映画を見て、第1話もDVD借りてきてみて(←見直してやっと2話につながる話を思い出したりしたし、やっぱり買うべきだろうか…。)、こりゃ原作も読み直さなきゃなーと、図書館で『新版 ホビット ゆきてかえりし物語』を借りてきました(←もちろん原作は持ってますが、田舎の家に置いてあるのです)。あまり考えずに一番新しそうなの借りたんですけど、読み進むうちになんか違和感が……。翻訳者は山本史郎さんという方です。あれ、新しいのはてっきり田中明子さんの訳かと思ったのに、違うの?
名前に馴染みがないのは、まぁ許します。フィーリ、キーリが、フィリ、キリ。トーリン・オーケンシールドがトリン・オウクンシルド。私は瀬田訳が基本ですが、瀬田訳は誤訳も多いそうだし、名前のカタカナ表記はこっちが正なのかもしれません。が、名前以外でも落ち着かない箇所が多いのです。文章に雰囲気がないのです。まぁ『ホビット』は子供向けに書かれたものだし、『指輪』とは格調が違ってこんなもんだったかなあ。瀬田訳もしばらく読んでないもんなあ。
なーんて考えつつ読む進めていたのですが、裂け谷のエルロンドの「トリンさん」でぶっ飛びました。ないない違う、これないよ! エルフの殿が王の血に連なるドワーフを「さん」づけで呼ぶ? ご近所さんじゃないんだから。品格もなにもあったもんじゃありません。ここだけでなく、登場人物たちの口調がころころ変わりすぎです。相手や状況によって変わるとかじゃありません。いきなりくだけた口調になったり、偉そうな口調になったり……一貫した人格がないのと同じです。その人がどういう人だか、その話し方でわかるってもんじゃないの?
もうゴクリの「愛シ子チャン」には触れますまい……というワケにはいきますまい。なんで「いとしいしと」じゃいかんのか。他人の名訳をパクる 尊重できない大人の事情があるのなら(出版社が違うとか)、なぜ中途半端に似た言葉を、劣化した言葉を選ぶのか。とここまで書いてふと調べてみたら、この人「僕チン」の人か! 違う言葉にしようとしたら「僕チン」になっちゃって、批判受けてこの改訂版で変えたのか。……愛シ子チャンに? 地の文ではときどき言葉の選び方にあれ?とは思うくらいなのに、会話文にセンスが無さすぎます。
あとねー、カタカナの使い方も無頓着すぎますよ。「ビジネスがストップ」しちゃいかんでしょ。ファンタジーでカタカナを使っていいのは、基本的に固有名詞だけだと私は思います。後は距離とか重量とかの単位くらい……いや「パン」や「バター」も仕方ないか。トールキン世界の場合はその辺、トールキンがちゃんと決めているハズです。英語で書かれた部分は現地の言葉(日本なら日本語に)ってね。なのになんでグッドモーニングやグッバイやイエシュが出てくるの? サーラバイバイってなんだ。
擬音語(擬声語?)もセンスない。ガンダルフがアハハハと笑い、ビヨルンがガハハハハと笑うなんて。あとなんでビルボやドワーフたちの一人称が「ボク」なのさ。彼らけっこういい歳ですよ。ゴクリの語尾にカタカナを使うのも気に入りません。「○○だゾー」とか「○○しまシェン」とか。武田鉄矢か。―――ああ、いかん。さらっと流すつもりだったのに、指輪愛に火がついてきたぞ。
瀬田版の誤訳まで無条件に擁護する気はありませんが、固有名詞は瀬田版をそっくり踏襲しても良かったんじゃないかと思います。もうすでに<はなれ山>や<さけ谷>は使っているのだし。Misty Mountainsはやっぱ霧ふり山脈で、霧の山じゃない。Long lakeはたての湖でほそなが湖じゃない。burglarは押入(「おしいり」とふり仮名ふってありますが、どう見ても押入れでしょう)よりは「忍びの者」です(ま、忍びも和すぎて難あるかもですが、ビルボに求められている行動は押し入りよりは忍びですよね)。
