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長期の海外旅行中、本中毒の私はかなり真剣に活字に飢えます。そうなるのは分かっているので、あらかじめ長い時間楽しめそうな本を持ってはいくのですが、とても何ヶ月も持ちません。そのうちに物語なら何でもいい! と普段なら決して手を出さない領域まで触手を伸ばす羽目になります。

この時私は10ヶ月の旅行中で、手持ちの本は読み尽くし、英語の本に手を出していました。読むだけなら英語でもどうにかなるものです。現地では本の値段はかなり高価なので、主に安宿の本交換コーナーを使って新しい本を入手していたのですが、そういうコーナーにはなぜか「ハーレクインロマンス」がよく置いてあったのです。

私はそれまでハーレクインロマンスを読んだことがありませんでした。だいたいどういうジャンルを指してそう呼ぶのかも知らないし、ハーレクインの意味も知らないのです。ただ、どうもあの半裸の男性とドレス姿の女性(なぜか肩が破れていたりする)が風の中で抱き合っている…といった構図が好きになれず、読もうという気もおきませんでした。

ハーレクインロマンス全てを否定するつもりはありません。ひょっとすると中には名作があるのかも知れません。純文学だろうと古典だろうと駄作はあるものです。だがしかし、私のたまたま読んだその物語はあまりにもカス!でした。慣れない英単語を一生懸命追って日本語に変換して何日もかけて読んだ物語がカスだったときの、あの行き場のない怒りときたら…!!

という訳でここで吐き出します。何年も前ですので、細かい部分間違っているかもしれません。それに私は英語に堪能な訳ではないので勘違い部分もあるかもしれません。日本語に訳されているかも題名も不明です。誰か知っていたら教えてください。

舞台は確かアメリカだったと思います。ヒロインA子(名前適当)は高級保養所だか別荘地だかの管理会社に勤めています。とりあえず別荘地とさせてもらいます。とにかくお金持ちが集まって住むブロックが各地にあって、そこは管理会社によって管理されている訳です。引退した老夫婦とかが保安上の安全をもとめてそのブロックで家を買うのです。A子はとあるブロックの責任者です。

ところがこのブロックで空巣事件が頻発するようになります。何しろ住んでいるのはお金持ちなので、空巣といっても被害総額はたいしたもんです。これには管理会社も頭を痛めます。そこで凄腕と評判の保安会社に捜査を依頼するのです。ところがやってきた保安会社の社長さんはびっくり、A子の元ダンナB男だったのです…!

これがオープニングなのですが、まずここで私の頭の中には?マークがいくつも点きました。B男と再会したA子はひどく動揺するのですが、この会社に依頼したのはA子なのです。しかも「私の気持ちの整理がついているかどうか確かめるために…」とか何とか、それがダンナの会社であると知っていたという描写もちゃんとありました。元ダンナの会社に自分で依頼しておいてダンナが来たからびっくりする・・・? 確かにダンナは社長で普段は現場に出ないのかも知れません。でもそれならA子の狙いはB男の下で働いている人間に会うことだったってこと? それに何か意味があるんでしょうか? A子の働く管理会社の上層部が、勝手に評判の保安会社に依頼したとかなら話は分かります。ならA子もびっくりです。でも、しつこいですが、自分で呼んだんですよ?

そのあとも私の頭の中の?マークはどんどん増殖していきました。

B男は最初っからA子とやり直すつもりアリアリです。積極的にアプローチします。でもA子は答えません。好きは好きなんですが過去に夫婦だったときに仕事に夢中の夫にかまってもらえなかったとか何かで、また同じ思いをするのが怖くてヨリを戻せないわけです。

で、この優柔不断の男女のラブシーンが3回だか4回だかやたらとしつこく描かれるのですが、これがまたつまらない。だいたい2人が抱き合ってソファだとかベッドだとかに倒れこむところで章が変わります。次の章では話が展開すると思うじゃないですか。違うのです。その後の1章丸々ベッドシーンなのです。(この話をしたら「ハーレクインじゃなくてポルノ読んだんじゃない?」と言われたけどそうなのかしら? 表紙の絵柄はハーレクインだったのですけど。)

ベッドシーンが悪いとは言いません。官能的なシーンは決して嫌いじゃありません。むしろ好きだと言ってもいいです。好きだ。

しかし、この作品のベッドシーンは本当に退屈でした。変に手間隙をかける割にちっとも先に進まないのです。最初の2回くらいは延々と時間をかけていながら最後にはA子が「やっぱりダメだ」とか言ってB男が「次は逃がさないよ」とか言って終わるのです。しかも書くことが少ないものだからさんざんいろいろやってからやっとブラを外す描写が入っていたりして、まだ脱いでもなかったんかい! と言いたくなります。

で、2回目にこんなことをしているうちに、また空巣事件が発生するのですが、これにB男がめちゃくちゃ怒るのです。凄腕の自分がいるのにみすみす事件を発生させた、犯人は只者ではない、とか。…ってあんたが仕事してないからじゃん、と言わずにはいられません。昔の女とごちゃごちゃやっててしかもそっちにも進展がなくて、何しに来たんだって感じです。

さてA子とB男は置いといて、空巣事件はどんどんエスカレートしていきます。それなのにさっぱり犯人の目星はつきません。盗んだものを捌くルートや侵入方法などは謎のままで、どうやら裏に巨大な組織が絡んでいるようです。しかし管理会社の責任者A子と保安会社のB男は自分たちのことだけで手一杯で、時間だけかかって進展のないベッドシーンを続けます。何度やっても同じ描写なのでベッドシーンは飛ばして読みたいところですが、いきなり事件の話を始めたりもするので飛ばすわけにもいきません。

半分も読むとA子B男の関係はどうでもいいから、せめて空巣事件の方をちゃんと片付けてくれー! とだけを思って読み続けます。そしてもちろんA子B男のヨリは戻り、事件は解決します。…盗品を捌くルートも謎の侵入方法も、組織の説明もな〜んも無しで。唐突に話は終わるのです。

……はい?

作者は後書きでこうおっしゃっています。「世の中で一番大事なのは愛よ。私は今の殺伐とした世の中に愛の物語を届けてあげたいの」…思わず、ファンレターを書きたくなりました。「愛だ恋だと浮かれる前に、あんたにはやらなくちゃいけないことがあるだろう」と書くだけの英語力があったなら。


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