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私の好きな「演劇(しかも舞台)」を題材にした、私の好きな「マンガ」。好きの2乗ときちゃ、気に入らない方がおかしいでしょう。中学生のときにハマって以来、ずっと手元において繰り返し読んでいる作品です。一番名前の通っている演劇マンガは『ガラスの仮面』だと思いますが、でもちょっと待って? 『ガラスの仮面』は演劇のパロディマンガじゃないですか? 野球で言えば『巨人の星』ですよ。私にとって「そうそう! 演劇ってそうなのよぅ。そこが芝居の面白いところなのよ!」と納得できる演劇マンガは、この『ライジング!』だけ。私は商業演劇に関わったコトはないので、あくまで「観客席から見る限りで」納得できる世界なのですけど、でもそれで十分。客席で見ていても分かるモノはあるのです。 さてストーリー。「踊るのが好き」というだけで、うっかり宮苑音楽学校に入ってしまった仁科祐紀が、宮苑歌劇団の劇団員養成所である学校に通ううちに、芝居の魅力を知ってハマってゆき、成功と挫折を経て、本物の役者へと成長する物語。…なーんて要約するとありきたりでツマラナそうだけど、それに付随する各エピソードが胸にせまって、面白いんですホント。祐紀がだんだん芝居にハマっていくくだりとか、役を巡る役者同士の争いとか、演じるコトの幸福と不幸とか。あ、女性ONLYのスターシステムの劇団で、お得意はコスチュームプレイ。トップは派手な羽をつけて階段を下りてくる…と言えば、もうおわかりですね? 宮苑のモデルは宝塚です。 登場人物にも魅力的なキャラが多いです。主役は祐紀で相手役は演出家の高師謙司なのだけれど、私の好きなのは、音楽学校の同期で祐紀の親友、地味な努力家の岡崎小夜子、宮苑トップスターで、日常でもキザな台詞を欠かさない彩輝(さい・ひかる)、下積み生活の長い実力派の石原花緯(かい)。…女ばっかですね。いーんだ。みんなカッコいいから。特に「ためてたエネルギーを一気に吹きだすような、人を圧倒せずにおかない演技」をする花緯さんが、好きだなー。 私はもともと、自分の属する世界をとことん愛していて、だからこそ中途半端に踏み込んでくる人に厳しい、誇り高いタイプって大好きなのです。例えば「神聖なコートに入るなら…」、「やる気のない方は、いてくださらなくて結構」、と、ひたすらテニスを愛し、真剣に向かい合っているお蝶夫人とか。その演劇界での後継者、姫川亜弓さんとか。亜弓さんがその圧倒的な演技力でもって、ライバルのマヤを卑劣な手段で陥れた新人女優に復讐する話なんか、ぞくぞくしました。…って、話が逸れました。えー、つまり、小夜子はちょいとタイプが違うのだけど、彩さんも花緯さんも、確実にそのタイプに属する人たちなのです。 残念ながら、絵柄はちょっと古くなっちゃったと思います。特に登場人物が苦悩するシーンの影の入れ方なんか、演出しすぎててチョイと笑えます(マニアックな読み方してるな私も)。台詞…てか、台詞の入れ方も「ああ昔の少女マンガだー」って感じ。恋愛がらみのエピソードも、少し恥ずかしいしねー。でもストーリーは。特に祐紀が本格的に挫折を味わう『鹿鳴館円舞曲』から『メリィ・ティナ』にかけてのストーリーは、何度読んでも引き込まれます。あ、『鹿鳴館円舞曲』のときの小夜子の役回りはいいです。みるからに強い人も好きだけど、彼女のように優しく芯の強い女性もステキです。 あと、劇中劇が楽しいです。原作の氷室冴子さんはそうゆうトコロ凝り性で、全部ちゃんと脚本おこしているそうなのですが、マンガの中でちゃんと筋を追えるのは『レディ・アンをさがして』の1本だけ。これは確か脚本って形で本になってたと思います。でも私は、マンガの中でさらっと流した『アラビアの熱い砂』や『メリィ・ティナ』を出版して欲しかったんですよね。劇中劇を全部描くワケにいかないのは想像つくので、脚本って形ででも読みたかった。そのくらい面白そうだったのです。 コミックスは小学館のFLOWER COMICS、全15巻で出ています。マンガ文庫や愛蔵版でも出てるので、比較的手に入れやすいのでは。私は演劇が好きなので特別思い入れちゃうのかも知れませんが、演劇知らない人でも楽しめると思います。演劇を題材にしていても、描かれているのは人間ですもん。それにこうゆうのをキッカケに、芝居に興味持ってくれたりしても嬉しいし。演劇とかマンガとかって理屈で見るモンじゃないけど、「へぇ、そうゆう面白みもあるんだ」って新しい興味が持てて、見方がちょっと変わるってのはアリですもんね。 Copyright© 2001-2006 To-ko.All Rights Reserved. |