あとこれ、≪第4版・注釈版≫というヤツです。ダグラス・A.アンダーソンという方が注釈を書いてらして、それも含めて訳されているんですが、注釈が全部巻末にまとめてあります。注釈もかなり長いので、本文読みながら注釈を参照しようとすると、物語に没頭するコトができません。じゃあ例えば章を読み終わってから注釈を……と思うと、注釈の入っている言葉に番号はつけれらているものの、ページ数が書いてないので、どこの言葉に注釈がついているのか探すのが大変。というワケで、つまり読みにくいです。
この本を読んだコトで『tLotR』のときの字幕騒動、思い出しました。「僕チン」訳もその時に聞いた覚えがあります。ホント、翻訳って重要ですよね。今回の『ホビット』の映画の字幕は、瀬田版に準拠しているのかな。よくできていると思います。さて。……今度は、瀬田版の『ホビットの冒険』、借りてきて読み直そう……(←その後『指輪』に突入する可能性大。まったく指輪の幽鬼ときたら!)。
これは大画面で見なくっちゃの、『ホビット 竜に奪われた王国』を見てきました。原作から離れる展開が多いので好き嫌いは分かれるかもですが、私は面白かった。今回も戦いシーンは多いんだけど、戦いシーンにバリエーションがでてきて、1作目以上に長さを感じませんでした。えっもう終わり? と思っちゃったくらい。あとまた前情報無しに行ったので「おおっ、ここをこう膨らませるか」と意表をつかれっぱなしでした。1作目のときは「複数回見には行かない」と書いたけど、これはもう1回見に行ってもいいなあ。いや1作目ももう1回見直してからのが、イイかな。
この先、ネタバレし放題で思いつくままに書いていきます。ビヨルンが出てきたのは良かった!……けど、あれ? ちょっとイメージと違うなあ。こんなにシリアスなキャラでしたっけ? なんか蜂蜜が美味しそうな描写があった気がするのですが。もう少しほのぼの路線だった気がするのですが。森に入る前、馬を返すのをドワーフたちが渋るってシーンもありませんでしたっけ? でガンダルフが「彼のものを返さないと後が怖い」と諌めるシーンが? あれ好きだったので入れて欲しかったなあ。
うーむ。好き好き大好きとは言っても、何回も読んでいるとは言っても、原作を最後に読んだのは相当前。記憶力に難も大有りとあって、どこまでが原作にあったシーンでどこからが映画オリジナルなのか、ちょっと不確かです。原作も、読み直さなきゃなあ。んでも本が手元に無いので、ここからも、不確かな記憶のままに書いていきます。間違いがあったら「記憶が不自由なのね…」とぬるい目で見てやってください。
馬を返して入った闇の森には、もう蜘蛛!蜘蛛!蜘蛛! 悪役たちに妙に力が入っているのは、これはPJの趣味なんでしょうね。落とした指輪を拾うのを蜘蛛に邪魔されて逆上するビルボは、これは完璧映画オリジナルですね。原作の指輪はここまで不吉なものじゃなかったもの。けど『tLotR』との整合性を考えると、この演出は正解だと思います。ダークサイドに触れつつ、指輪の誘惑によく耐えてるよビルボ!(しかもこの冒険の後もろくに使わずに過ごしたんだよね、偉すぎ)。
蜘蛛に襲われてるトコでやってきたのが森のエルフ。え……レゴラス?(←出るのも知らなかった)。レゴラスだああ〜。『tLotR』の比べると“若かりし頃のレゴラス”のハズなのに何故か老けてるってのは、可哀想だからツッコみますまい。それよりエルフの軽やかな戦闘シーンを堪能できたのが嬉しかったです。ええ今回も、ときどきやりすぎてお笑いになっちゃってるくらい、軽やかです。ドワーフを足場にしたり八艘飛び……いや八樽飛びやったりと、もう好き放題。将来無二の親友になるギムリのことを「醜い生き物」とか言ってますよもうもう!(←大喜び)
