、ゲージを見るためには岩から手を離して手探りでゲージを探し、目の前に持ってこなくちゃいけない。ダメだ。そんなコトしたら絶対体勢崩れる! ああそれにしても遅い。遅すぎる。先発隊に何かあったんだろうか。Cさんが戻ってこなかったら私たちはどうしたらイイんだろうか。ボートは私たちを見つけてくれるだろうか。ああ足が震えてきた。私、寒いの? 怖いの? 落ち着いて! 吸ってー、吐いてー、吸ってー。ダメだ、全然震えが止まらない。カタカタカタカタいってるよー。これは寒いんだ。動いてないから当然だけど、どうなっちゃうんんだろう……。
こんな状態でどれだけ待っただろうか。やっと、また見当違いの方向に人影が見えた。今度こそCさんだった。Cさんは戻ってくるとまず私たちに残圧を聞いた。Cさんが戻ってきた安心感でやっと岩から手を離し、ゲージを見ると私のエアは110残っていた。意外にしっかり呼吸ができていたらしい。ホッ…。Cさんはスレートに「思ったより流れ速い!」と書いた。(OKじゃないけどOKサイン)。「4人で一緒に行こう!」(OKサイン)。よかった、ここで2人だけで取り残されるなんて耐えられない。Cさんはなぜか友人Kを呼び寄せ、彼女の腕をしっかりつかんで泳ぎだした。(K、どうしたんだろう…。海に強い彼女に限って、特別心配されるようなコトはないと思うんだけど、調子悪いのかな)と思いつつ、私も後に続いた。必死で泳いだ。
Cさんが指し示す方向とは直角に潮が流れているので、進みが遅い。流される。前も横も何も見えない。果たしてちゃんと進んでいるのかも分からず、とにかくCさんに離されないように、それだけを心がけて泳ぐ。と、やっと前方下に海底が見えた。そっちを目指して泳ぐ。もっと上の方に人影が2つ見えた。先発隊の2人だ。直接そっちに泳ぎたいが、中層は流れが速く直には行けない。私たちはまず根の付け根の辺りを目指した。そこで岩を掴み、ロッククライミングのように次の岩、次の岩と掴みながら前へ、上へと進む。友人Sの顔がはっきり見えるようになったときは、ホントにホントにホッとした。
ここでまた残圧をチェックすると、何と70に減っていた。あの深度で通常の状態なら、40減るのにかなり時間がかかるのに。この状態では「根の回りで遊ぶ」なんて余裕があるハズもなく、根を少しまわってキツイ流れから離れた辺りで浮上の用意。何とかボートに這い上がると、なんつの? 危機を脱した昂揚感?に包まれた。「もう死ぬかと思ったー」と口々に言うと、Cさんも「私も先に2人渡したのを死ぬほど後悔した!もう引き返せないって!」と言う。聞けば2人を渡して引き返す途中でエアが50になっていたらしい。私らのトコロについたときには20しかなかったと。それでもう一度潮を渡るなんてできないから、残圧を聞いて一番エアが残っていたKの空気を吸わしてもらっていたんだそうな。うひゃー、ガイドって偉すぎるー。この回のCさんのコメントは、「サメを見ていた頃はシアワセだった…。みんな生きててよかったよう」。
終わってみれば「面白かった」とも「いい経験だった」とも言える。でも、ホントにホントにみんな無事でよかった。乗り切れてよかった。また1時間かけて那覇に戻り、ホテルに戻り、ホテル近くの沖縄料理屋で夕食。ちょっとだけ泡盛を呑んで、たくさん食べて、後は何をする元気もなくベッドに倒れこむ。疲れきったけれど達成感もあるような。沖縄の2日目終了。
≪つづく≫