レゴラスと並んで華麗な戦闘シーンを繰り広げているのが映画オリジナルキャラのタウリエル。森のエルフで、スランドゥイルの「自分の領地だけを守る。他は知らない」な態度にもどかしさ、閉塞感を感じているからか、いきなり現われた異種族のキーリと惹かれます……て、キーリ!? いや確かに前回「お気に入り」って書いたけど、今回は準主役級に目立ってます。彼って、前回からこんなイケメン路線でしたっけ。彼ばかりが目立って、相方のフィーリがちょっと可哀想になるくらい。
原作には出てこないタウリエルですが、私はけっこう好きです。シルヴァン・エルフだからか、ちょっと人間味がありますよね。表情がわかりやすい。だから最後のほうでいきなり神々しくなっちゃったときは、少し違和感ありました。ま、あのソフトフォーカスは熱にうなされたキーリの目にかかったフィルターだったと思うコトにします。…・・・でもね、正直、タウリエルがキーリに興味もつのはわかるんだけど、キーリがタウリエルに惹かれる理由はさっぱりです。冒険に彩りでも欲しかったのかしら。
話が前後しますが、スランドゥイルの岩屋からの脱出シーン。全員を樽に入れて川に落としたあと、ビルボがあれ?自分はどうやって逃げるんだ?って慌てるトコの演技がカワイイ。で、原作では蓋したまま川を下っていったよね? 開けたままにしたのは戦闘シーンのためだろうけど(絵柄的にも開いてたほうが楽しいか)、よく皆沈まなかったもんだ。まぁこの川のシーンは楽しみどころが満載だったので、文句はありません。んで川を下った一行は、バルドと出会い船に乗せてもらって湖の町へ。
そういえば書くのを忘れてたガンダルフ。闇の森の入口でドワーフたちと別れてからも大活躍です。前作に引き続き登場の、 茶色のラダガストと「なにもこんな危険な場所で逢わなくても……」って場所で待ち合わせ。そしてネクロマンサー(サウロン)が待ち構えるドル・グルドゥアへ。うひゃあ、いきなりボス戦じゃあないですか。ラダガストは急を知らせる使いに行ったので、杖を構えて孤軍奮闘です。ガンダルフはホビットやドワーフに囲まれて怒りん坊になってるほうが好きだよぅ。がんばれガン爺。
さていよいよ≪はなれ山≫にやってきたトーリン一行(マイナス4人。キーリが置いていかれるシーンは切なすぎます。トーリン頭固いよ! 原作とは違って湖の町に4人のドワーフが残るのは、これは竜との戦いに備えてなんでしょか)。一生懸命ここまでやってきたワリに、鍵穴が見つからないとあっさり諦めそうになります。ビルボが粘らなかったら、あそこでエンドマーク出ますねえ。んでその後は竜との追いかけっこ。さすがドワーフ、熱に強くて竜にも負けません。金箔塗装の竜も美しい。きらきらと金が剥がれ落ちるさま、カッコいい〜。
最後に。お髭のバーリンは今回も気配りさんです。前回ラストでやっとビルボを認め、途中では「さすがだバギンズ殿」とかまで言ってるのに、宝(つか、アーケン石か)を目前にしたとたんに「バギンズ殿」を「泥棒」に格下げしちゃったトーリンと大違いです。あの「彼の名はビルボだ」はいいですねえ。ま、トーリンもすぐに正気に戻るんですけど。あとあとあと、ホントに最後。今さらながら私、BBCの『SHERLOCK』にハマってるんですけど、ジョンがビルボで、シャーロックがスマウグとネクロマンサーなんですよねえ。エレボールでは直接対決ですよ。うひひ。